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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
性別:
女性
職業:
一応漫画家?
趣味:
漫画を描く事
自己紹介:
佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
イラスト付童話や小説を制作していこうと思ってます。

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2016/09/11 (Sun)
愛してる。
愛してる。愛してる。


言いきれないほど

愛してる。
愛してる。愛してる。

抱きしめられない、抱きしめきれないほど

愛してる。

心のそこから愛してる。

愛してる

永遠に


愛してる


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2016/09/11 (Sun)
「雪……好きだ……」
腕の中に優しく私を抱きしめて、耳元て囁く……

出会って一週間。
どうして、晴房さんのことを受け入れてしまったのか……

子供が欲しい……
と思っていたのは確かだった。

李流はもう、私の手から離れたようなもの……

私の人生は李流を立派に育てること……それが生きがいだったのに。

李流がよく出来た子で母として嬉しい。

でも
私の人生の目標を失った魂は空洞になって行った。

そんな時、晴房と出会ってしまった。

プロポーズも

子供を作らないか?

……私が欲しいと思った言霊だった。


夜、内緒であっているうちに、彼、晴房さん自身、子供のように感じることがある。
私に甘えてくれる。

私も彼に甘ている……

こんな恋愛はじめてかもしれない。

李流の父……最初に好きになった人は、他に好きな人がいた……その存在に負けられなくて、許嫁の立場を使って彼の好きな女を負かした。

それが心地よかったのかも知れない。

ホントの愛を知らなかった……
李流に対しての母性愛しか私は知らなかった。
それ以外要らなかったのに……


雪は柔らかい。
表情も心も体も……

どうして出会ってしまったのか……

李流の母に挨拶したかっただけなのに。
直感で好きになってしまった。
この女と子供を作りたい……

李流のような出来た人間を作りたい

と思っただけだったのこもしれないが、

はじめて雪……女というものを抱いた。
何も知らなかった。
人は血を通う生き物ということを心臓の音が重なる貴さを、温もりを……愛しさを
今まで知らなかった。


今まで容赦なく処罰してきた人にも、この様な温かさを持っていたのだろうが?

持っていたとしても、祝皇を害する者は許さない。

もし、雪が陛下を殺そうとしてもか?

有り得ないけれど、絶対とは言えない。

もしそうだとしても愛してもいいのか?
魂の元神が赦してくれるだろうか……
私が手を下す前に雪に下されたらどうしょう……

その前に……元神の元に還る

私がいなくても

私と雪の子が、雪の生きがいになってくれると思うから

いつも以上に激しく抱く。
雪も晴房の焦燥感を受け止める。

「どうか、私の子供を産んでくれ……」

愛してるから……という言葉を……罪のようで言えない……

神に背いて愛してるという言霊を言えない……


その代わり、言霊に出来ない結晶を雪に上げるから……

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2016/05/05 (Thu)
魔女に呪いをかけられた白雪姫と眠り姫。

旅する王子は二人の姫の呪いを立て続けにといてしまった。

二人の姫は運命の出会いにときめいて1人の王子に愛を求めた。

ただ1人私だけを愛して欲しい!


白雪姫と眠り姫は恋敵。

いつも喧嘩ばかりをしていた。

美しき姫は争いに心醜く、美しい顔にも醜さがな現れ始め王子は悲しみのあまり、城を出てしまった。

元から放浪癖がある王子様。

愛しき王子を失った姫たちは争いを辞めて王子を探しに旅に出る。


そして王子は悪い魔女に囚われているという噂を耳にする。

姫たちは悪い魔女に呪いをかけられた経験者。
魔女の恐ろしさは知っている。

王子がどんな呪いをかけられてしまったのかとても不安でいてもたってもいられない。

魔女の城を目指すため、
白雪姫は毒りんごのような形をした爆弾を大量に作り、眠り姫は糸巻きのような形をした毒針でありムチを駆使して茨に覆われた禍々しい魔城の魔物達を倒し、お互いをかばいながら、魔女元にたどり着いた。

「やぁ遅かったね」

王子は微笑み玉座に座り姫たちを迎える。

王子は呪いをかけられていないことにほっとすることよりも、
王子に垂れ抱きつく黒いドレスに胸元や太ももをあらわにする大人の魅力たっぷりの魔女と白雪姫ののお母様が猫のように王子に擦り寄っている。

姫たちの思考は真っ白になった。

「ちょっと旅に出たラコの黒猫ちゃんたちに捕まってね、嫉妬に狂った呪いを解いたところなんだよ」

「あなた達小娘なんかより私たちの方が魅力的ですって…ホホホ」
「醜い恋争いなんかしているお姫様より女王の慈愛で王子を癒しているところなの邪魔はしないで」

「ハッハッハ。子猫ちゃんたちたちもお互いのいがみ合いの呪いもなくなったことだし、僕の元においで、さぁ」

王子は満面の素敵な笑顔で姫たちを迎え入れる。

「喜んで…」

爆弾りんごと毒針ムチ武器を姫たちは王子めがけて振り上げた…




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2016/05/05 (Thu)
海岸に夕日に輝く金髪に仕立ての良い服を着た青年は、人では無い恋人に透明なガラスの靴を見せた。
愛しい恋人の足は綺麗で光に輝く長いヒレを持つ魚のしっぽだ。

海に溺れた王子を助けたのが出会い。

いつしか惹かれあった。

毎日王子は愛しき人魚姫に会いに行く。
そして、祖母の宝である魔法のガラスの靴を履いてもらおうと思っていた。
人魚は戸惑う。

母は人間の王子を助けて恋をして、失恋した。
人間である父を助けたのは自分なのにひと夜限りの気まぐれな契のみで人間の姫と結婚した。

いつも微笑み母は後悔していないといった。


自分もそうなるのが怖かった……

そのことを悟ったのか

王子はガラスの靴のことを語る。

魔法使いが作ったこのガラスの靴は真実の愛を導きてくれる靴だと。

アナタの父上は真実に気づくのが遅かったかもしれない。

けれど、僕はあなたを心から愛している。
その証拠にこの靴を履いてみて欲しい。

恐る恐るヒレをガラスの靴に触れると
美しいヒレが人の足に変わった。
ガラスの靴はピッタリと美しい足を包み込み光となって人魚姫の足となった。

人魚姫姫は王子の真実の愛で人間になった。

夕日が罪に沈む。
夕日の影に恋人達の唇が重なった……

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2016/02/14 (Sun)
春はハートに染めせし恋する花弁

夏はヒートな夜空に爆ぜる花火

秋はファイアー色に染める木々の紅葉

冬はマフラー巻いて愛しき人と雪花見

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2016/01/17 (Sun)
靖国につもるみゆき 踏み締めて 晴れなる空を 望みみる

という歌が思い浮かんだ。

みゆきは美しい雪
幸(みゆき)幸せ
つもるみゆきは
人々の祈り願いを
踏み締めては
感じながら歩くみたいな感じで。
悪い意味じゃなく。

明日雪でも靖国神社行ったほうがいいか悩んでたり。

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2015/11/01 (Sun)
未来が怖くて未来を見たくない。
過去が後悔しかなくて、何もしたくない。

それは今日を大事にしないから。

今を充実させていけば

過去は輝かしく

未来は明るい。

今は瞬間の輝き。

だからできることをしょう。

休憩も必要。

そうすらば未来の道も過去の足跡も見えてくる。

何も怖くない。
後悔もない。
今が一生懸命取り組むことだと思えば人生は光り輝く。

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2015/08/15 (Sat)
ミーンミン
ミーンミン

木に止まり鳴くセミの音

ミーンミン
ミーンミン

涼しいクーラーの中にいても
夏の暑さを思い出させる
セミの音

ミーンミンミーンミン

たった1週間の命

ミーンミンミーンミン

青色とんぼも飛んでいる。

昼下がりミーンミンミーンミン
聞こえる暑い音。
風鈴が風に吹かれて涼しく感じる。

暑い
暑い
短い夏

ミーンミンミーンミン

夏の名残惜しさを伝えるセミの音・・・

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2015/08/10 (Mon)
夏の汗
じりわりとしみ出し

雫が地に落ちて影の跡

空を見上げると青い空

太陽を隠そうとする入道雲

ひまわりは高く太陽を見上げ続ける。

夜は流れ星運がよければ天野川


キラキラ輝く夏




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2015/08/08 (Sat)
お日様お日様
照らしておくれ

温かくみんなに降り注ぐ光を

お月様お月様
照らしておくれ

暗闇を優しく照らしだし夜空に私の行く道を

お星様お星様

照らしておくれ

闇に迷った私の希望になって
私の夢を導いておくれ


地球に生きるものたちに手の届かない宝石を与える永遠のは星たちよ

時を経ても変わらず見守っておくれ
時の流れと人々を・・・


私たちも星たちを見上げる時に感謝をする変わらない心を持っているから

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2015/04/07 (Tue)
チクタクチクタク

早く流れて欲しい
仕事時間

のろのろのろ

遅く過ぎて欲しい

休み時間

けれど10代よりも早く時が過ぎていく

記憶も新鮮さがない分

スルーする

チクタクチクタク

早く流れて欲しいと思えけど

のろのろのとすぎる時間は怠惰。

新しい事をすることによって
時は10代の時と同じ時間感覚に戻れると思う。

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2015/03/07 (Sat)
雨雨雨

ポツポツ

冷たい雨

雨雨雨

紫陽花まるい

かたつむり

雨雨雨

さっと傘を差し入れられ

一緒に歩く

雨雨雨

あなたと一緒に雨雨雨

暖かな
あなたと一緒小さい世界

歩いていこう

雨雨雨

虹がてて輝く未来

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2015/01/17 (Sat)
空に仰向く薄紅の
桜桜桜桜桜
ひらひらヒラヒラ

サラサラ風に穏やかに
湿り気のある地に落ちて更なる
桜桜桜桜桜

季節が移り変わる時
桜の花びらは消えている

けれど春が来たらまた桜の季節

桜桜桜桜桜

いつまでも薄紅を咲かせておくれ

風に季節を載せてまた巡り合う


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2014/11/12 (Wed)

19・いつか、きっと

 空は清清しく晴れて過ごしやすく紅葉が風に舞って散る。
 葛葉と頼光は月夜丸の邸に招かれた。
 この間の礼をしたいということだった。

 「こんなに犬が……」
 葛葉は固まった。

 月夜丸の住む東の棟の庭には子犬であふれ返っていた。
 ざっと見ても二十匹はいるだろう。
 子犬が葛葉や頼光に興味をしめし尻尾を振って近寄ってくる。

「葛葉犬に慣れたんじゃなかったのか?」
 頼光は呆れたように固まっている葛葉に問う。

 「う~ん……前よりは大丈夫になっただけだもの。シロはすでにこの世のものじゃなかったし」
「では、慣れるために、この子犬をもらってもらえぬか?」
 月夜丸は白い犬を葛葉に渡す。
 まだぎこちなく子犬を抱く。顔をぺろっとなめられた。

