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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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一応漫画家?
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佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
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2014/01/01 (Wed)

鬼に憑かれし宮姫


「こちらが姫様のお部屋でございます。」

 女房は簾を上げて、姫の部屋に葛葉と頼光と、牛車を止めてきてから葛葉の後をついてきた、式神の炎を中に入れた。
 呪力のあるもの意外は炎は葛葉と同じ子供に見える。

 葛葉は部屋に入った瞬間うっと口を押さえた。

 倒れそうになって頼光に寄り掛かる。
 葛葉を頼光は押さえて心配そうにいう。

「どうかしたのか…葛葉?顔色がわるいぞ…」
「だって…あれ…」

 葛葉が指で示した方向には姫が苦しそうに眠っている。
 姫の周りには鬼を封じる護符が五芒星の位置に置かれた御幣と共に貼られ、頭もとに祭壇が用意されていた。
 昨日父晴明が行った封印と準備だった。

「すごいな…やっぱり晴明様だな」
 と綺麗に整えられてある祭壇をみて頼光は感心したが、本当は違うのだ。


 葛葉が示したのは頼光程度の霊感では見えないもの。

「部屋中に…ち…血が飛び散っているの…」

 姫の部屋は大量の真っ赤な血が壁という壁に激しく飛び散った感じにこびり着いてい
る。
 この血は殺してきた男達の魂の呪縛。

「えっ!?」
「頼光には見えないわ…」
「みえるぞ!うん!こわいな!うわあー」

 頼光は嘘をつく。
 葛葉と同じモノをみたいから。
 なぜか頼光はこんな時にも意地になる。
 そんな頼光の様子に葛葉は苦笑した。

「もう…大丈夫、ありがとうね頼光」
 葛葉は気再び気を締め、心を落ち着かせ様とする、がなかなかこの無気味な感じは取れない。
 鬼の気配がビンビンと伝わる。この鬼の気は陰の気。心の弱いところに影響する。
 こんなに近くに、しかも頼光と2人だけで鬼退治をするのは初めてである。

そんな自信のなさが、鬼の気に捕らえられそうになる…

 祭壇の前で葛葉は祈祷を始める。
 祝詞を唱え、姫に憑いているモノを剥がすための呪を唱える。
 姫は身悶えし苦しそうに唸る。
 だが憑いているモノは中々出ていかない。

 父から受け継いだ能力と教わった呪文は間違っていない。
 だけど、自分には無理なのではないだろうかと徐々に不安になってくる。
 父は葛葉にもできる仕事だといったが、本当にこれを一人で(頼光をいれて二人になるが)できるのだろうか?
 こんな気持ちじゃ祝詞を唱えても効果がなく、鬼の気の影響か、

「私一人じゃ心細い…やっぱり…」

 いつにもなく弱音を吐いてしまった。
 自分でもしまった!影響去れてると焦る。
 焦れば焦る程状況は悪くなるのに…

 そのとき、葛葉の肩をぽんぽんと炎が叩いた。


「僕のこと忘れていない?」
「炎?」

 父の式神はそれは役に立つだろう、けれど、祝詞は唱えられない。
 式神も鬼と実際はかわらないからと思ったが、その思いを理解してか炎は首を 小さく振った。

「違うよ、僕は光栄」
「え!?」
 葛葉は驚いた。
「炎に魂を移したんだ。葛葉は一人じゃないよ。安心しなさい。葛葉を守ってあげるから」

 葛葉はとっても驚いた。
 声も懐かしい許嫁の声だ。
 嬉しくて心強くて炎をぎゅっと抱き締めた。
 姿形は違うが、炎から感じる気配は光栄のものだった。

 光栄のいる播磨では同じく祭壇が置かれていた。
 葛葉がいる宮姫が結界にいるように播磨の邸では結界の中にいるのは中将だった。
 中将はぶつぶつと、文句をいっている。
 久々にゆっくり眠れているところを光栄に遠慮なしに起こされ、強引に浄めさせられ祭壇の中央に座らされて不機嫌である。
 自分の身を守ってもらう為とは言え、安心を確保した今は位のない光栄に不満を漏らしている。

 光栄は氷の肩に手を置いたまま動かないのを良いことに文句をいっているのだ。
三流陰陽師だの、大臣になったら二度と京に帰れないようにしてやるとか聞こえよがしに言い放つ。
 それは、光栄に十分届いている…

 京の宮姫の邸でも頼光が炎の光栄に文句を言った。
 抱き着いてる葛葉を無理矢理退かして炎に詰め寄る。

「あのなー葛葉を守るのは、この俺、源頼光さまだ! 播磨にいるお前に何ができるんだ!」

 炎の襟元を掴み掛かりながら怒りをあらわにする。
 頼光は葛葉に喋っているのは今朝がた盗み見た会話するだけのものだと思っている。

 だが違った。

「頼光君も守ってあげるからねー」
 と自分より背の低い、炎の式神光栄に頭を撫でられた。
頼光は光栄を殴ろうと思った時、尋常じゃない気配を感じた

「ハリマ…ハリマ…アノ男ガイル播磨…」

 地を這うような無気味な声を出したのは結界の中で寝ている姫のものだった。
 姫は手も使わずにぐわっと上身を起こす。

 そしてその背後からは邸の外で見た禍々しい気が流れ出ていた。
「ハリマ…アノ男ガイル……許セナイ……許セナイィィ!!!」

 姫は結界から出ようとして弾かれた。
 姫は苦しそうに呻く。
「さ、葛葉、姫と憑いているモノを剥がすため呪文を続けよう!」
「はい!じゃあ、頼光、姫に憑いているモノが出てきたらその刀で姫と切り離して!」
「おう!」

 頼光は刀を構えて、姫の背後に近い場所に移り準備万端整える。
 炎の光栄と葛葉は祭壇の前に声をあわせ呪を唱える。
 姫は苦しそうに体を激しくうねらせる。

 尋常ならない動きだった。
 だが、その動きとともに憑いているモノが浮き上がり、鬼女の形になっていく。
 そして、姫は動きを止めカクリと首を俯かせ、背後に鬼女があらわれた。


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