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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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女性
職業:
一応漫画家?
趣味:
漫画を描く事
自己紹介:
佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
イラスト付童話や小説を制作していこうと思ってます。

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2013/10/30 (Wed)
実は月化草の葉と根、茎をほんの一欠片削るだけで用は足りるものだった。

 そのことを知って、自分を試した罰と悪口いった罪として、グレイにジュカ猫を押さえてもらって鼻ビンタを思いっきりくらわせてやった。

 魔薬研究室に戻ると、早速薬を作りにかかった。
 出来上がった薬は茶色と黒色のマーブリング…とても下手物な色……ジュカは顔をしかめる。

「ねえぇ…・・・これ本当に飲めるの?」
「ああ…これを飲めば我は人に戻れる」

 ジュカの声は嬉しそうだ。

「うーん………」

 ジュダは、いつも懐にかくし持っている、七つ道具の香辛料を手にとって良い事を考えた。

「ねえ…人間に戻った時、服がないと大変でしょ?
 グレイ、ジュカを連れてって服を選んで来てよ」

「それもそうだな…苦しゅうない。グレイよ、我の服選びを手伝え」

「そうですね。人間に戻って変態魔王の称号をジュカ王子から貰いたくないですしね」

「・・・さすがジュダの側近じゃな・・・」
 無害なようで口が悪いと印象を強く持った。

「ん? 誉めても何も出ませんよ」

『誉めてないんだが・・・』と口に出すことはあきらめた。
猫に生まれてからあきらめが良くなったなとジュカ猫は自分を評価した。
「とにかく、服選びをすまそうではないか」
 
 グレイとジュカ猫は揚々と部屋を出ていった。
その好きに、ジュダは調味料を入れて味付けをしてしまった。

 戻ってきた時、ジュカ猫のために薬を豪華な皿にもり飲ませた。

 色はそのままでも味はとても美味しかった。
美味しい為、全て飲み干したジュカ猫は急に体中から煙りが出て煙りが治まった頃にはネコの姿ではなく人の姿に成っていた。



その姿は、黒い髪とても長く星をちりばめた煌めきが夜空を思わせるほど美しく床に着いた髪はしなやかな美しいのうねりのようだ。
 
そして、人間のジュカはジュダより少し年上に見える。

 顔はさすがジュダの先祖だけあってどことなく似ているが、人を魅了する凜とた美しさが備わっている。

「やったーーーー!成功!」

 ジュダは両手を上げて喜ぶ。
 目に涙まで浮かべている。

 「王子より神々しい感じがしますね!」

 グレイはジュカの姿や雰囲気が一瞬で高貴な者だと感じて感動で両手を組んでいる。

「なんだって?ぐれい~?」
 すかさずグレイの頬をつねる。
 ジュカ猫に再び視線を戻し

「どう?黙っていないで人間になった感そう言ってみてよ!」

 ジュカは声はそうだと思い、いざ何をいうか迷った。
 取りあえず撥音から…
「…に…にやーーーぁ……?」

 声が猫の泣き声?

「ん?」

 三人はキョトンとする

「にや!にゃぁあ!!ん!」

 ジュカは一生懸命人間の言葉の撥音をちゃんしても猫の鳴き声しか聞こえない。

 ジュダにどうなっておるのだ!?と言ってみても猫語である。
 ジュカにも猫の言葉で自分の耳に届いている。

 ジュダはジュカが猫語を喋って思ってジュカの長い髪を引っ張る。

「ふけてんじゃないよ!ほら、感想…」

 ジュカも苛立ちが頂点に達して、髪を引っ張る手を払い除けて、ジュダの頭をひっぱたいた。

 つっ掴み合いの喧嘩になりそうなところをグレイが間に割って入ってそしする。

「王子…もしかして失敗したんじゃないでしょうか?」

「えー?」

 と、疑わし気にジュカをみると煙りがボムっと体から湧いて、猫に戻ってしまった。

「おまえ……薬になにいれた…」

 とてもドスの効いた怒りが感じられる声…
 猫の姿に戻ったら喋れるらしい。

「え……?ジュカの教え方が悪いんじゃないの?」
「いや…味が良すぎた…味付けしたんだろう?」

 そっぽをむいて口笛を吹いて誤魔化し始めたジュダにジュカ猫は飛びかかり容赦ない爪がジュダを襲う!