「う……」
 嫌な顔をしてしまう。

「おいおい、葛葉ぁ~」
 頼光は飽きられたように声をあげる。

「大丈夫だもん!あ~かわいい!!」
 葛葉はなげやりに顔を子犬に頬擦りをしてみせる。
 顔は固まっていたが。
 その様子がおかしくて、頼光と月夜丸は声をあげて笑った。

 邸に仕える女房が持ってきてくれた、高槻にのせてあるの饅頭を手にとりながら、三人は語り合う。

「俺はもうすぐ元服することになったのだ。」
 ちょっと、照れたふうにいう。
 貴族といっても落ちぶれているが、立派になって父や育ててくれた母に恩を返したいのだという。
 義母の兄は右大将なので、がんばれば中流貴族くらいにはなれるだろう。

「おめでとう、月夜丸。私達と遊べなくなるのね」
「ざんねんだな…一緒に犬のしつけしたりするのも、葛葉を慣れさせるのも楽しかったのに」
 二人は邪魔してはいけないと思ってそう言った。
 元服して仕事するのは貴族の大切の仕事子供の自分たちとは遊べなくなるのは当然のことだ。
 けれど、月夜丸は饅頭を食べる口を止めて、

「元服してもまた会いにきてくれぬか?初めての人間の友……だから……」
 顔を赤くして最後は口籠った。
 そんな、月夜丸をみて葛葉と頼光は顔を見て微笑して、

「うん!遠慮なくこさせて頂く」と声をあわせ答えた。
その言葉を聞くと月夜丸はほっとして一緒に微笑んだ。

 月夜丸はふと澄み切った空を無表情に見つめながら語る。

「それにしても、月の方…
 秋月は俺と同じだったのだ。
 憎くて、悔しくて仕方がなく、親が許せなかった……
 心を開けず、愛を素直に受け入れられなかった。
 それを思うと俺は父と同じだとも思った。」

「月夜丸…」
 葛葉もその気持ちを感じた。
 自分には感じた事のない気持ちだけれど、秋月から伝わって来たのはその気持ちだ。

「受け入れるのは苦しいことなのだ。
自分の思いが違うと否定されることは……だが、受け入れてすまうと、苦しさがなくなり心が清清しくなる。そして他の道が見えてくる」
 空から視線をはなし、そっと葛葉の手を握り、真摯の瞳で見つめる。
 
「秋月もきっと今苦しんでいると思う。
 その苦しみを受け入れられる日が来ると俺は思う。それには、葛葉や両親の思 いが必要なのだ。」

 月夜丸は葛葉の家族のことを心配してそういってくれた。

「うん……そうだね、ありがとう、月夜丸…」

 月夜丸の言葉を胸とどめる。
 夜丸の言う通りだ。
 誤解を認め、和解することが必要だ。
 家族と和解した月夜丸の様子を見るとそれが幸せなことで、秋月の未来のように思える。

 だから、いつかきっと、秋月と分かりあえて家族として幸せに暮らせる日がくればいいなと葛葉は願うのであった。


葛葉姫鬼譚☆犬妖鬼☆おわり

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2014/11/12 (Wed)

18・つながる、想い

 日の下の国では光り輝く最高神アマテラスが神々しい朝日を大地に輝かせるが、その分影の国では闇が増していた。
 光りあるところ影がある。
 それは、陰陽は世界の成り立ち。

 影の世界に出来た異国風の宮殿に秋月は膝を付き礼をとっていた。

 秋月が礼をとっているのは九本の大きな尻尾をもち、耳は狐の人。
 強大な力を持つ妖狐だ。
 彼女は、美しく艶のあり凛とした女王とした感じがにじみ出ていて、服装は唐の肩口を露出し、その美しい肩に天女の衣をふわりと羽織っている。
 狐の特徴さえなければ、仙女か女神だった。
 大陸から来て、秋月をさらった者……
 それは、九尾の狐である。
 大陸にいた時は妲己と言う名であった。
 今は珠藻という。
 日の下の国に密かに闇下の国を創り王として君臨している。

「秋月……陽の世界は如何であったか?」

「……つまらぬところでした」
 秋月は無表情で呟くように伝えた。

 玉藻は豪勢な玉座に寄りかかるように座り、秋月の本心を見透かそうとするように金に輝く瞳を細める。

「つまらぬところ、か…
だが、その世界はいずれは我れらがものになる世界だ。
お前の新月の力を使ってなぁ」
 くくくっとその時のことを夢見、笑う。

「ところで、もう一人のお前にあったか?」
 もう一人のお前とは葛葉のことだ。
「はい……」
 ただ機械的に答えるように努めたが、首尾よく葛葉をこの手で仕留められなかった事を思えば、感情が一言に滲みだす。

 秋月の感情を感じ取って、玉藻は眉根を寄せた。
 珠藻は手を前突き出し、手招きを一回すると秋月の体は宙に浮き、珠藻の傍らに引き寄せられた。

「片割れは殺したのか?」
「……邪魔が入って始末できませんでした……それに僕の名を知るものがいた…」
「ほう…お前の名を知る者がいたか」
 珠藻は秋月の頭を胸元に抱き頭を撫でる。
 それは、はた目から見れば慈しむように見えるだろうが、実際は吟味しているような感じだ。
 秋月の目を見つめる玉藻の瞳は爛々と輝き、『喰らわれる』という危機感は慣れなかった。

「その人間は力を持っていようなぁ……うまそうな……」
「捕らえてきましょうか?」
 と言ってみる。

 自分の呪を解き、どことなく嫌な感じのする光栄と言う人間。
 葛葉以外にはあまり興味を持たなかったが、厄介な人間だ。
 いつか、この玉藻に献上してしまおうと本気で思う。
 この狐は人が好物だ。とくに成人した大人の男。
 秋月に流れる人の気が食欲をそそそるらしいが、新月の力と狐の力を持っているので食らうことはしないだけ。

「ぜひ、そうしてほしいのぉ……お前の呪を解く程の人間だからのさぞ素晴らしい味のする人間に違いない」
 珠藻は秋月がしてきたことを知っていて聞いていたのだ。
 だから、呪を解かれたということは自分にとっても恥じなので口に出さないでほしいことだった。

「片割れは今何をしているのだろうな?見てみるかの?」
 珠藻は妖力を手元に集めると大きな鏡を具現化させて、業と秋月に葛葉の姿を見せる。
 それはいつもの事、自分の境遇と比べさせるようにいつも葛葉の様子、家族とのやり取りを見せらてきた。

 鏡に映る葛葉は両親に見守られて眠っていた。
 葛葉に注ぐ眼差しは柔らかで慈しんでいる。
 優しく頭を何度も撫でられる。
 その手が気持ちよさそうに葛葉はさらに幸せの眠りに落ちる。
 秋月はその様子を見るたび、羨ましく思い、怒りを身の内に溜める。
 自分には向けてもらったことのない眼差し、優しく髪を撫でる手、胸がズキンとする。
 憎いから痛いと思っていたが、それは嫉妬の痛み。
 自分が欲しいモノを葛葉は持っている。
 とても悔しくて憎い……
 その心を育てるのが珠藻の狙い。
「!」
 秋月は鏡に映る家族の中に、いつもと違う物を見つける。
 葛葉の隣にいる父の手には黒い紐が握られていた。
 それは、多少なりとも呪が残っていて握っているだけでも辛いはずなのになぜ持っているのだろうと疑問に思った。
 そのことは珠藻は気付いていないようだ。
 なので言わない。
 
 余計なことは言わないほうがいい……

 秋月は捨てられたと言われ育てられながら、こうした場面を見せられ続けそだってきた。
 だが、憎しみや嫉妬を『焼きもち』という感情ということを光栄に諭された。

 『焼きもち』は憎しみや恨みより軽い言霊だが、その通りなのかもしれない…
 そしてさらに、光栄は晴明が自分を捨てていないと、ずっとさがし続けていたと言った。
 父が握っている紐は僕自身…それをギュッと握られているのは自分を忘れていない証拠ではないだろうか…

 それが本当なら……僕は……

 そう、思いいたっても、確信できなくて胸が焼ける程苦しくなる。
 『焼きもち』とは違う『焦れ』るという苦しみだと言う事を秋月は知らなかった。
 秋月はその苦しみをまた葛葉への怒りに変えることにした。
 その方が楽だから誰かの所為することの方が……
 
 秋月はの親への想いは月夜丸のと本当に同じなのだ。
 だから呪が混じりあって操ることができた。
 その操りのヒモは切れてしまったが……

 自分に見えないあの紐と同じものが断ち切れる日が来るだろうか……
 秋月はただじっと、鏡に映る家族の姿を見つめていた。

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2014/11/12 (Wed)

16.親子の絆

 事件が終わった深夜、妖犬とかかわった者たちがボロボロの姿で月夜丸の父宮のもとへ訪れた。
 宮のもとにいた者たちはどうした事か何があったかと慌てたが、月夜丸は宮を襲った妖しを追い葛葉たちと共に退治をしたということにしておいた。
 全くのウソではないから問題ないが、葛葉たちだけでは、月夜丸が犯人だと思っている貴族や邸の者たちに疑われたかもしれないが、加茂家の光栄がいた事によって信用が保たれた。
 落ち着いたころ合いをみはからい、宮を心配して来てくれた貴族や知人たちは己が邸へと帰って行った。

 葛葉たちは、都にはびこる妖犬の事は解決できたけれど、月夜丸の首には未だにあの紐がとれないでいた。

「月夜丸よく帰ってくれた……」
と宮は微笑んで帰りを待っていた。

「父上……すまなかった……怪我をさせて……」
「あまり傷はひどくない……シロが助けてくれたからな」
 包帯で巻かれた腹部のほうを、少しさすりながら宮は微笑む。
 月夜丸は一瞬、父に怪我をさせたほうを見て、すまなそうに眼を伏せる。
「母上は父上のことを恨みもせずに愛してました……恨んではいないと言っていた」
「そうか……」
 そう短く答え、嬉しいような悲しいような表情を隠すように父宮は俯いた。

 月夜丸は母が父を恨んでいると思って自分も父を恨んでいたが、違った。
 だから……

「父上……母上が恨んでいないなら……もう意地を張るのはやめる……あの時の済まなかったって言葉は本心なら……もう許すことにした」
 父の手をとってそう告げた顔は微笑んでいた。
 ハッとして月夜丸の顔を見た。
 そして初めてお互い瞳を見つめあう事が出来た…
 初めてみせる我が子の笑顔に父は驚き、暖かいモノが心から目から溢れていた。
 父宮はぎゅうっと、温かく強く月夜丸の手を握る。

