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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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一応漫画家?
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漫画を描く事
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佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
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2014/11/12 (Wed)

15・慈愛の力

「心が癒されない限りって……」

 月夜丸と秋月は同じような感情の持ち主だった。
 だから呪が通じたの?
 そう思った時。

「うわあああああ!!」
 月夜丸は突然叫び、首に縛られている紐が月夜丸の首に黒く小さな雷がビリビリトはしり、苦しみにもがく。

「月夜丸様!!」

 倒れてもがく月夜丸をおさえようとしても、近付けない。
 秋月が呪を手放した所為で呪詛の制御がきかなくなったのだ。

 光栄は、口元に手を当てて、考えあぐねる。
「う〜ん……困ったねぇ……月夜丸の心が癒されるまでといわれても、気持ちがわからないからねぇ」
 呪詛解除は陰陽師の得意分野だけれど、呪いを解く手立てが本人次第で、いまや、正気も失いかけているとなるとなかなか難しい。

 葛葉はハッとして、光栄の衣のすそを引いて、戸惑いの瞳で光栄の顔を見る。

「秋月と同じ気持ち……だと思うの……親の愛が関係してると思う……」

 どういう、気持ちかは口に出して言えなかったけれど、さっきの流れ込んできた気持ち。
 それと同じだとおもう。

 くぅ〜んと白犬が近付いてきて何か訴えるように葛葉を見つめる。

「シロ?どうしたの?」
 シロはくるりと向きを変えると月夜丸に近づく。
 だが、暴れる月夜丸には中々近付くことができないようだった。
シロは月夜丸にどうしても近づきたいようだった。

「光栄さま、炎、氷、それと頼光、月夜丸を押さえて!」
「おう!」
 一斉にかかって月夜丸の両手首を押さえつけた。
 けれど手加減を知らない月夜丸を抑え込むのはなかなか困難だった。
 光栄が式を使って抑え込もうとした時
 頭を激しく左右にふって苦しがる月夜丸を、人の姿をなったシロが優しく両手でそっと包むように頭をおさえた。
 すると、激く痙攣まで起こしかけた体は次第に治まっていく。

 ビリっと両手に黒く小さい雷が走って痛みを感じているようだったが、我慢し月夜丸の名前を呼ぶ。

『月夜丸……苦しむことは無いのよ……お父様を恨まなくていいのよ……』

「は、ははうえ……?」

 月夜丸の苦しさが段々ひいているようだった。
 だが、逆にシロの白い手が黒に染まっている。
「シロ…もしかして……呪を引き受けようとしてるの……?」

 葛葉の問いに微笑んだ。

『この力は月の姫に頂いたもの。
月の姫の御子の呪を取る力が有るそうです……
お返しするのが筋ですが……申し訳ございません……
わが子を助けるために使わせてほしいのです…』

「そんなことはいいよ!でも、シロが……」
シロは魂の存在だ、秋月が作った呪われた獣と同じになってしまう。

『あなたの苦しい全てを取り除いてあげる……獣の気配も……苦しい思いも……』

 シロの白の魂が、蛇のようにうごめく黒にだんだん染められていく。
 その分、月夜丸も苦しさから解放されて、母親の手に触れる。
 月夜丸の瞳は涙が溢れ、頬に伝う、その涙が黒く染まったシロの手に濡れた。

「母上……母上は本当に父上をお恨みではないのか?
殺されて悔しくなかったのか?裏切られて……」

『ええ……悲しかったけれど…
…恨みはなかったわ。
あなたという愛の証がうまれたのだもの。
初めて会った幼いあなたを認めてくれた。きちんと、あなたを大事に育ててくれてた。それは愛があった証。』

 ふつうなら、我が子でも殺してしまうかもしれないが、そうしなかった。
 本性が犬であった自分は受け入れられなかったけど、時を経て受け入れてくれたそれだけでもういい……

「母上……」
 黒い呪が、首の方まで伸びてきた。
 喋るのがくるしそうだったが、言わねばならない事がまだある。

『あなたの心は父上と同じ……私を殺めた時とおなじもどかしさ……。
お父様を理解できるはず……分かりあって……そうしたら、きっと……あああ!!」

 顔を挟んでいた手をばっと離し、頭を押さえてもがく。
 だんだんあの、秋月がつくった犬妖鬼になっていく。

「母上!」

「シロ!!」

『葛葉……ちゃん……私を……消して……』
 言葉を言うのも困難になっているようだった。
 グルルルと獣のうなり声がまじる。

 葛葉は涙をためて、頭を振って拒む。

「そんな……!そんな事をしたら、シロは生まれ変わることもできないのよ!?」
 それは、恐ろしい事だから、本能的に拒絶したかった。
 
 シロはかろうじて、人の微笑みをする。
『もう……生まれ変わることは……ないのです……
その力を使ってでも、あの人を愛したかったから……だか……ら……はやく……』
 もう、獣になってしまった…
 目は赤く、のぞく口も血のように赤く、黒い獣の姿になった。

「葛葉ちゃん……やってあげなさい。
僕が同じように祓うのと葛葉ちゃんの力で祓うのは違う力を持っているのだから
ただし、心をこめて願って、晴明様から教わった祓いをやるんだよ」
 光栄のその言葉の意味は、葛葉は特別な力を持って生まれてきた。
 月の神の血を引く母と、辰狐の血を引く父の子供。
 人ではあるけれど、人とは違う内なる力を持もっている。
 
 だから、月の血を受け継ぎ尚且つ人でいる為には、犬であるシロに慣れる必要があった。

 そして、シロに慣れてきたところだった。
 可愛いと思えるようになってきたところだった。
 でもそれは、特別な存在になりつつあるシロだからこそ、だったのかもしれない。
 葛葉はそう思うと胸のあたりがギュッと痛くて瞳に涙があふれてきた。

「シロ……ごめんね……」

 と呟いたあと胸元から府をとりだし、呪文を唱え、シロに貼る。
 葛葉に襲い掛かろうとするのを押さえているのはまだ意識がのこっているからだ。

「散妖伏邪……急急如律令…畜怪」

 府は月の光のように光り、闇を淡く照らしていく。
 黒く染まったシロは人の姿に戻り、元の白い獣になって、だんだん消えていく。魂がいやされ消えていく。

 葛葉はこの力を初めて使えたと思う、母と同じ力。
 魂を清め祓い、この星を巡らせる特別な力を感じた。
『ありがとう……葛葉ちゃん短い間だったけど楽しかった……』
 シロはやさしく微笑み小さな光の粒子となって消えていった。

「コーエー……わたしもよ……」
 シロが消えて、落ちた府に葛葉の涙が落ちてぬれた。

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