「だって僕のポリシーが許さなかったんだモン!薬だって美味しい方がいいジャン!!」

「開き直るなバカ王子!!魔薬作りほんと才能ないな!!
教えた通りにすれば出来るのに余計なことしおって!~!!」

「王子は人と違ったことをするのが好きですから諦めるんですね…」

 グレイは苦笑して嗜める。

「そうそう!同じことしてたら未来なんか変わらないからねーははははは!!」

「そんな調子だといつまでたっても魔法使いになれないぞ!」

「それなら君も人間に戻るのむりだね~ま、気長にいこうよ。人生さきは長いんだからさー」
 そういうと、ジュカは研究室から逃げた。

「待てこのぉへらずぐちがぁ~~~!!」

 ジュカ猫は王子を追い掛けて引っ掻き大げんかに発展した。
 グレイはその様子を今度は止めずに見て呆れたが、ホッともした。

 王子の願い。

 同じ過ちをくり返さないために、魔法を使えるようなるのはまだまだ魔法を操れるようになるのは当分先のお話になりそうでですが、ジュダ王子夢は一歩ずつ進むのでした。

「あ、今度は猫の耳だけ残っちゃった」
「かわいくていいんじゃないですか?まぁ変態がつきますが」

「おまえ等・・・我で遊んでいるのではあるまいな・・・?」

★終わり★

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2013/10/30 (Wed)
ジュダ王子の金髪だった髪が、亜麻色…きらめく星を散らしたように輝く魔力の光を宿した髪…それは魔法使いの証。

「僕を導く者はいないんだ…こういう命に関わる時にしか発動しない…
 僕を殺そうとした者も、僕の無意識の力で消してしまった。
 この力を制御できる方法を教えてほしいんだ・・・!
 そして、この力を民の為に役立てたい!」

 ジュダの印象としたのほほんとした顔ではなくて真剣に悲しそうな表情でジュカに訴える。

「……その力を持っているなら…また我と同じことをくり返すことが多くなるではないか、ごめんだ!
 魔王の復活なんぞ・・・」
ジュダには魔力も何もないと思っても、自分と似ているところがあるし、早いうちに芽をつぶしてしまおうと思った。
 魔力があるならきっと過ちを繰り返す。
 自分と同じように力に溺れるではないか。
 けれど、少しジュダが無事で安心している自分がいて自分自信にも戸惑っている。

「だから、僕は王位敬称権がないっていってるじゃない。 だけど民のみんなに僕の魔力を認めてもらいたいと思ってたんだ…・・・ジュカが言った『皆を助けるなんて傲慢』って言葉はそうだなって思った。
 それが傲慢につながるなら、本当に困っている人だけを助けることにする」

 そう拳をつくって空を見てジュダは決意した。

 決意されてもこっちが困るとジュカ猫は思った。


「ジュカがやって後悔したことは自分もしたくない」
ジュダは岬にトンっとつま先を着けると風はおさまった。
金髪に戻る。

「まずは、君を人間の姿に戻して、僕を救くうことから始めよう。
…後悔はやり直すことで希望に変わると僕は思う。
 そして僕にも希望をちょうだい?いいでしょ?」
 無邪気に明るく屁つら笑いでそう言うジュダの言葉にジュカ猫は苦笑した。

「お前…民のため、我のため言って置きながら…自分の為の事しか考えてないな」

 ジュダはそんなつもりはなかったけど、考えてみたらそうかも知れない。

「自分がちゃんとしないんじゃ本当に他の人の望みも叶えられないでしょ?」

「へらずぐち……」といい鼻でフンと笑う。

 不安な気持ちで成り行きを遠くで見守っていたグレイのもとに、人間にする材料を持ってジュダとジュカ猫はどこか打ち解けた雰囲気で戻ってきた。

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2013/10/30 (Wed)
 太陽は炎の灯火を地平線に沈ませ、闇を連れてきた空には鋭い刃を連想させる月が船のように月化草停泊しているように見える。
 その月を目指しながら歩いているような不思議な気分だ。
 その足下には人の歩調に合わせて歩幅に二歩ほど前を歩くジュカ猫。
 ジュカ猫は先を歩きながらも、ついてくるか確認するようにこっちをちらちらとふり向くが、しっぽが下の方に激しくふっている。

(来てほしいのか来てほしくないのかどっちなんだよ)