「ありがとう……本当にすまなかった……ありがとう……」
と、心からくり返した。

 その言霊が月夜丸に胸に閊えていた何かをはずした感じかすると、紐は首から外れた。
 
 呪詛が外れたという事は呪いが、最後のわだかまりが解けたという事。
 これで、月夜丸は月の方に命を操られなくて済む。
 葛葉はほっとするものの、月の方…秋月のことが、気になっていた。
 落ちた紐を葛葉は無意識に取ろうとしたが、先に光栄が紐を預かった。
 それは何か意図があるのかもしれないと思い、光栄と目配せしてうなずき合う。
 その心が通じたのか、お互い笑顔になって改めてほっとする葛葉だった。 

 葛葉たちはその親子達の和解を見届けた後、そっと、邸を出た。

17.葛葉の家族会議

 今度は葛葉たちの家をどうするかだった。
 邸に帰り、事件に関わったものが寝殿に集まり晴明にことの真相をはなした。

 「そうか……秋月が……」
と晴明は深刻そうな顔で唸って考え込んだ。
 顎に手を添えて悩んでいる父の袖をぐいっと引っ張って葛葉は詰め寄った。

「どうして、秋月を捨てたの……?
どうして…弟がいるってことを隠していたの………?」
 と真剣な父を攻めるように問う。

 そんな葛葉を困ったように悲し気に見つめて、一つため息をはいた。
「べつに捨てたわけではない……だが……」
「双児だから?忌み子だから?」
 双児は忌み子としてどちらかを捨てるか、親戚に預けるかすることがある。
 父もそうやって、秋月を捨てたのだろうかと思った。
「あの子は、秋月は、母……辰狐である、葛の葉に預けるつもりでもいた……」
「それじゃ、捨てるのと同じじゃないの!!」
 葛葉は肯定したと思い、カットして頭に血が上り、バッと立って声をあらげて父を睨む。
「落ち着きなさい……」
 葛葉の腕を強く引き座らせる。
 葛葉はまだなにか言いたかったが父の厳しい目つきに黙って従うしかなかった。
「私は二人とも育てるつもりだった。
だが、秋月の力は生まれながらにして新月の力と獣の力が強かった。
それは辰狐を統べる者の証。」
「総べるものの証?」

 そう……と少し間を起き晴明は目を伏せて語る。
 母の葛の葉姫に秋月を預けるのは決まっていたことだった。
 人と獣が共存して生きていける世界を創るための統べる王が秋月だった。
 母で狐の王である葛の葉に預けるはずだったが、生まれたばかりの秋月は何者かによって攫われたのだ。
 辰狐である母にその事を問いただしてみたが、知らないという。
 だが心当たりはあった、大陸から来た、力ある狐が秋月の力を欲し攫ったのではないかと。
 相手は手がかりを置いていかなかったので今まで探しようがなかった。
「そして、今日手がかりとなるモノを手にいれました」
と光栄黒い紐を晴明に差し出す。
「これで手がかりが掴めるのではないでしょうか?」
 あの時もらってきたのはそのためだったのだ。

「よくやった、光栄」
 紐を晴明に預ける。
 晴明はその紐を触った瞬間にビリっと痛みが走ったらしく顔をしかめるが、秋月の悲しい心を自分の罪だと思いその痛みをしばらく握り続けた。

「秋月のことを一言も話さなくて済まなかった。
話しておくべきだったね。
だけど、いつかは話そうと思っていた。
話が理解できるようになったら……と」
 父の申し訳無さそうな表情で見つめられて、なんだかまだ府に落ちない心を落ち着かせる為に大きくため息を一つ吐いた。

「それが今日だってことよね…
……でも秋月が可哀想……」
と、うつむき、秋月の事を考える。
もしかしたら、秋月の立場に立っていたのは自分かもしれない。
 そして、双子なのに考え方が全く違うことを考えて口にする。
「秋月は人の命なんてモノだって言った……攫っていった狐って秋月のことをモノとしか考えていないのかも……」
 そっと閉められた首を撫でる。
 そういって首を閉めた秋月の思いが感じられて。
 そのことに気付き晴明は眉をしかめる。
 葛葉の細い首には青黒い痣が秋月の手の形で残っていた。
「でも父様……秋月を結局お祖母様に預けると言ったけれど、
それって、モノとかわらない言い方だと思う……」
 悲しそうに言う葛葉の真直ぐな言葉を聞き、晴明は苦笑した。

「そうだね、人の命、運命はモノじゃないね。
運命はその人そのもの。
人がどうこうすることじゃないけど、我が子のための決断は親がしなくてはならないと私は思うのだ。」
 迷いなどなくハッキリといった。

 その言葉に葛葉は納得した。
 確かにそうだ。
 何も分からない子供を導くのは親の役目だと思う。

「私もそう思うから、葛葉を晴明様にお願いしているのよ……」
 カグヤは子の教育はほとんど晴明に任せている。
 自分は人ではなく神に近し存在だから、葛葉に他ならぬ力を増させてしまう。
 それにカグヤは邸に常にいるわけではなく、贄を探しにに何処かに出かけることがしばしばである。
 だか、家族としてのスキンシップはふつうの家族より温かく絆も強いと確信はある。

「晴明様が導いてくれたおかげで、こんな可愛い良い子に育ったのだものね」
 とカグヤは葛葉に微笑み、痣になっているところに触れて消した。
 自分では気づいていなかったけれど、きっとひどい痣が首に着いていたんだろうと思った。
 それは月夜丸の首に巻きついていた紐のようなものだったのかもしれない。
「ありがとう…母様」
「いいえ、どういたしまして……それにしても……」

 カグヤは扇を握りしめている手をぐっと握る、笑みがスッと消えると目を、大胡ん色に輝かせて人並み鳴らない怒りがにじみ出てるのが周囲にいるものをおののかせた。
「秋月を攫った狐メ……みつけしだい…八つ裂きにして贄にしてくれるわ!」
 手にしていた扇がミシっと泣いてみんなは黙る。

「そ、それにしても、無事にそだっていることが分かって良かったじゃないですか」
 その場の雰囲気を明るくするため光栄はそういった。
 行方も分からず、もしかして、すでに亡くなってかも知れないと危惧していた晴明のためにも。
「それもそうだな」
 晴明は光栄の気遣いに微笑して答える。

「だけどよ~性格悪く育てられたものだよな。なんだか捻くれて……」
 と今まで黙っていた頼光がそう言ったものの途中で口を閉ざす。
 秋月の両親の目の前でいう台詞を言うものじゃないと思ったからだ。
 けれど、葛葉は大きく頼光の言葉に頷いた。

 「そうよね!!秋月のやつ本気で私を殺そうとしたり、命をモノ扱いしたりしてさ!むっかつわよね」
 葛葉は秋月の不満を怒りを現す。
 可哀想だと思っても許せいないのだ。

 「本当にどんな教育されてるんだか!!」

 葛葉は愛しの光栄様の目の前では、少しはお淑やかにしている事もわすれて怒りを現すように地団駄を踏む。
 
その様子を黙って見ていた炎と氷はとっさに手と手を取り合い怯える。

「ほんとうに、北の方さまそっくりだよな……」
「うん……」
と氷と炎は囁きあった。

「ま、ともかく、秋月のことは私が必ずみつけて連れ戻し、人間としての人格を育てるから、今日はこれくらいにしよう」

 晴明はパンパンと手をはたき、話を切り上げ終わらせる。
 皆の様子を見ればボロボロな出で立ちで、長く話をすることは無理だと思っていたからこの辺で家族会議はお開きになった。

 さすがに、気が抜けた、光栄と頼光は自分の邸にまっすぐ帰えっていった。
 もう、朝日が都を優しく包む時刻になっていた。
 頼光はさすがに疲れていて、晴明の命令で炎と氷に邸まで運んでもらい、光栄は物忌中なので、久々に出仕しなくていいから、邸に帰ったとたん眠りに着く。

 葛葉は一日中寝ていなかったので頭がボーとしてその場で寝ころんだ、すると、
晴明とカグヤは葛葉が眠るまでそこにいてくれた。
 子供扱いされていることに少し抵抗を見せてみたが、それは甘えである。
 こうして両親の慈しみを受けている自分は本当に幸せ者で、こうしてもらえない秋月に申し訳ないと思った。
 秋月はこういう幸せを本当に知らないのだろうか……

 そんな私をどこかで見ていて、憎んでいるのではないだろうか……
 心の底でごめんね…とそう思いながら意識は眠りに落ちていった。



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2014/11/12 (Wed)

15・慈愛の力

「心が癒されない限りって……」

 月夜丸と秋月は同じような感情の持ち主だった。
 だから呪が通じたの?
 そう思った時。

「うわあああああ!!」
 月夜丸は突然叫び、首に縛られている紐が月夜丸の首に黒く小さな雷がビリビリトはしり、苦しみにもがく。

「月夜丸様!!」

 倒れてもがく月夜丸をおさえようとしても、近付けない。
 秋月が呪を手放した所為で呪詛の制御がきかなくなったのだ。

 光栄は、口元に手を当てて、考えあぐねる。
「う〜ん……困ったねぇ……月夜丸の心が癒されるまでといわれても、気持ちがわからないからねぇ」
 呪詛解除は陰陽師の得意分野だけれど、呪いを解く手立てが本人次第で、いまや、正気も失いかけているとなるとなかなか難しい。

 葛葉はハッとして、光栄の衣のすそを引いて、戸惑いの瞳で光栄の顔を見る。

「秋月と同じ気持ち……だと思うの……親の愛が関係してると思う……」

 どういう、気持ちかは口に出して言えなかったけれど、さっきの流れ込んできた気持ち。
 それと同じだとおもう。

 くぅ〜んと白犬が近付いてきて何か訴えるように葛葉を見つめる。

「シロ?どうしたの?」
 シロはくるりと向きを変えると月夜丸に近づく。
 だが、暴れる月夜丸には中々近付くことができないようだった。
シロは月夜丸にどうしても近づきたいようだった。

「光栄さま、炎、氷、それと頼光、月夜丸を押さえて!」
「おう!」
 一斉にかかって月夜丸の両手首を押さえつけた。
 けれど手加減を知らない月夜丸を抑え込むのはなかなか困難だった。
 光栄が式を使って抑え込もうとした時
 頭を激しく左右にふって苦しがる月夜丸を、人の姿をなったシロが優しく両手でそっと包むように頭をおさえた。
 すると、激く痙攣まで起こしかけた体は次第に治まっていく。

 ビリっと両手に黒く小さい雷が走って痛みを感じているようだったが、我慢し月夜丸の名前を呼ぶ。

『月夜丸……苦しむことは無いのよ……お父様を恨まなくていいのよ……』

「は、ははうえ……?」

 月夜丸の苦しさが段々ひいているようだった。
 だが、逆にシロの白い手が黒に染まっている。
「シロ…もしかして……呪を引き受けようとしてるの……?」

 葛葉の問いに微笑んだ。

『この力は月の姫に頂いたもの。
月の姫の御子の呪を取る力が有るそうです……
お返しするのが筋ですが……申し訳ございません……
わが子を助けるために使わせてほしいのです…』

