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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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一応漫画家?
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漫画を描く事
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佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
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2014/11/12 (Wed)

14・ふたつのこころ

「葛葉!!」

 頼光は襲い掛かる最後の妖犬をひとなぎし、葛葉を助けるべく月の方に刀を振り下ろす。

 首を閉めている手首と腕が分かれた。
 月の方は一歩葛葉から離れ、自分のきられた腕をみる。
 頼光は自分で斬っておいて、いやな感じより無気味を感じる。
 月の方は平然としていて、腕からは、血が一滴もながれず、いまだに同じ位置で葛葉の首を手が締め上げている。

「どっどうなってるんだ!?」
 まだ締め上げている手を取ろうとしてもなかなかとれない。

「呪だね……己の憎しみを糧に動いているんだ。」

 苦い顔をして光栄は月の方をにらむ。
 月の方はもうすで人間ではなくなっているのだろう…
 式神でなくてはそういう離れ業はできない。
 それとも存在自体が呪詛の塊なのだろうか…
 
 月の方はおかしそうに笑い出した。

「そう、純粋な憎しみで、僕の力は動いている。この憎しみが癒されない限り呪はとけないのさ!」

 勝利を勝ち取ったような感じで高らかに言い笑う。

「それか……僕の本当の名を知らないと、解けないのは基本だよねぇ?
でも残念、この中に僕の名など知る者はいない……」
 くすくすと笑いつづける。

「うっ・・・くっ!」

 月の方の顔は見えないが葛葉が首を閉められだんだん命を落とそうとする様をきっと恍惚の顔で見ている。

 頼光は葛葉を助けようと手をなんとか取ってやろうとしていたが、復活した月夜丸にそれをさせないように両手をつかまえられて、身動きができなくなった。

 術者は本当の名を明かさない。
 名は自分の命、運命を左右するモノ。
 光栄は静かに思い出していた一度だけ晴明に聞いた事がある。
 この葛葉の片割れの子の名。
 それこそ、生みの親につけられた本当の名なのだ。

「あ、き、づ、き……」

と音をくぎって月の方に向かって呪を込めて言う。
すると月の方ビクリと肩を震わした。
 黒くて見えない影の顔がうすれて、目がのぞく。
 その目は光栄を驚きの目で見つめていた。

「あきづき……」

 今度は続けていう。
 葛葉を締め上げていた、手がきえた。
 葛葉は大きく咳き込む。
 後少しで意識をうしなって、死ぬところだった。
 光栄が呪をといたおかげで助かったが、どうして、名を知っているのか不思議だった。
 葛葉は苦しさで出てきた涙を拭い、光栄が視線を向けている人物をみると、自分がいた。
けれど、髪の色は銀色で耳は狐の耳をしている。

「な……ぜ………?」

 同時に葛葉と秋月と呼ばれた月の方は掠れた声で疑問をつぶやいた。
 
 光栄はニヤリと笑った。
 (うわ、なにか企んでるぞこいつ。)
 と頼光は思う。

「もう一度いってあげようか?秋月くん。」
 すらりと、言葉をつなげて名をいった。

「やめろぉ!!」
 いつの間にか己の腕に戻っていた手で頭をかかえて苦しむ。

「どうして、名前をしって……いる……」
 苦しんでいる秋月を見て、フフと今度は光栄が笑う。

「晴明様に教わったんだよ。愛しい愛しい我が子の名前をね」

 どういうことなの?愛しい我が子って……?
 自分以外に父様に子供がいたなんて知らない。

「愛しい我が子だと……?
そんなはずはない!僕は捨てられたのだから!葛葉の変わりに!!」
 と叫ぶ。
 その顔は泣きそうな悲しい顔をしていた。

「そんなことはない。
晴明様はいつもお前を探していた。忘れたことなど……」
「うるさい、うるさい!!!」
 聞きたくないというように叫ぶ。

 自分の知っている事実と本当はそうあって欲しかったという思いを振り切っているように葛葉は思えた。

 それは何故だかわからないけど、そう何かが伝わってきて、胸を締め付ける。

「その憎しみは葛葉がうらやましという気持ちから、だろ?」
 光栄は秋月の黒い感情が生まれた本質を言葉にした。
 口に出されたものは日の国において、言霊となって力となる。
 言霊となるように込めていってやる。
 秋月は狂ったように暴れるのをやめると肩をおとして力なく笑う。
 俯いていた顔をあげるとキッと葛葉を睨んだ。
 それは殺気の含んだ目。

「そうさ……僕は葛葉がうらやましくて……憎い……葛葉が死ぬまでこの恨みは憎しみは消えないのさ……」

「……」
 葛葉はなにも言えず、秋月の目をそらさずに受け止めているだけが精一杯だった。
「あーあー興ざめだ。この機会に葛葉を殺せると思ったのに、予定が狂った……
そこのお兄さんの所為でね……」

「数年後には本当に君のお義兄さんになるからよろしく」
 光栄はにっこりとほほ笑んだ。

「…そうならないようにしてあげるよ。かならずね。」
「いやでも、みとめてもらいますから」
しばらく光栄とにらみ合いをしていたが、秋月は、月夜丸を示すように顎をくいっと上げ、葛葉たちの視線をそちらに注目させる。
「あれの呪はとけないよ……心が癒されない限りね……」
まだ何かあるという用に不適に笑うと、秋月は闇に溶けるように消えた。

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