 とジュダは思う。

 崖岩に根が一体化するように織り込まれるように張っているため、ゴツゴツとして躓いて横へ倒れたら一貫の終わりなので、慎重に歩いている内に月化草に辿り着いた。

 実際に近付くと平均的な青年男性の胴体の幅ほどのグレイの体の幅ぐらいの茎だった。

 大きく見えたのはその3倍に茎が螢の光りのように放っているからだ。

 ジュダは月化草を見上げてウ~ンと唸った。
身長は自分の三倍ある高さだ…自分一人じゃ引っこ抜けないし、切り倒すのも難しそうだ。
 けれど、出来ないといいたくない。

「あれって…引っこ抜けるの?本当に抜いちゃっていいのかな?」
 と強がっていってみる。口には出さないが、

(これを観光にやってくる人がいるなら残念がる人が何人出るか…)と思う。
ジュダは実際見たこともないが、満月の夜に神々しい光景を観て喜ぶ民達の観賞用のスポットをジュダは奪っていいのか考えた。
 しばらく黙って考え迷っているジュダにジュカ猫は人を嘲るような口調で言う。

「魔法使いになりたいのだろう?
 私を人の姿に戻さなければ魔法使いになる夢は叶わぬぞ?それでもいいのか?」

 逆に猫の姿のままでいいのか?とジュダは言ってやりたかったが、もし、それでもいいと言い出したら困るので言わなかった。

「うん……じゃあ…しかたないよね」

 ジュダは迷っても一方を捨てる決断力に優れていた。
 捨てたモノに後悔はあってに選んだ方に何か希望があるとおもう。
 けれど、判断力はともかくとして…
 岩が根に張り付いていていて抜くことは到底無理。
 どんな方法で抜いたら良いか、考えるより言い出した猫
に文句を垂れる。

「ねえージュカーこれ絶対抜けないよ!!茎もでかすぎるし!切ってもって……っ!」
 ジュカ猫がいる足下に目を向けたがいなかった。

 ジュカ猫は助走をつけて、ジュダの頭に勢いよく蹴りを入れた。
 その反動でジュダの足は岬の先端から踏み外した。

「な!なにするんだよ!!」

 とっさに月化草にしがみつく。

「お前の望みをいってみろ…」

 ジュカ猫はジュダを見下ろす。

「望み…・・・!?魔法使いになって国のために力を尽くして民達を幸せにしたいっ…痛っ!!」

 ジュカ猫は思いっきり手を噛み付く。

「それが・・・気にくわないんだよ…」

 ジュカ猫は困惑するジュダを金色の細い目で見下ろし 声を低めて憎々し気に言い放つ。

 ジュダはジュカ猫の言っている気に食わないというのは力に関してだと理解した。
 ここまで導いておいてこの仕打ちはないと思う。

「なんで?ジュカはその力で民を救って導いたじゃないか!
 いくらその力が恐れるものだとしても皆の役に立つ力だったって僕は思うもの!」

「皆を救おうなんて大それているんだよ…幸せや不幸は人それぞれ違うモノ…なのに何が救うだ?
民は魔力で解決することを望むと思うか?」

 ジュカネコは自分を責めている様にいう。
 ジュダは落ちまいと両手のみでしがみついている苦しさより、ジュカの苦しみを感じた。

「悔いてるの?自分がしてきたことを」



ジュカ猫が前世人であった時、魔法を使って、他国や自分の国の民を恐怖に陥れた。
これは『魔王』と敬われた真実。

「ああ…そのため…我は皆から見放された…」
 ジュカ猫は三日月を眺めるが、それより遠い過去を思い出しているようだった。
 
 ジュダはジュカ王のことを誰よりもしらべて憧れていただけにジュカが思っていることが分かるような気がした。

 
 ジュカ王は他国の魔法使いに殺されたという伝説は幽かだが残っている。

 民達が頼んだ魔法使い。民達の望みは王の死。
 戦争に狩り出される民達が増えないように…
 もうこれ以上戦争はしたくない…という民達の望みだったという。

 ジュカ王は領土を増やせは皆幸せになると信じていた。
 
 けれど、目的に情は存在していなかったのかもしれない・・・

「お前は同じだ…この月化草だって民達のわずかな愉しみの一つだ。
 それを迷いなく奪おうとする…その性格も何もかも我に似て腹が立つ。また同じ繰り返しをしようとしているお前が・・・」
 遠くへ、視線を向けていた金の瞳のをジュダを憎々し気に見下ろす。