「そんなことはいいよ!でも、シロが……」
シロは魂の存在だ、秋月が作った呪われた獣と同じになってしまう。

『あなたの苦しい全てを取り除いてあげる……獣の気配も……苦しい思いも……』

 シロの白の魂が、蛇のようにうごめく黒にだんだん染められていく。
 その分、月夜丸も苦しさから解放されて、母親の手に触れる。
 月夜丸の瞳は涙が溢れ、頬に伝う、その涙が黒く染まったシロの手に濡れた。

「母上……母上は本当に父上をお恨みではないのか?
殺されて悔しくなかったのか?裏切られて……」

『ええ……悲しかったけれど…
…恨みはなかったわ。
あなたという愛の証がうまれたのだもの。
初めて会った幼いあなたを認めてくれた。きちんと、あなたを大事に育ててくれてた。それは愛があった証。』

 ふつうなら、我が子でも殺してしまうかもしれないが、そうしなかった。
 本性が犬であった自分は受け入れられなかったけど、時を経て受け入れてくれたそれだけでもういい……

「母上……」
 黒い呪が、首の方まで伸びてきた。
 喋るのがくるしそうだったが、言わねばならない事がまだある。

『あなたの心は父上と同じ……私を殺めた時とおなじもどかしさ……。
お父様を理解できるはず……分かりあって……そうしたら、きっと……あああ!!」

 顔を挟んでいた手をばっと離し、頭を押さえてもがく。
 だんだんあの、秋月がつくった犬妖鬼になっていく。

「母上!」

「シロ!!」

『葛葉……ちゃん……私を……消して……』
 言葉を言うのも困難になっているようだった。
 グルルルと獣のうなり声がまじる。

 葛葉は涙をためて、頭を振って拒む。

「そんな……!そんな事をしたら、シロは生まれ変わることもできないのよ!?」
 それは、恐ろしい事だから、本能的に拒絶したかった。
 
 シロはかろうじて、人の微笑みをする。
『もう……生まれ変わることは……ないのです……
その力を使ってでも、あの人を愛したかったから……だか……ら……はやく……』
 もう、獣になってしまった…
 目は赤く、のぞく口も血のように赤く、黒い獣の姿になった。

「葛葉ちゃん……やってあげなさい。
僕が同じように祓うのと葛葉ちゃんの力で祓うのは違う力を持っているのだから
ただし、心をこめて願って、晴明様から教わった祓いをやるんだよ」
 光栄のその言葉の意味は、葛葉は特別な力を持って生まれてきた。
 月の神の血を引く母と、辰狐の血を引く父の子供。
 人ではあるけれど、人とは違う内なる力を持もっている。
 
 だから、月の血を受け継ぎ尚且つ人でいる為には、犬であるシロに慣れる必要があった。

 そして、シロに慣れてきたところだった。
 可愛いと思えるようになってきたところだった。
 でもそれは、特別な存在になりつつあるシロだからこそ、だったのかもしれない。
 葛葉はそう思うと胸のあたりがギュッと痛くて瞳に涙があふれてきた。

「シロ……ごめんね……」

 と呟いたあと胸元から府をとりだし、呪文を唱え、シロに貼る。
 葛葉に襲い掛かろうとするのを押さえているのはまだ意識がのこっているからだ。

「散妖伏邪……急急如律令…畜怪」

 府は月の光のように光り、闇を淡く照らしていく。
 黒く染まったシロは人の姿に戻り、元の白い獣になって、だんだん消えていく。魂がいやされ消えていく。

 葛葉はこの力を初めて使えたと思う、母と同じ力。
 魂を清め祓い、この星を巡らせる特別な力を感じた。
『ありがとう……葛葉ちゃん短い間だったけど楽しかった……』
 シロはやさしく微笑み小さな光の粒子となって消えていった。

「コーエー……わたしもよ……」
 シロが消えて、落ちた府に葛葉の涙が落ちてぬれた。

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2014/11/12 (Wed)

14・ふたつのこころ

「葛葉!!」

 頼光は襲い掛かる最後の妖犬をひとなぎし、葛葉を助けるべく月の方に刀を振り下ろす。

 首を閉めている手首と腕が分かれた。
 月の方は一歩葛葉から離れ、自分のきられた腕をみる。
 頼光は自分で斬っておいて、いやな感じより無気味を感じる。
 月の方は平然としていて、腕からは、血が一滴もながれず、いまだに同じ位置で葛葉の首を手が締め上げている。

「どっどうなってるんだ!?」
 まだ締め上げている手を取ろうとしてもなかなかとれない。

「呪だね……己の憎しみを糧に動いているんだ。」

 苦い顔をして光栄は月の方をにらむ。
 月の方はもうすで人間ではなくなっているのだろう…
 式神でなくてはそういう離れ業はできない。
 それとも存在自体が呪詛の塊なのだろうか…
 
 月の方はおかしそうに笑い出した。

「そう、純粋な憎しみで、僕の力は動いている。この憎しみが癒されない限り呪はとけないのさ!」

 勝利を勝ち取ったような感じで高らかに言い笑う。

「それか……僕の本当の名を知らないと、解けないのは基本だよねぇ?
でも残念、この中に僕の名など知る者はいない……」
 くすくすと笑いつづける。

「うっ・・・くっ!」

 月の方の顔は見えないが葛葉が首を閉められだんだん命を落とそうとする様をきっと恍惚の顔で見ている。

 頼光は葛葉を助けようと手をなんとか取ってやろうとしていたが、復活した月夜丸にそれをさせないように両手をつかまえられて、身動きができなくなった。

 術者は本当の名を明かさない。
 名は自分の命、運命を左右するモノ。
 光栄は静かに思い出していた一度だけ晴明に聞いた事がある。
 この葛葉の片割れの子の名。
 それこそ、生みの親につけられた本当の名なのだ。

「あ、き、づ、き……」

と音をくぎって月の方に向かって呪を込めて言う。
すると月の方ビクリと肩を震わした。
 黒くて見えない影の顔がうすれて、目がのぞく。
 その目は光栄を驚きの目で見つめていた。

「あきづき……」

 今度は続けていう。
 葛葉を締め上げていた、手がきえた。
 葛葉は大きく咳き込む。
 後少しで意識をうしなって、死ぬところだった。
 光栄が呪をといたおかげで助かったが、どうして、名を知っているのか不思議だった。
 葛葉は苦しさで出てきた涙を拭い、光栄が視線を向けている人物をみると、自分がいた。
けれど、髪の色は銀色で耳は狐の耳をしている。

「な……ぜ………?」

 同時に葛葉と秋月と呼ばれた月の方は掠れた声で疑問をつぶやいた。
 
 光栄はニヤリと笑った。
 (うわ、なにか企んでるぞこいつ。)
 と頼光は思う。

「もう一度いってあげようか?秋月くん。」
 すらりと、言葉をつなげて名をいった。

「やめろぉ!!」
 いつの間にか己の腕に戻っていた手で頭をかかえて苦しむ。

「どうして、名前をしって……いる……」
 苦しんでいる秋月を見て、フフと今度は光栄が笑う。

「晴明様に教わったんだよ。愛しい愛しい我が子の名前をね」

 どういうことなの?愛しい我が子って……?
 自分以外に父様に子供がいたなんて知らない。

「愛しい我が子だと……?
そんなはずはない!僕は捨てられたのだから!葛葉の変わりに!!」
 と叫ぶ。
 その顔は泣きそうな悲しい顔をしていた。

「そんなことはない。
晴明様はいつもお前を探していた。忘れたことなど……」
「うるさい、うるさい!!!」
 聞きたくないというように叫ぶ。

 自分の知っている事実と本当はそうあって欲しかったという思いを振り切っているように葛葉は思えた。

 それは何故だかわからないけど、そう何かが伝わってきて、胸を締め付ける。

「その憎しみは葛葉がうらやましという気持ちから、だろ?」
 光栄は秋月の黒い感情が生まれた本質を言葉にした。
 口に出されたものは日の国において、言霊となって力となる。
 言霊となるように込めていってやる。
 秋月は狂ったように暴れるのをやめると肩をおとして力なく笑う。
 俯いていた顔をあげるとキッと葛葉を睨んだ。
 それは殺気の含んだ目。

「そうさ……僕は葛葉がうらやましくて……憎い……葛葉が死ぬまでこの恨みは憎しみは消えないのさ……」

「……」
 葛葉はなにも言えず、秋月の目をそらさずに受け止めているだけが精一杯だった。
「あーあー興ざめだ。この機会に葛葉を殺せると思ったのに、予定が狂った……
そこのお兄さんの所為でね……」

「数年後には本当に君のお義兄さんになるからよろしく」
 光栄はにっこりとほほ笑んだ。

「…そうならないようにしてあげるよ。かならずね。」
「いやでも、みとめてもらいますから」
しばらく光栄とにらみ合いをしていたが、秋月は、月夜丸を示すように顎をくいっと上げ、葛葉たちの視線をそちらに注目させる。
「あれの呪はとけないよ……心が癒されない限りね……」
まだ何かあるという用に不適に笑うと、秋月は闇に溶けるように消えた。

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2014/11/12 (Wed)
空は月が紅く輝いている。
 禍々しさが漂う空には小さく輝く星もある。
 葛葉、頼光、光栄、シロ、と式神の、炎と氷はさびれた神社にきていた。
 そこは一度、月夜丸を捕まえた神社だった。
 しばらく待って、来ないのではないかと思ったその時、鳥居のが、ぐにゃりと不気味に時空が回ると人があらわれた。
 月夜丸は虚ろな表情で生気のが無いように思える。

「やっときたわね……私に勝負を挑もうなんて根性あるじゃないの!」

 と左手を腰に当てて右手で、月夜丸を伴ってあらわれた者をびしりと指差す。
 炎は鬼火を出して辺りを明る照らす。

 挑戦者で今回の事件の犯人の姿を見てやろうと思ったが、顔がないのか、ただ黒かった。

「あいつ顔がないのか?」
と頼光は呟いた。

 葛葉は顔をしかめる。
 同い年くらいで犬神をあやつる者の顔が見えないが、耳は狐の耳で、尻尾は狐だった。
 顔と同じく、黒い服をきていて、全体的に暗くて、影のようだった。
 ただ、髪が銀が混じっているらしく明かりによく輝く。
「呪術をつかって、顔を見られないようにしてあるんだね……」
 光栄も内心で舌打ちする。
 葛葉の片割れがどんな顔をしているのか興味があったからだ。
 わざと覆面にしたのは顔を知られるとまずい理由があるのだろうか?
 

「お前こそ、本当にくるとは思わなかったよ、葛葉……」
 フフっと人を見下したような口調と笑いをする。
 その声音できっと人を見下したような表情をしているんだろうと思うと腹が立つ。

「売られたケンカは買うのが私の主義よ!」
「ケンカか……フン。ケンカで済めばいいけどね」

 声のトーンを落として、皮肉たっぷりにいう。
 光栄はそのやり取りをきいて、なぜか、解説したい気分になって、

「う~んどう思いますかね、結構似た者同士だと思いますが~
……どうでしょう解説員の頼光君」
「そうですね~二人ともプライドが高いところが………ってちゃかすなよ!」

 と頼光はのりつっこみをする。
無意識に合わせてきてくれた頼光に肩をポンポンと叩きながらアハハッと笑う。

(光栄って、何考えてるのか…
…真剣勝負のときに…しかも時代錯誤だっての!)
 と氷は光栄のことを心の中で思った。

「月夜丸様を返しなさいよ!」
 葛葉たちは光栄たちの話をよそに話をすすめる。

「いやだ、これは僕のものだ。」
 口調がやはり居丈高だった。
 しかも、モノ扱いが当然の、悪気がない言い方がやたら腹が立つ。
 葛葉はその言い方にむかつき、札を数枚取り出しさっと放つと輝く鳥になってその犯人に向かう!
 葛葉が式を放つと同時に

「月夜丸!!」
 と月の方が命令口調で叫ぶと、月の方の前に立ちはだかり、人間技じゃない早さで光り輝く式鳥を素手で全て掴み消した。

「なっ!」
 葛葉はあまりの事に驚く。
 その隙をつき、凄い勢いで葛葉目掛けて月夜丸は走り、
葛葉の細い首をつかみ、そのまま月が輝く空に持ち上げる。
 自分の身長以上高いところに持ち上げられしかも、容赦なく閉めてくる手の所為で息が出来なくて意識を失いそうになる。

 「葛葉!!」

 頼光が鬼切丸の鞘を抜き助けにいくよりも早く、光栄が放った式神が月夜丸の腕に当たり、紙は白蛇になり腕に容赦なく巻き付いた。
 その締め付ける痛さに手を離し、葛葉を落とす。
 頼光はすかさず落ちた葛葉の下敷きになって衝撃を和らげる事が出来た。

「ごめん、頼光大丈夫?」
「ちょっと重い…」
ぺしりと頼光の頭を叩いてから、
「ありがとう」
と葛葉の安堵の笑みを見ると、それだけで幸せになる頼光だった。

「多勢に無勢なんて卑怯だと思わない?」

 月の方は表情は見えないが、光栄の方を不敵な笑みを浮かべて睨んでいることだろう。

「君だって、無勢じゃないだろ……?」
 光栄がそういったのは、周りが闇の気配に満ちていたからだ。
 獣の唸り声がどこからともなく聞こえてくる。
 禍々しい犬の気配がする。
 それは今まで呪術した犬神だ。
 一匹が光栄目掛けて飛んできた。

 それを頼光がすかさず鬼切丸で切る。
 そうするとさぁっと消えた。

 「ありがとう、頼光君」
 と微笑んで頭を撫でる。
 光栄に対しては少し不服な表情をするがすぐに気を引き締めて
 「子供扱いするな!まだくるぞ!」

 次々と黒い者が光栄達を襲う。
 頼光と、炎、氷、白がそれらの相手をする。
 葛葉は月夜丸の手が離れたあと、蛇の式紙を剥がそうと必死の月夜丸を無視して、月の方に式神を放つ。

 月の方は手を前へ突き出し、空に浮かぶ紅い月のような光があらわれ、式紙を黒にかえて、式紙を返す!

「式返し!?」
 あわてて、式解きの術をとなえるが、

「解けない!きゃあっつ!」

黒に染まった式紙が葛葉の頬や腕を掠った。そこから血がにじみ出る。

 月の方はわざとらしく大きなため息をついた

「弱いじゃん。ちやほやそだてられすぎなんじゃないの……?」
 くっと咽をならして見下すように笑った。
 
月夜丸は蛇を喰いちぎって、再び葛葉めがけて突進する。

 葛葉は傷で痛む体をおさえる事をやめ、素早く態勢を立て直し、襲いかかろうとする月夜丸の方に走り、間近に迫ったところでしゃがみ、足払いを払った。
「!?」
 突然の攻撃によろけた隙に素早く、頭で顎をづつく月夜丸は仰向きに倒れた。
「きまった!!」
とその様子をよそ見していた、氷と炎が同時に叫んだ。

「呪術だけが、取りえじゃないわよだ!」
 氷にいつもプロレス紛いなことをやっているのはこの為でもある。
 呪術は意外と体力を使うのでそう言う格闘系で体力を葛葉は養っていた。
 倒れたすきをついて、喰いちぎったはずの光栄の白の蛇が二匹に別れて月夜いるの両手首を地面におさえつける。
 その上に葛葉が乗る。
 意図したわけではないけれど素晴らしい連携技だった。

 「さてと、まずはあなたから解放しないとね」
 何処かに操っている核がある。
 それはすぐに見つかった。首に黒い紐がある。
 それを取ろうとしたら、バチリと手をなにかに弾かれた。

「うはぁ!!!うあぁあ!」

 と同時に月夜丸は苦しみもがく。
 その苦しみは光栄の式神を引き千切るものだった。
 葛葉は暴れる月夜丸から、とっさに離れた。

 「それを無理にとったら、月夜丸は死ぬよ……いいの?」
 月の方はクスクスと笑う。

 「あんたねぇ……」

 葛葉は月の方を睨む。
 この呪は命を縛っているらしい。
 紐をとったら月夜丸の命もない。

「月夜丸は僕のものだ。お前が僕のものにふれるから呪って縛ってやった……」

 月の方は葛葉に近づき肩をわざと強く推して転ばせて度かすと、月夜丸の首の紐を引っ張る。
 すると月夜丸は苦しまなくなった。
 手首に再び巻き付いていた蛇は月の方が足で踏み付けると灰となって消えた。
 月の方は命を本当に握っているのだ。
 葛葉は月の方の襟をばっと掴み引き寄せ睨む。

「人の命をなんだともってるのよ!モノじゃないのよ!」
 目を見つめて説教をしたいのに、顔が見えない為に心に芯に届かないと思う。
 それでも、見えない顔を睨みつける。
 けれど、月の方の態度のなさ馬鹿にしたどこか、虚しさだけが伝わってくる。
「モノだよ。
命なんて……月夜丸の命は、僕のモノ
……そして、お前の命も!!」
 月の方は叫ぶと葛葉の首を両手でしめる。

「うっ!」
 指が咽にくい込む。じわじわと、きつく締め上げていく。

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2014/10/26 (Sun)

12.シロの思い

「月夜丸様のお母さんだったんだ……」
 葛葉は府も落ちた。
 いつもこつ然といなくなったり、月夜丸の後を間違えなく追えたり、悲しそうにして いたのはそう言う事だったのだ。

『はい……我が子がとても心配で……心を闇に蝕まわれているのが悲しくて……』
 それが心残りで天へ上がれなかったという。

『葛葉ちゃんと初めてあったとき、明るい月の力を感じました……あなたなら月夜丸を救うことができると思ったのです』
「でも……救えなかった……」
 もう月夜丸が獣になってしまったなら手遅れだ…

『いいえ……これからです……あの子を救って下さい……あの闇の月の力を使う童から……』
「闇の月の力をつかう童?」
と、光栄は眉根を寄せた。
 月の力を使えるものなど、さっきの葛葉の母くらいなものだ。
 葛葉も月の力をもっているが、潜在的で使えるとは言えない。
「だとすると……もしかして……その童と言うのは……」
一つうなずき、静かに確信したとなりで、

「それが犯人なのね!」
 葛葉は犯人が見つかって意気込んだ!よし!これで犯人が捕まえられる!

「よぉし!つかまえてやるわ!そして、月夜丸さまを救ってみせる!!」
「おう!やってやろうぜ!葛葉!」
 頼光も意気揚々だ。
 光栄は二人を少し落ち着かせるように肩をポンポンと叩いてから、
「その童は犬に虐待するものに復讐を共にしていたのに、月夜丸自身をつかうとはなにか、仲間割れでもしたのかな?その時の事を知っているなら詳しく話してくれないかな?」
唯一の年長者の冷静さでシロに問う。


シロは真剣な眼差しで光栄の問いにうなずいた。

『その者は私の存在に気付き言いました……』

 宮が月夜丸に殺されそうになったとき、コーエー、シロは宮を守った。
 そして、霊力を奪われた。
 それでも宮を守るように唸る。
 月夜丸は一瞬怯んだようだった。
 自分の母だと感じたのだろう。

「お前……葛葉の犬神か?」
 月夜丸を操っていた童は不敵に笑い。

「葛葉に伝えろ……例の社で待っていると。僕の犬に手を出した報いを受けさせてやる」
といい、消えたという。
 宮はその時、シロの姿をみて驚いていた。
 それは恐怖ではなく、哀しいまなざしと謝りの意がこめられていた。
 それで、シロは十分だった。

「ええ!あたしが今度は狙われてるの!なんで!?」
『それは分かりません……どういう意図ががあるのか……」
 光栄はだまっていた。
 やはり、葛葉の攫われた片割れだなと確信した。
 でも葛葉はその存在を一切知らない。
 知らされずに葛葉育った。
 けれど、もう一人は充分葛葉の事を穿った形で知っているようだ。
 
 攫った者は人ではないもので禍々しい、晴明の力や、カグヤでも探すことが出来ない、壁を創る程の力を持つ者に育てられた。
 もし、幸せに親のもとに暮らしている葛葉を知り、遠くから見て羨ましく思うことがあったから、疎外感や羨ましいという感情がうまれて憎んでいるのかもしれないと、光栄は思った。

 まだ、そのことは言わない。自分の想像でもあるし、親である晴明が口に出すまで……
 それを言ったら葛葉は他のことでも混乱してしまうと思う。
 なので、フツーの兄弟喧嘩だと気楽に思うことにした。
 そこまで考えておいて気楽な事に切り替えるのがうまい光栄だった。

「宣戦布告されたら、受けてたってみたらどう?」
と光栄は囃し立ててみた。

「宣戦布告だな。葛葉どうする?」
 葛葉の気ごころを知った頼光はわざとニヤリとした笑みを向ける。
 それにこたえて葛葉も同じ笑顔だ。

「もちろん!!売られた喧嘩は受けて立ってやるわ‼」
「おう!やってやろうぜ!葛葉!」
 頼光も再び意気揚々だ。

「その勢いだ。僕も精一杯手伝ってあげるからね」
 光栄も同じく微笑みながらいう。
「最強タック結成しちゃったね氷」
「オレ達もその中にはいってるんだぞ炎」
炎も氷もわざと同じ頬笑みをつくって
チームの結束力がつよまる。

 その頬笑みは力強いものとなって、シロの不安をも吹き飛ばすものになる。
 葛葉はシロの手を取ってぎゅっと握る。
「それに、月夜丸さまももとに戻してあげるから安心してコーエーじゃなかった、シロ」
『ありがとうございます……葛葉姫、皆様もよろしくお願いします』
犬姫は微笑むと子犬にもどり、いざ、月夜丸を操る月の方のもとへ急いだ。