 それは、自分に憧れていたジュカが企みを知り、どんな表情をしているか確かめるためだった。

 恐怖か、怒りちらした顔か、助けをもとめ情けない表情をしているか・・・・・・

「・・・ジュカと同じだね・・・」


 けれど、どれも違った。

 ただ悲し気にこちらを見ている。
 悲し気に微笑んでいる。
 仕方がないというように、その顔を見られたくないのか、地上を見下ろす。

「僕も・・・同じ繰り返し…したくなかったんだ・・・」

 声が締め付けられる、だから弱々しく声を絞り出すようにジュダは言った。

「なに?」

意味が分からない。くり返そうとした癖に何をいってるんだ?

「僕が魔法使いになりたいと思ったのは魔王…君のことを知ったから…」

「我の所為だといいたいのか?」

 ジュダは首を少し横に振る。
 もっと否定的に大きく振ったらバランスを崩して落っこちそうで出来ない。

 ジュダはジュカ猫に視線をあわせて訴える。

「僕はそんな魔法使いにならない…違う道があるんじゃないかと思って、同じ魔法使いになりたかった!」

 ハッとする。
 そんな考え方をしていたなんて思いもしなかった。

「それに…自分の未来を教えてくれる先生がほしかった…」
 微笑んで自ら手を離す。
「!?」

「僕の本当の望みは……」

 落ちていくジュダの言葉はその言葉までしか聞こえなかった。

「ジュダーーーー!!」

 ジュカ猫は闇に落ちていくジュダに身を乗り出し叫ぶ。
 悲鳴にも似た声。
 このままジュダは死んでしまうのか……?
 いや再び民に最悪を与え殺される自分の子孫を見たくなかった。
 だから、ここで殺すつもりだったが・・・
 自分の思っていたジュカの望みと違うらしい。
 それに自ら手を放し、『先生がほしい』とはどういうことなのだろう…
 自分がけしかけて、望みどおりの展開になったが、ジュダの最後の言葉と微笑みがジュカ猫の心に後悔が生まれる。

 あの時と同じに……民に殺められた時のように…
新たな後悔の念に苛まれた時、突然下から上にかけて突風が吹く。

 あり得ない風向き。

 風はだんだん緩やかになり、上からジュダが降りてくる。
「ジュ…ジュダ……?」

「僕は不思議な力を持って生まれた…だから、みんな君の生まれ変わりだと思われて…殺されかけた事があるんだ…」

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2013/10/30 (Wed)
「ごめん。ジュカだって民のこと思って魔法に手を出したんでしょ?
 戦争始めるまで、偉大な王だって言われてたって本に書いてあったよ。」

 自国の祖先の王が悪く言われるこの国で、ジュカは幼い頃、数少ない異論者の文章を見てジュダは魔王のことを尊敬し、自分もそれに近い事をしたいと思って、人に役に立つ魔薬を作る研究をしている。

「さあ…だが、偉大さは恐怖に変わる…だから我は魔王って言われていたのだからな…それをお前はぶり返そうというのか?」

 ジュカ猫はジッと金の瞳を縦に細めて、その視線にジュダは少し気おされた。

「いや…そんな権限ないし。ただ興味があるんだよ。それだけ。なに怒ったように言っているの?」

「別に怒っておらぬわ…」

 ジュカから視線をはずし、ジュカ猫は、ふぅ…とため息を吐いた。

 なぜか雰囲気が湿っぽくなったのでしばらく皆だまっていたが結局ぶり返すのはジュダ王子。

「ジュカってイメージ違うよね。もっと横暴でえばり散らす、わがままな王様って感じだと思ってた。意外と冷静沈着なんだね」
 ジュダは、あははと笑い悪びれずに冗談めかしていう。

「そのイメージはお前自信だろう?」
 ジュカ猫はニヤっと笑ってバカにして返してやる。
 グレイも頷く。

 その言葉にジュダはすかさず指で輪っかをつくる。

「くらわせられたい?」
 にっこり微笑んでいうからなお恐ろしい。
 やはり、横暴さは自分自信だろうとジュカ猫とグレイは思った。

 夕日が西に沈もうとしていた。

 岩をのぼり切ると、細い岬の先端部分に月化草がほのかの光を放ち月が夜に向けてハッキリと現れたところだった。

 シーズンじゃなくても幻想的な光景にジュダとグレイは圧倒された。

「すっごいですね…」
「おおきぃ…船の先端みたいだね」

「それをお前は持っていかなくてはならんのだぞ」

 ジュカネコはグレイの腕から飛び下りると、さっさと月化草に向かって歩き出した。

 先端部分は太いと思われたが崖の部分から月化草の根っこが岩に巻き付くようになっていて、頑丈増だけど、意外と細い。
 ひと一人が渡れる程度で足場は悪い。

 ジュダたちが下で見た時は横から見たものだったので、細いとは思わなかった。
ジュカ猫はグレイの腕から降りて茎の付け根まであるきふりかえる。

「ここから先はジュダだけで来い」

 そう命じる。

 
「王子!やっぱダメですよ!こんな細いところを渡なんて!危険な事はさせられません!」

 グレイは王子の腕を掴み止める。

「王子の命が最優先です!猫を人間にしなくてもいいじゃないですか!
 猫は猫のまま喋れてもべつに命に関わりませんが、王子の命は大事です!」

 ジュカ猫は、フン・・・とバカにするように鼻で笑う。

「ここまで来ておいて危険な目もないだろう。それともジュダは恐いか?」

「ううん?こわくない…よ」

 ジュダは足下をみて語尾を少し濁した。

「だけど、僕、どうしても魔法使いになりたいから、行ってくる」

「王子!魔法使いなんかに成らなくてもいいじゃないですか!
 王子は王子ままで民を救えますよ!」

 なおさら、ムキになって止めるグレイにジュダも剥きなる。

「王子のままだけじゃダメなの!魔法使いにならなきゃ……僕の望みなんだから!」

 ジュダは真摯な瞳をグレイに向ける。

「っつ!」

 グレイはそんなジュカにドキリとする。

 滅多に見ることのない有無を言わせない表情だったからだ。

 バッとグレイの腕を払って、月化草の方に歩みをすすめた。

 ジュカ猫は二人のやり取りを首を傾げて見ていた。

「ナニ意味不明で深刻な事なふうに言っておる?
私が人の姿なるか、なれないかの問題だろうに…」

「そうだよ~ん。だから深刻なの!行ってくるネ、大人しくそこで待ってるんだよ、グレイ」

 グレイの方に向けた顔は微笑んでいたが、作り笑いだとグレイには分かった。

「王子…御無事で……」

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2013/10/30 (Wed)
「あれが月化草…?」

 大きな森の中に、大きな岩が船の先端のように突き出ている。
 そこに、月へ向かうようにいくつもの、先が丸るまった茎のようなものが、月を目指して、伸びていた。
 
 現時点、村の入り口から森まで距離はあるが、それでもかなり、大きく見える。
 実際はどのくらい大きいのだろうか…

 月化草は観光名物らしく、満月に向かって、草がのびていく特徴があり、それは月への道を示すかのように輝き、幻想的な光景が見られるという。

 現在は細く輝く三日月なので、草は仄かに弱々しく輝いて見える程度だ。

 ここの管理をしている村長に王子の権限でその月化草を採る了承を得た。

「採るといっても何処から摘み取るおつもりですか?」

 突然の訪問と申し出に冷や汗をかきながら中年で小太りの村長は王子に尋ねる。

「う~ん・・・」

 そこまで考えていなかったジュダはグレイに抱かれてるジュカ猫の方を見る。

「根元からだ」

 とジュカ猫は答えた。
 猫が喋ったと村長が度胆を抜いたかとちょっとわくわくして反応をみたが、グレイが喋ったのかと思われ驚きもしていなかった。

 村長はそれだけは御勘弁ぉぉ!と泣きつくわけでもなく、

「ああ…道の方は観光客も訪れられるようになっておりますので、森をすぐに抜けられますが、月化草に続く道は根元が所々に突き出ていて危のうございますので御注意なさってくださいね。」
と快くおくってくれた。

(二人だけであの月化草を切れるはずもない)

 と思っているからかもしれない。
 採ってきたら今度こそ度胆を抜くかも知れないと思いジュダはバカにされた事に仕返しはしなかった。

「王子、俺一人で先に取りに行ってきましょうか?」
森を抜けるみちを行きながらグレイは言う。

 王子の側近兼護衛たるもの、王子に危険なことをさせるのは避けたい。

「いいや、月化草は少しでも魔術の知識があるものがよい。その知識を活かして魔術を理解し、草の力も理解できる。理解できぬ者が持ってしまったら、魔草は力を発揮できなくなる。
だからジュダにやらせるのだ」