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2014/10/26 (Sun)

11・カグヤの力

 翌日、右大将殿の妹の夫が獣に襲われたという話題が持ち切りになった。
 昼にはそのことが葛葉の耳にも入った。
 夕暮れに頼光を邸に呼んで詳しい話を聞く。

「ついに、貴族まで狙われたのね……こうなったら宮廷が動くことになるのかしら…」
「じゃあ、オレ達がしていたことを、他のやつらに取られることになるのか?」
と頼光は不満げだった。

「それは大丈夫だよ」

 と光栄が正式な直衣を着て庭先に現れた。
 宮仕の帰りらしかった。

「じつは、晴明様がその件を引き受けてくれたんだ。
でも、晴明さまは仕事だから僕がやることになったんだ。晴明様は宮中仕事で秋の季節は忙しいからね」

 微笑みながらいった。

「お前は忙しくないのかよ?」

 と不服顔で頼光は光栄に言う。宮廷陰陽師で自分たちの仕事を奪う事は同じ事だからだ。

「もの忌中ってことで、宮廷にはいけないってことになってるんだ」
「陰陽師がきいてあきれるぜ!」

 頼光は皮肉を言い放った後頭部に葛葉の拳が襲った。

「せっかく横取りされないようにしてくれたのに文句を言うなっ!」
 けれど、憎まれ口をたたくのは頼光だけではなくて、
 光栄の後ろからひょいっと、青いイメージの葛葉と同い年くらいの童子があらわれ、
「結局横取りだよな、葛葉がとろとろしている所為だぜ~」
と今は光栄の童式として使えている氷が口悪く言う。
 頼光はまっすぐに思った事を言うが、氷は確実に悪意をこめた憎まれ口をいうのだ。

 ひさしぶりの憎まれ口に葛葉は高欄から、すくっと立ち上がり氷めがけてとび蹴りをした。

「ぐは!!!」
「ひっさしぶりねぇ……!
その憎まれ口を聞くのは本当にひさしぶりで涙がでてきそうだわ!!」
 といい、氷の背にのり両腕で首をホールドして背骨をしゃちほこのようにそらせる。
「ごめんなさい、ごめんなさい!!葛葉さまはなにか考えがあってとろとろしておいでだったのですね!!」
「とろとろは余計じゃ!!!」
 さらに背骨をそらせて、背からぼきばきと音がなる。
 氷はバンバンバンっ!と両手で参ったの合図を出す。
 それが何時ものスキンシップでもありストレス発散となるのだ。
「葛葉ちゃんもう放してあげてよ~」
と炎が何時ものように止める。
すると、もう気がすんだのかパッと手を放して退く。
 葛葉は頼光のレフリー判定により勝利し栄光の笑みをうかべる。
 「くくくっ面白いよね葛葉達はっ」
 光栄はそのしぐさがとてもつぼに入っておなかを抱えて笑いをこらえる風をとっているが、葛葉の面白可愛さに萌え死ぬ寸前だ。
「なんか…いつもより凄い…
いびり方だったぜかなりストレスたまってんな……」

 氷は炎にそう呟いた。

 「そりゃねぇ……犯人の手がかりが掴めそうで、掴めなかったし、月夜丸の話を聞いて落ち込んでたんだよ」
「ふ~んって……月夜丸?」
 氷は光栄の方を見た。
 その視線を受けて光栄がいう。

「実は最初に報告された情報だと月夜丸という宮の息子に襲われたということだったんだ。」
 

「それっ!本当に!?」
 葛葉は信じられなくて、光栄の顔を驚愕した顔で見る。
 けれど、昨日父が憎いと言っていた事を思い出すと神妙の顔になってう葛葉はうつむいて冷静に考える。
 本当に殺す程憎かったのだろうか?
 そうしたら、今日じゃなくてもいいはずだ。
 
 
「その月夜丸のお父さんって死んじゃったの?」
「なんとか一命は取り留められたそうだよ。」
葛葉と頼光はホッとむねを撫で下ろす。

「それで、宮の口から獣にやられたという報告になったんだ。」
 それは、あからさまに愛しい息子を守る言葉だ。

 その言葉を信じられない貴族が葛葉の父の晴明を呼び出し、占わせたところ、晴明は今巷を騒がせる妖犬の所為だと断言して今日の京都じゅうに本格的に広まったということだった。
 どちらにせよ、陰陽師で調べさせ結果を追求するならそういう事になるだろうけれど、父は空気を読んでそう答えたに違いない。
 そして、光栄様を早速葛葉のもとへ行かせてくれたのだ。

「晴明様の情報によると、月夜丸さまは行方がわからないことが、怪しく思われている方もいるから、月夜丸を今日中に探してくれと言っていたよ」

 まだ最初の情報を疑っている方々がいる、月夜丸に親近をもった葛葉に悲しい思いをさせたくないと思っての忠告だった。

「取りあえず、月夜丸さまを探してみることだな。犬コーエーに後を追ってもらえば分かるんじゃないか?」
 頼光はそう提案した。
 ところが葛葉は困ったように頭をかいた。

「コーエー昨日からいなくなっちゃったのよ。
いつも夜になると消えちゃうの…」
「コーエーはあそこにいるよ」
「え・・・?」
 光栄は草の陰を指さす。
 すると、庭の影から、よろよろと、コーエーが現れた。
 葛葉はコーエーの体が透けていることに驚いた。
 コーエーは葛葉の顔をみると安心するようによろけて倒れた。
「コーエー!?
しっかりして!」
 触ろうとして、体が透けた。

「これは?どうなってんの?」
「この犬は……魂だったんだ……」

と光栄はいった。

「晴明様が言っていたよ。
 月の力を借りて形を保っていたんだって。
 けれど、これは誰かにやられて魂の力を奪われているね…」
 葛葉たちが気付かなかったのは母カグヤの月の気に慣れているからだった。
 コーエーはだんだん薄くなっていく。

「ど、どうしたらいいの?死んじゃダメっっていうか消えないでっ」
 薄くなりつつも何かを訴えるように葛葉を見つめる瞳に、どうにか助けたいという思いと、助からないかもという絶望感で慌てふためくしかない。

 そのとき、凛とした清清しい月のイメージがする香が馨って来た。
 その香は葛葉の心を落ち着かせる効果を持っていた。

「葛葉、、その犬を私に貸しなさい」
 北の棟からあらわれた母のカグヤが威厳のある凛とした声で言った。
 そして、不思議なの力で、コーエーを浮かせ胸元に抱いた。

「く、喰われる!!たいへんだ!」
 と氷は叫び、カグヤは失礼なっという顔で手にしていた扇をブーメランよろしく投げ付け氷を気絶させた。

「『白』の生き物は神の使いでもあり神に愛されし獣。
お前の魂が癒されるまでの力を与えましょう……」

 カグヤの手は月の光のよう優しく光り、コーエーの魂を癒し力を与え輝いた。
 そして、犬の姿ではなく人の姿へと変えた。
 ただし、耳と尻尾が生えている。

『ありがとうございます。月の姫……この力は贄となりお返しいたします。』
と頭を垂れ、礼をする。カグヤは手をふって断った。

「いいのよ。まだお腹はすいてはいないし……非常食の贄は二匹いれば十分だから、ね?」
 カグヤは炎と氷を見て妖艶に微笑んだ。
 炎と氷は二人抱きあってざめた。
 
「毋様って凄い!」
 葛葉はキラキラさせ尊敬の眼差しである。

「じゃ、がんばってね」
と気さくにいい自分の部屋へ帰っていった。
だが、言い忘れたことがあったかのように、柱に手をかけ止まり、

「あ、氷あとでその扇を持ってきてね」
い、嫌だ……絶対に!
と氷は心の中で叫んだ。

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2014/10/25 (Sat)

9.ゆるむ思い

 
 月夜丸は自分の邸の階に腰掛け、子犬をあやしながらそんな月を眺めていた。
 今宵の月は少し欠けた月だ。
 自分に欠けてしまった感情のような気がした…

 「月夜丸……いい加減に元服をしないか?」
 と父が月夜丸の部屋まで渡ってきてそう言った。

 無視をする。
 父は自分を可愛いと思ってくれているのは感じているが、月夜丸は心が開けない。
 一匹の子犬が父の方に近付いた。
 父は子犬を慣れた手付きで撫でる。

「シロはこのくらいの時に私とあったのだ……」
「そして殺した」

 刺を含んだ声で次の言葉を継がせないように言ってやった。
 父は口を噤んだ。

「お前は北の方の子だぞ、シロの子のはずがない…」
 と父は諭すようにいう。

 幼かった月夜丸を、母を裏切って迎えた妻の養子にした。
 幼いので、犬に育てられたことな、忘れるだろうと思っていたらしいが、全く忘れなかった。

 父をこそ諭したいとムキになったことが幼いころはあったが、父は頑としてその事を受け入れなかった。
そういうところは、この父の子だとおもう。

 最近はその事で父と話す事を諦め父の言葉をむしすることにした。
 けれど、今日葛葉という娘と話した時の熱い思いが胸にまだ燻っていた。

「母のことをまだ人喰いの化け犬とお思いか?愛した女が獣なのが許せなかったか?答えろ……」

 犬のように唸るように父を睨み切にいう。
 父は目をそらし、俯く。
 また答えをはぐらかし逃げる気だろうか?
 逃がさないように腕をガシっと掴む。
 「!?」
 月夜丸、意表をつかれた。
 父はそのまま、夜丸の肩に顔を埋め、月夜丸の背をきつく抱きしめて耳もとで呟く。

「確かに……私は正体を知って受け入れられなかった……自分の思いを受け入れられない思い、府に落ちない思いに苛つかせ…シロを見つけ殺してしまった……
だが、今は後悔してる……
 この年になって落ち着けるようなって、ふと考える」
 父は、口には一生出さないと思っていた想いを、愛しいわが子に、月夜丸に白状する。

「シロは本当に私を愛していてくれたのだなと……
私も、もっと真剣になれば良かったと。
 殺すこともなかったのではないかと………すまない……本当にすまなんだ……月夜丸許してくれ…」

 声を殺し月夜丸の肩に頭をのせて泣いた。
 張っていた心の糸がゆるんだのだ。
 そのゆるみが月夜丸の方にも伝わってきた……
 それがなんだが、もどかしくて、許してしまいそうになる自分が嫌で父を突き飛ばし、邸の外に出た。

10.服従の関係

 あの月の方に会った場所に無意識に来ていた。
 杉の木の幹に肘をつき大きく息を吐き左の手を胸元できつく握る。
 心を、ドキドキと鼓動する何かを止めたくて。

 苦しい……苦しい……憎くて憎くて仕方がなかったのに……
 なんなんだこの違和感は。
 父から流れ込んできた心が苦しくて仕方がない。
 憎くて仕方がないという心を洗い流そうとする温かなものが、別の苦しみを与えているような感じだ。