 村長の言うとおり、岩の管理人や岩を登る事が趣味な民たちが自ら、足場を築き誰でも訪れられる観光スポットになっている。

 ただ、近付かないのは月化草へ続く岬の道だった。
 遠くから眺める観光が目玉にもなっているらしい。
 その道をジュダ王子達は慎重に歩いて岬を目指して歩き時には登る。
 自分では面倒な道は歩きたくないジュカ猫はグレイに抱かれて、ふと王子に聞く。

「どうして魔法使いになりたいんだ?」
「国のみんなを幸せにしたいから…」
 王子の視線は月化草をじっとまじめに見つめながら答えたが
「に、きまってるじゃん。」

 おどけてジュカ猫に屈託無く微笑んだ。

「そうか…だがな…魔法の力は決して良いものではない…」
「御先祖様のジュカはそれで死んだから?」
「王子!そういうことは遠回しに言葉を選ぶように…」
 遠慮知らずのジュダ王子をグレイは嗜める。
 例え猫でも今は人と喋れる相手なので気を使うものだと思う。
「今は猫として生きているからな。グレイの気使いは無用だ…死んだといわれても…実感は湧かない。」
感慨もなくジュカ猫はそういった。

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2013/10/30 (Wed)
 目的地は月ミチの村。
 そこにある月船の岩といわれる場所似向かうために馬車を走らせている。
 人に戻るためにはミチの村にある森に囲まれた大きな岩崖の頂点に咲く月化草が必要だという。
 月の変化を見つめ続ける草という意味で、月の光を浴びた草は姿をかえる力を持つという伝説の草。
 その草を手に入れるためにジュダ王子とジュカ猫とグレイはお忍びで城を出た。
 と言っても、ジュダはもともと第四王子で継承権もない。
 王子だと敬われても何をすることもない。
 だから咎める者もいないから遠慮なく禁忌とされている魔術研究に没頭していたりする。
 
 正直咎められたい、気にとめて貰いたい、と思ってもいる・・・
 あの日以来ジュダを恐れる親族や家臣達に囲まれてしまっている・・・
 
 馬車に揺られ、ジュダはうとうとし、眠った。
 眠って見た夢は昔の夢。
 あれは…僕が5歳のとき…近隣の国からきた年老いた老人とあったときのこと…
 恐ろしい憎いものでも見るかのような目つきで僕を睨んだ。
 王宮の薄暗い物陰のような場所でいきなり捕まえられてあの恐ろしい目を間近に見て、恐怖におののいた。

「どうして…生まれたのだ!?」

 幼いジュダは突然首を閉められる。
 いわれのない恨みの恐ろしさを幼い頃のジュダは鮮明に覚えている.

 だから夢でも現実に思える。
 老人とは今日、父王の謁見の間で会ったばかりなのに、そう、わけが分からないことを言いなおさら首を強く絞めてくる。

「お前はまたあの悪夢をくり返す者なのか!?」

 やめて!やめてよ!くるしいぃ・・・・・・

「あの悪夢を再び繰り返す前にお前を!!」

 くり返す?何を?とにかく助けて…
 くり返さないなにもしないから……
 助けて…誰か……

   ガブ!

「っ…!」

 指先に痛みが走り、ジュダは目が覚めた。

「もうそろそろ着くぞ。うなされている場合ではない」
 ジュカ猫がジュダの指を噛んで起こしてくれたらしい。
「ジュカ…ありがとう。お礼をあげるね?」
 指でわっかを作ると人差し指を勢いよく弾いてジュカ猫の鼻頭にあてた。
 
ジュカ猫はシャーーー!と口を大きくあけ、威嚇した。

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2013/10/30 (Wed)
「ニャー!って言ってないもん!どうして今まで黙っていたの?」

 猫は黙る。
 何か考えているように目を閉じ、暫くして目を開くと同時に耳を一回ぴくりと動かした。

「たぶん、お前がかけた薬を飲んだ所為だな・・・」

 最初戸惑い顔だったジュダの表情が笑顔になる。

「……じゃあ、僕の実験は成功したんだ!やった!!」
「王子さっき黙らせる薬作って失敗したって言ってましたよね?」

 すかさずグレイは王子につっこみをいれた。

「失敗は成功のもとなの!」
 ジュダはさらりと言い換えてしまう。

「本当に我の声が聞こえるのだな……」
 しみじみと嬉しそうにいう。

「うん。その口で、僕のこと侮辱したこともね」
 ジュダは素早く猫をかかげ、グルグルと激しく回転する。
「な!なにをするぅぅぅ!」
「その口許せないから薬をはかせてやる!」
「王子にあんまり逆らわない方が身の為ってことを覚えていた方がいいぞお前」
 グレイは同情したようにその光景を見ている。
 ジュダ王子はプライドをちょっとでも傷つけられると悪戯めいた苛めをしたくなるのだ。
 それをグレイはよく知っている。
「ばか王子!我を、我を誰だと心得る!偉大なる魔王だぞ!」
「魔王~~~?」
 ぴたりと回転を止めて猫を見つめる。
 猫は目をまわしているが口は正常に動くようだ。
「王子なら知っておるだろう?魔力を持ってこの国を治めた王の事を…」
「それって…ジュカ王?」
 ジュダは猫を真剣に見つめて話を聞く姿勢を見せた。
「そうだ……その生まれ変わりが我だ…」

 ……その昔。
 魔力を持った王がこの国を治めていた。
 王はその力を使い近隣諸国を我がモノにしようと企んだ。
 王の名はジュカ。意味は呪歌。
 名の通り、呪文を歌うように操る力を持っていた。
 皆その魔力を恐れた。
 だが、一番その力を恐れたのは自らの民だった。
 民は隣の国の王に味方し王を裏切った。
 そして、魔力を操り国を栄えさせたジュカ王は隣国との戦いに破れ、命を落とした…

 魔力を操る魂は前世の記憶を覚えているという。
 再び生まれ来て復讐を恐れた鈴国の魔術師たちは、復活を防ぐために猫に転生をくり返す呪術をかけた…
というのが、魔王と言われたジュカ王……
 猫の話だった。

 その話を聞いた二人の反応を見てみるが無表情だった。

 ジュダとグレイはその話はとっくに知っていた。
 だいたいが昔話としてよく聞かされた話だから、二人の 反応はふ~んという素っ気無いものだった。

「なにか…質問は?」

 重々しく話したのだが、二人の反応がイマイチなので、味気なさを感じてジュカ猫は問うた。

 ジュダは手をピッと上に伸ばして質問のポーズをとる。

「今も魔法って使えるんですか?」

 目を輝かせてジュカ猫の方をみる。

「今は…使えない」
「なーんだ。喋れるだけの珍しい猫になっただけジャン!つまんない」

「王子つまんないとかそう言う問題なんですか?
喋れるだけでもたいした者じゃないですか。
この猫が伝説の魔法ってのはとにかくとして」

「人の姿をしていたら…お前達を儀式の贄にしてるところだな……」
 怒りを込めた声でジュカ猫はいう。

「じゃあ人間だったら…魔法を使えるようになるっていうの?」

 ジュダ王子は疑い深気なめでジュカネコを見下ろす。

「ああ…私の魔法は手で印を結んで唱えるものだからな。人の複雑の手じゃないと魔法は使えぬ」

 魔法にもいろいろ方法があって、魔王は印を結んで魔法陣の変わりにし、精霊をあやつる魔法などを使ったらしい。
 だが、昔話程度にはその事は語られていない。
 それに猫ごときがそこまで知るはずもない。
 今まで、自称ジュカ魔王猫の知識は人から聞いた物だと思って疑っていたが、その事まで知っているなら信じてもいいかも知れない。

「ふ~ん…じゃあ!人間になる魔法の薬を作ればいいんじゃないかな!?」

 ジュカ猫の言葉を信じたらしい王子にグレイはぎょっとする。

「王子!本当に猫のいうこと信じてるんですか?」

「ホントにジュカ魔王さまなら人間になる薬の作り方くらい知ってるよね?」

「ああ…知っているとも……」
「もし、人間の姿にしたら、僕に魔法を教えてくれる?そしたら人間にする薬を作ってあげる!」

 猫はピクっと耳を動かしてジッとジュダ王子を見つめ、しばらく考えてから、ニヤリと笑ったふうなネコの表情をつくり、答える。

「いいだろう。魔薬は教えた通りにすれば出来るものだからな……人に戻ったあかつきに呪術のすべてを教えてやる」
 ジュカ猫は目を細めて承諾したが、シッポは左右に振っていた。

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2013/08/15 (Thu)
どうして僕は、皆から避けられるの……?
 僕は………じゃないのに……
 また昔の夢を見てる…みんなが僕をおそれてる・
 またくり返すんじゃないかと…
 何を繰りかえすというの…?
 