「どうした?何がそんなに苦しんだ?」
 と月の方が気配もなく現れた。

 月の方の突然に話し掛けられてビクリと肩を揺らし振り向いた。
 月夜丸は黙った。

 なんていえばいいのかわからなくて別のことを言うことにした。

「昨日殺した犬は……?跡形もなかった……どうしてだ?」
 月の方は不敵に何時ものように微笑んでいたが、眉ねを寄せていた。

「葛葉が近付いてくるのがわかったから、消した」
「自然には還したか?」
「還すわけないじゃない。闇に支配されたモノを地の神は受け入れない、いつものようにお前は呪術を使い終わった犬を林に放ったが…」
 口元に手を当てクククっと笑いをかみしめるように笑う。

「それは意味がない事だったね。その肉体は僕が仲間にくれてやった」

 月夜丸はぐっと拳をつくり月の方を睨む。
 仲間とはどういうモノたちなのかは想像もつかないが、きっと禍々しいモノなのだろうと思った。
 
「なに?その反抗的な目は?御主人様に逆らっていいのぉ?」
「誰が主人だ‼」
と月の方の首元を狙って腕を勢いよくのばす。
 さっきまでの感情も手伝って手加減は無い。
 むしろ力が増している。
 この力で勢いで月の方の細い首を握れば息の根を止めらた。
 だが、月の方は地を蹴り跳躍し、月夜丸の背の方に空中で回転しながら着地すると何かの呪文を唱える。唱え終わるとニヤリと不敵な笑みを浮かる。
 シュッと細く黒い紐が月の方の口元から現れて、月夜丸の首に巻きついた
「なんっだ!?これは!」
「首輪だよ」
 とっさに首に巻きついたものを引き千切ろうとしたが、月の方はその紐を思いっきりひっぱり、月夜丸を仰向けに倒す。
「それにねぇ……犬のくせに、飼い主以外に懐くんじゃないよ……」
と倒れた月夜丸のむねに馬乗りになり、無表情で冷ややかな刺のある声で覗き込み言う。

「俺は主人などいない……たとえお前でもそう思っていないっ」
「思わせてやるよ……忠実なる犬神としてね……」
 きつく呪の紐を閉めていく。
 息ができなくて意志が薄らいでいく。
 薄らいでいくにつれて、この月の方の心が流れ込んできた…
「同じだ…お前も…っ俺…と」
 この童も俺と同じなのだ………と思うと意識を失った。

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2014/10/25 (Sat)

8・せつなき想い

 父は天皇の血に繋がる者で、勢力争いにもならない捨て宮だった。
 都の外れに邸で独りで暮らしていた。
 ある日カラスに襲われ傷ついた子犬を助け、俺の母になる白い犬を飼った。
 一人寂しかった父の人生に楽しい日常が始まった。
 
 シロがいれば一人など寂しくない。
 大事にしてやるからな…
 シロを父はとてもかわいがった。
 
 母はそんな人間である父を愛し、月に毎晩祈った。

 どうか、どうか、この愛しき人間の妻になれる姿にしてください…
 私はこの人間を愛おしいのです…
 

 その祈りが月の神に通じたのか人の姿となり、父と恋に落ちた。
 人の姿を保つには毎日月にお祈りをしなくてはならなかった。
 父は始めはいなくなったシロが心配だったが、なぜか、娘といるとシロがいた時とかわらず穏やかな気持ちになれた…
 しだいに、犬のシロの存在を忘れていった… 

 だが、都からも離れ、人とかかわらない父の暮らしはとても質素で、自分ひとり暮らしていくのが、ぎりぎりの生活をしていた為に、
 愛しいが、地位のない女を養いながら暮らしていくのは生活厳しすぎた。

 そんなある日、父の知人の貴族から妹を紹介されて、その娘とも結ばれ正式な夫婦になった。
 
 人の姿になって俺を身ごもった母は、何時帰ってくるか分からない父を不安に思いながら待つばかり。

 毎夜、月に祈ることも忘れてしまった母はだんだん、人の姿を保ってはいられなくなった。

 父はひさしぶりに邸に帰ってくると、母の正体を知ってしまった。
 頭には犬の耳が生えて、尻尾が袿の下からのぞいていた。
 女は人ならざるものだった。
 父は驚きと衝撃にその場から逃げだした。
 二度とこのシロと共に生きた寂しい邸には足を踏み入れなくなった。
 
 正体を知られた母は深い森へと隠れた。
 正体がばれたら、人とは会わないという獣の掟だった。

 もうすぐ臨月だというのにばれてしまった。
 このまま、犬の姿に戻ったら、子は人でも獣でもなく、ヒルコという、神の禁忌の子のようになってしまう。

 「どうか、神様……今少しだけ、人の姿に!!」

 と切に願いながら俺を生んだ。

 生まれてきた俺の姿は人だった。

 今だって人として、育っている……禁忌の子になるのは避けられた。
 だが、気配は獣だった。
 それは仕方のないことだと母は言ったが。
 そして、二、三年の月日が立つと俺は森を駆け巡り、犬の生活をしていた。
 幼く好奇心が強かった俺は森の外にでてしまった。
 そこで偶然狩りに出かけていた父と会った。
 父は俺を見た時、自分の子供だと感じたそうだ。
 人間の姿を見るのは初めてだったから、俺は驚いて逃げた。
 そのことを、母がに話すと、母は俺を人間のいるところに父のもとへ行けと言った。
それは、獣の森の神は人間である俺を、森で健やかに暮らすための条件として人に会わせてはいけないという掟があった。

 母は人であるころ父に贈られた袿の衣を被せて森を追いやった。
 行く場所もなく彷徨っていた俺は偶然に父に拾われた。

 衣を見て父は愛した女の子供、自分の息子だと認めたが、母が獣だとは認めようとはしなかった。
 母はあの化け犬に喰われたのだと、思い込んだらしい。

 そして、森に入り愛しい女を殺した化け犬と思い込んで、矢を放ち殺した……

 「ひどい………」
 葛葉は胸元で拳を作り涙をためていた。

 淡々とした口調に熱がこもって月夜丸は咽をつまらせながら思いを吐き出す。
 瞳には怒りに煌めいている。

 「愛しいモノを殺されて仇をとるくらい愛しているなら……
 母を本当に愛していたなら……獣だろうとなんだろうと母だと純粋に認めてれば… …あんなことにはならなかったのに……」

 その辛い話に葛葉も月夜丸と心が共感して泣きたくなる。せつなくて悲しくて苦しい…
 月夜丸にかける言葉が葛葉には見つからなかった。
 頼光も同じ気持ちらしく、かなしい話に涙を我慢している。

「父は……人間は愚かだ……
現実が受け入れられないと、勝手に解釈してなにかの所為にする……
人間は弱いから、もっと弱い生き物に辛く当たる……自分がどうしようもなく、何もできないからって……母にした仕打ちのように感じて……憎しみが止まらない……‼」
 最後は叫ぶように言う。
 風がザァッと吹いた。
 月夜丸の結っていない髪を激しく乱す。
 表情が見えないが、葛葉の頬に冷たいモノが濡れた。
 これは自分のモノではない。

「月夜丸…泣いてるの………?」
 月夜丸の近くに足が行き自然と涙をぬぐおうと手を差し伸べるが払いのけられた。
 月夜丸はさっと立ち上がると走り出した。

「おい!葛葉追わなくていいのか?」
 葛葉は払いのけられた手をさすりながら沈黙する。
 ただ、頭を小さく俯いた。
 
 月夜丸に気づかれる事がなかった、白い犬のコーエーはただ、寂し気に月夜丸の後ろ姿を見送っていた。

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2014/10/23 (Thu)

7・容疑者確保!

 昨日の雨はすっかり晴れて心地の良い風が葛葉の髪を撫でた。

「う、う~んいい天気!久しぶりにゆっくり眠れたし」

 高欄に座り朝日を浴びながら背伸びをしてまだ少し残っていた眠気を解放する。

 ワン!
 とあいさつするように白い柴犬のコーエーが吠えた。

 葛葉は一瞬ビクっとして高欄に腰掛けている葛葉を見上げているコーエーを見て驚いた。

「コーエー!お前どこにいってたのよ!」

 名前を呼ばれた犬は階(きざはし)を上がり葛葉の前におすわりをしてじっと見つめてくる。
 そして、かしげる様はとても愛くるしかった。
 だからなのか葛葉は、高欄から降りて、コーエーの頭を撫でる。

「もう、心配したんだからね」

 コーエーは、ワンっと吠え、葛葉の顔なめた。
 拭きたいのを我慢して、葛葉はコーエーに頭を撫でた。
 成れてきたぞよし!さすがは葛葉ちゃんと自分をほめる。

「葛葉!!大変だぞ!!」
 と血相をかえて頼光は駆けてくる。
「どうしたのよ?」
 頼光は全速力で走ってきたのか、息が落ち着くのを待って

「き、昨日の邸の男が例の獣にやられた!!」
 と声を大にして告げる。

「なんですって!?」


 頼光の案内でその現場にいくと、人だかりが出来ていて、血なまぐさい匂いがする。

 昨日の雨の所為で血が水たまりとともに流されていつもより広がって野次馬達はその血を踏んでいる。

 野次馬のを縫ってその殺された男の顔を見た。
 確かに昨日の男だった。
 頼光は口を押さえて気持ち悪さを堪えている。

「また、殺されたよ……」
「まだ怪異の原因は掴めてないのかい?」
「たしか、童の陰陽師が事件をおってるんじゃないのか?」
「子供に任せたのが間違いなのでは?
 はやく本物の陰陽師殿に任せた方が良かったのではないか?」

 と言う、周りの大人たちに葛葉は唇を噛んだ。

 悔しい……
 こっちだって頑張ってるのに……
 と、ぐっと拳をつくる。

 その手を頼光が握り。

「葛葉、気にすんな。
 こいつらは何もできない癖に口だけでいってる愚か者だ。
 口だけじゃない行動している俺達がそんなふうに言われる筋合いはない。
 犯人を早く捕まえて黙らせてやればいいさ…!」

「う……うん……ありがとう頼光」
 その手をぎゅっと感謝の気持ちを込めて握りかえした。
 頼光は顔がまっかになってニヤニヤと笑った。
 そんななか、ふと隣に犬の気配がした。

 …この気配はっ!

 振り返ると、月夜丸がいた。

 目は死体をみていて、口はクッと端を少々口を持ち上た皮肉な笑い方だった。

 ……もしかして犯人は…

「ねぇ月夜丸様」
 と袖を引き、小声で問うた。

 ん…と、葛葉を見た。
 一瞬じっと観察するように葛葉をみる。
 そして葛葉が言葉を発する前に

「やはり似ている……」

 と無表情で見つめ、そう呟くと袖を引いている手を振り切って人込みから逃げるように去っていく。

「待って!!!」 

 と葛葉もその後を追う。

「おい!葛葉?」
 葛葉がいきなり手を引っ張って駆け出すので頼光驚いた。

「このまま愛の逃避行か?」
 ほほを赤くしながら頼光は頓珍漢な事を言った。
 そんな、頼光に葛葉は冷たい視線になる。
「何意味不明なこといってるのよ!月夜丸を追うのよ!!」
「は?」


 取りあえず葛葉のいう通りに月夜丸を追う。
 だが、角をまがった月夜丸の姿はなかった。

「見失っちゃった……?」
「あいつ足が早追いつけないよ」

 そのとき、コーエーが吠えた。
 こっちに来言っているように、先頭たって、顔を葛葉に向ける。

「居場所が分かるの?コーエー?」

 ワン!と吠えると駆け出していった。
 葛葉と頼光は顔を見合わせ頷き合うとコーエーを追った。


 月夜丸は葛葉たちを巻くために、角を曲がると、両手を使い犬のように走り犬が埋められている社に来た。

 もう、恨みを晴したのだから、埋まっている死体を解いてやるために土を掘り返そうと思った。

 そしてその犬の屍を社の林に眠らせてやるつもりだった。
 そうすれば、鴉や他の生き物に命を繋ぎ自然の源に帰れる。

 だが、その犬の屍骸はなかった。

「なぜ、だ…?」
と呟く。

 いつもなら在るハズの死体はなくなっていた。
 すでに他の動物に食べられた形跡も、掘られた穴もない。
 もとからそこには何もなかったかのように……
 不可思議さにその場所に立っていると人の気配が近付いてきた。

 その者達から逃げようとした時。

 とても速い光の鳥が、月夜丸の横を過ぎ円を描き、光りの残像が縄となり月夜丸を捕らえた。

「な……何だこれは!?」
手足を光の縄が月夜丸の体を動けないよう手首を縛り、体をぐるぐると縛り上げた。

 さっきの不可思議さとは違った不可思議に戸惑う。

「ふっふっ~父様直伝、鳥高速お縄式神よ!」

「鳥と超をかけてあるんだな!?」
と頼光が突っ込む。

「待ってくれれば、こんな事しなかったのに」
 葛葉は縛られて座り込むしかない月夜丸をわざと憐れむように見つめていう。
 
「オレを捕らえてどうするつもりだ」
 そんな態度の葛葉に腹が立ちいつもより声を荒立てて問う。

「ちょっと、話を聞きたいだけよ。」
「話だと……?」
 月夜丸は不可解そうに眉を寄せ葛葉を睨む。

葛葉は月夜丸の目の高さに合わせて座る。
「あんたが呪詛してたでしょ?」
と単刀直入で聞いた。

話というよりか尋問だ。
月夜丸は睨んだまま何も答えない。

「昨日の犬を殺した男を呪って呪詛をはなったのでしょ?」
 フッと嘲るように鼻をならし苦笑した。

「証拠があるというのか?オレは呪詛などしたことなど無いし、やり方も知らぬ。」
「そうかしら?知らなくても他の誰かにやらせてたりして」

 一瞬瞳孔が揺らいだ。目を合わせて話す方法は父様に教わった。
 目は嘘をつけないと。

「そうなのね。他に誰かにいるねの」
「知らない」
 ばれたが、絶対言わない、言えば負けになる。
 目を閉じて口を噤んだ。

 これは絶対、はかないわね……と思い式神を解いた。
 月夜丸は突然解放されて葛葉を訝しむ。

「なぜ放す?」
「そうだぞ、葛葉!せっかく捕まえたのに」
「だって、縛ってたって話さないんじゃ同じじゃない。」
 呪詛を行なっているのが月夜丸じゃなければ、このまま捕まえても呪術を使っていないなら意味がない。

「それよりね、この事件の関係以外で聞きたいことがあるの。」
 葛葉はにんまりと微笑んだ。
 さっきまでの攻めるような表情じゃなくなった。

 月夜丸はその表情の変わり様にもさらに訝しみ眉間のしわがふかくなる。
「あんたの事聞かせてよ。本当に犬と人の子なの?」

「全然、事件と関係なじゃないか」
 と頼光が不満げにいう。
 そんな頼光の耳を思いっきり、ひっぱりその耳に口を寄せる。


「いいの、誘導作戦よ。気楽に話して犯人の情報を得るの!」
 と声を殺してコソコソと話す。
 頼光声は納得いったというように、手のひらで堤を打つ。
 でもそんなに上手くいくか?と不安にも思う。
 葛葉はパッと笑顔で振り向いて親し気に話し掛ける。

「私の父様も狐と人の子供なのよ」
「そう…なのか?」
 月夜丸はわざと意外そうに眉をあげて驚いたようだった。
そして、
「うまそうだな……」
 と口の端を釣り上げ意地悪気に呟く。

 うっと葛葉は一瞬怯んだが負けずに、
「そして、もっと凄いことに私の母様は月の国の姫だったのよ」
「月の国の……?」

 そのことには純粋に驚いたようだった。
 月夜丸のその表情にに葛葉は満足したように、業と腰に手をやり胸を張ってみせた。
「そうよっ!凄い?」
「さぁ……」
 とだけ答えた、月夜丸も興味なさげを再び装う。
 もとから口数が少なく警戒している為に話にうまく乗ってこない。

「あんたのお母さんてどんな人だったの?」
「人ではなかった……オレを生んでからは」

 だが、粘って質問した甲斐があったのか、それとも、己の出生を真に聞いてくれるひとはだれ一人いなかった心のさみしさからか……月夜丸は質問に答えてくれた。 

「聞かせてくれる?昨日の従者さんにちょっとだけ聞いてきになってたの」

 あの従者はそのことをまったく信じていないくせに、調子に乗って愚痴る時そのようなことを言いふらしているのだろう…
 どこからその話を聞いたか訝しんでいたがあいつだったかと舌打ちをした。


「そんなに聞きたいか……?」
「うん。」

 目をキラキラかかやかせて頷いた。

「俺の母は人に殺された……それも父にだ……」
「え……?」

 葛葉が想像して期待していた甘い不可思議な恋物語ではなく、とても悲しい物語のようだった。

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2014/10/23 (Thu)

6・闇夜に浮かぶ月の方

 世界は闇に覆われ何も見えない。
 ただ、冷たい雨が、己の存在が存在するものだと感じさせてくれる。

 星は雲に隠れ、光が届かず、時折、雷だけが闇に閉ざされた世界を一瞬だけ激しく輝かせ闇に閉ざす。

 神社の社で雨宿りしている月夜丸は、生き絶えた犬を抱いている。
 理不尽な乱暴を受け、一気に死ねず痛さに呻く犬を刀で一息にした。
 本当はしたくなかった……
 だけど苦しむ姿がとても痛々しくてそれを犬も望んでいた。

  この犬には子がいたらしく、途中で追い付いてきた従者に子犬を預けてこの社まできた。
 従者には見つからなかったとでもいっておけと言い邸に返した。

 月夜丸は罪もない犬をこんな目にあわせた人間が憎いと思う。
 そして、自分の人間と同じ姿のことも。

「人であることが憎くなる……半分流れている血の同族をこんな目にあわせている人間が……」
と呟く。

 どちらかの一種族なら、苦しまなくてすんだのに……
 人の体でうまれ、心は獣なのだと自分は思う。

 だから自分が苦しい。

 でもこれが、自分という存在なのだから仕方がないといつものように諦める。

  ここでじっとしていても、きっとあの方は今日は来ないのだろうなと思い、かえろうとした時。

「また連れてきたの?」
と子供の声。

 それは、自分と『同じ者』で月の力を持つお方。

「ああ……この犬の恨みを晴らしてくれ」

 暗闇で何も見えないはずだが、二人はお互いの姿が見える。
 人では無い瞳の能力を活かし視る。

 闇の色をした衣を着、耳は人の耳ではなく狐の耳。
 そして十歳くらいの童というのが、この月の方の姿だった。

 月の方は月神の力をあやつり、獣の望みを叶えてくれるという。
 それは数日前に遡る、犬を殺されたところを悲しんでいた時、その方はあらわれた。


「その犬の恨み晴らしてあげようか?」
 と言った。

 最初は訝しんだ。
 狐の匂いもするからだ。

「狐の匂いがする?
 それは君と同じ獣の血を引いてるんだよ。狐のね。
でも、僕は犬であろうとなんであろうと、恐くない……」

 癖なのか、悦の入った喋りかたが少々気に触ったが、続きを促すように目を見つめる。

「なぜなら月の力を授かる者だからだ………」
「月の力を授かるもの……?」

 それは、小さいころ犬の母に聞いたことがあった。
 月に獣の願いを叶えてくれる力があると、自分が生まれたのも、月のおかげだと……
「どう?お前の望みを叶えてあげるよ……」
 フフっと不敵に笑う。

 そして、願いを叶えてもらった……

 事あるごとに今のように犬の死体を抱いてはそのお方に会うようになった。
 犬を手渡すと、またフフッとあの笑みだ。
 そういえば……昼に会った男の子のような格好をした女の子に似ていると思った。

「昼……会わなかったか?」
 と聞いてみた。

「あってないよ?
僕は夜闇のなかでしか、会わないじゃないか」
「そうか……」

 確かにそうだ、この方は『雄』だ。

 月の方は犬を頭だけ残してうめるている。
 本当は生きている犬で呪術を使うらしいのだが、闇の力を借りて、まだ生きている思いを宿らせて術を行なうのだ。

 その作業中、その方はふと何かを思い付いたらしく月夜丸に問う。

「昼に会ったってやつ……僕に似てたんだよね」
「ああ……雌の匂いをしてた」
その言葉をきいて、怪訝な顔をした。

「……幸せそうだった?」
 声に刺があった。憎んでいるような……
「不自由しているようにはみえなかったな」
「ふ~ん……」
 と鼻で相づちをしいつものように呪術の用意が出来た。

 その姿をみるのは辛いが、呪術を使うためだ。
 呪を唱えると、首の周りに白いモノが集まり中に入る…と、一声なく、すると、白いモノはだんだん黒にかわっていき例の獣の妖しへと変じた。

 そして、闇の中に解けて呪う相手のもとの所にいった。

「これでよしっと……それにしても……」
呪術を探っているモノがいる。

それが…

「葛葉だったなんて……」
 と憎々しく呟く。

「葛葉?」
「お前は知らなくていいことだ……さっさと自分の寝ぐらに帰れ」
 そう呟くと月の方は消えていった。

 「寝ぐらか……」
 月夜丸は皮肉毛に苦笑をすると、いわれて通り邸に帰ることにした。

 その後ろ姿を、白い子犬が付いてきた。
 だけど、月夜丸は気付かなかった。

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* ILLUSTRATION BY nyao *