 ある国に『魔法使い』に憧れる王子様がおりました
 
 
 ジュダ王子は城で見つけた魔法の研究室に入り浸り薬の調合をしている。
 
 今年で十四歳になる末の王子は深い海の色の瞳に癖毛かかった金色の髪は長く頭の天辺に縛り上げている、一目で身分のあるものだとわかる品性が漂っていたが、その姿は黒いローブ身を包み、まるで魔法使いのようだ。
 
 手にした瓶の液体は綺麗な紫色。
 けれど、ぐつぐつと煮えて気泡を上げる様は毒薬にも見える。
 
 そのなかに最後の調合薬を入れようとスポイトで吸い上げた時、後ろで机の上にあったビンが割れる。
 
「バカ猫がっ!よくも引っ掻きやがって!!懲らしめてやる!」
 
 王子の近衛を務めるグレイは猫に手を思いっきり引っ掻かれ、この研究室を住まいにしていた、ネコを本気になって追い掛ける。
 彼は長身で細身の体格だが近衛だけあって運動神経がよくまだ少年らしさが残るが凛々しい顔立ちをしてる。
 そんな彼の顔には猫のひっかき傷が三本赤い線になっていた。
 
 猫を捕まえようと広いが書物や薬瓶がひしめき合う部屋を遠慮なしに走り腰にさしている剣が壁にあったモノをひっくり返す。
 
 猫も棚に登って、ところ狭しと置いてある薬の瓶を遠慮なく落として計算したようにグレイの頭にぶつけるのだ。
 この研究室を見つけて以来何時ものことになりつつあるのだが、いいかげんジュダ王子も怒りを覚えていた。
 
「うっるさいっ!」
 
 そう怒鳴ると、今作っている薬を瓶に素早く入れてグレイと猫めがけて、投げ付けた。
 
「なっ!何するんですか王子!飲んじゃったじゃないですか!何かヤバい効果とか、ヤバいモンなんじゃないでしょうね!?」
 
 薬をかけられた事にグレイは恐怖を覚えて蒼白な顔で王子に詰め寄る。
 
 ジュダはその言葉を聞いて、うむ~と顎に手を置いて真剣に何かを考えてる風で
 
「黙らせる薬は失敗におわちゃったかぁ…」
 
 最後に、ちっ!と舌打ちした。
 
「だ…黙らせる薬って…どういう……?」
「だってネコとグレイうるさいんだモン!
どうして失敗しちゃったんだろー?」
 
 悪びれもせずにジュダはむしろ自分の失敗に腹が立っている。
 口調は子供で冗談のように聞こえるけれど、そう言う時こそジュダは本気の時が多い。
 
 そんな王子にグレイは頬をひきつらせ訪ねる。
 
「成功した時の対処法も考えましたか…?」
「え……?必要あるの?」
「お…王子…」
 
 グレイはそのまま黙ってしまった。
 ジュダの無責任発言に、効果があったらしい。
 
「また失敗か?いい加減に、自分の才能に気づけバカ王子」
「グレイ……?」
 
 ジュダはグレイを睨むが、けして俺じゃない!と必死に顔と手を動じに横に振る。
 
「確かに、グレイにしては透き通るいい声してたよね?」
 
 辺りをキョロキョロと見渡してみる。
 ここには自分とグレイと猫しかいない。
 
「ん?…もしかして……猫が喋っ…た?」
 
 ネコを注目する。
 横にしていた体をシャンとして座りジュダを見返した。
 
「私が喋ったのが、分かるのか?」
 猫は口を細かく動かしてそう喋った。
 ジュダとグレイは一瞬時が止まった。
 
「ええええ!!?猫!?」
 
 ジュダは時が動き出すとに大声で叫び猫の両脇を捕まえ抱き上げて見上げる。
「お前、喋れるのか!?」
「猫としては喋っていたが…人の言葉に聞こえるのか?」
猫も驚き問い返す。

★続く★
 

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* ILLUSTRATION BY nyao *