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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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女性
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一応漫画家?
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漫画を描く事
自己紹介:
佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
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2024/04/27 (Sat)
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2014/10/25 (Sat)

9.ゆるむ思い

 
 月夜丸は自分の邸の階に腰掛け、子犬をあやしながらそんな月を眺めていた。
 今宵の月は少し欠けた月だ。
 自分に欠けてしまった感情のような気がした…

 「月夜丸……いい加減に元服をしないか?」
 と父が月夜丸の部屋まで渡ってきてそう言った。

 無視をする。
 父は自分を可愛いと思ってくれているのは感じているが、月夜丸は心が開けない。
 一匹の子犬が父の方に近付いた。
 父は子犬を慣れた手付きで撫でる。

「シロはこのくらいの時に私とあったのだ……」
「そして殺した」

 刺を含んだ声で次の言葉を継がせないように言ってやった。
 父は口を噤んだ。

「お前は北の方の子だぞ、シロの子のはずがない…」
 と父は諭すようにいう。

 幼かった月夜丸を、母を裏切って迎えた妻の養子にした。
 幼いので、犬に育てられたことな、忘れるだろうと思っていたらしいが、全く忘れなかった。

 父をこそ諭したいとムキになったことが幼いころはあったが、父は頑としてその事を受け入れなかった。
そういうところは、この父の子だとおもう。

 最近はその事で父と話す事を諦め父の言葉をむしすることにした。
 けれど、今日葛葉という娘と話した時の熱い思いが胸にまだ燻っていた。

「母のことをまだ人喰いの化け犬とお思いか?愛した女が獣なのが許せなかったか?答えろ……」

 犬のように唸るように父を睨み切にいう。
 父は目をそらし、俯く。
 また答えをはぐらかし逃げる気だろうか?
 逃がさないように腕をガシっと掴む。
 「!?」
 月夜丸、意表をつかれた。
 父はそのまま、夜丸の肩に顔を埋め、月夜丸の背をきつく抱きしめて耳もとで呟く。

「確かに……私は正体を知って受け入れられなかった……自分の思いを受け入れられない思い、府に落ちない思いに苛つかせ…シロを見つけ殺してしまった……
だが、今は後悔してる……
 この年になって落ち着けるようなって、ふと考える」
 父は、口には一生出さないと思っていた想いを、愛しいわが子に、月夜丸に白状する。

「シロは本当に私を愛していてくれたのだなと……
私も、もっと真剣になれば良かったと。
 殺すこともなかったのではないかと………すまない……本当にすまなんだ……月夜丸許してくれ…」

 声を殺し月夜丸の肩に頭をのせて泣いた。
 張っていた心の糸がゆるんだのだ。
 そのゆるみが月夜丸の方にも伝わってきた……
 それがなんだが、もどかしくて、許してしまいそうになる自分が嫌で父を突き飛ばし、邸の外に出た。

10.服従の関係

 あの月の方に会った場所に無意識に来ていた。
 杉の木の幹に肘をつき大きく息を吐き左の手を胸元できつく握る。
 心を、ドキドキと鼓動する何かを止めたくて。

 苦しい……苦しい……憎くて憎くて仕方がなかったのに……
 なんなんだこの違和感は。
 父から流れ込んできた心が苦しくて仕方がない。
 憎くて仕方がないという心を洗い流そうとする温かなものが、別の苦しみを与えているような感じだ。

「どうした?何がそんなに苦しんだ?」
 と月の方が気配もなく現れた。

 月の方の突然に話し掛けられてビクリと肩を揺らし振り向いた。
 月夜丸は黙った。

 なんていえばいいのかわからなくて別のことを言うことにした。

「昨日殺した犬は……?跡形もなかった……どうしてだ?」
 月の方は不敵に何時ものように微笑んでいたが、眉ねを寄せていた。

「葛葉が近付いてくるのがわかったから、消した」
「自然には還したか?」
「還すわけないじゃない。闇に支配されたモノを地の神は受け入れない、いつものようにお前は呪術を使い終わった犬を林に放ったが…」
 口元に手を当てクククっと笑いをかみしめるように笑う。

「それは意味がない事だったね。その肉体は僕が仲間にくれてやった」

 月夜丸はぐっと拳をつくり月の方を睨む。
 仲間とはどういうモノたちなのかは想像もつかないが、きっと禍々しいモノなのだろうと思った。
 
「なに?その反抗的な目は?御主人様に逆らっていいのぉ?」
「誰が主人だ‼」
と月の方の首元を狙って腕を勢いよくのばす。
 さっきまでの感情も手伝って手加減は無い。
 むしろ力が増している。
 この力で勢いで月の方の細い首を握れば息の根を止めらた。
 だが、月の方は地を蹴り跳躍し、月夜丸の背の方に空中で回転しながら着地すると何かの呪文を唱える。唱え終わるとニヤリと不敵な笑みを浮かる。
 シュッと細く黒い紐が月の方の口元から現れて、月夜丸の首に巻きついた
「なんっだ!?これは!」
「首輪だよ」
 とっさに首に巻きついたものを引き千切ろうとしたが、月の方はその紐を思いっきりひっぱり、月夜丸を仰向けに倒す。
「それにねぇ……犬のくせに、飼い主以外に懐くんじゃないよ……」
と倒れた月夜丸のむねに馬乗りになり、無表情で冷ややかな刺のある声で覗き込み言う。

「俺は主人などいない……たとえお前でもそう思っていないっ」
「思わせてやるよ……忠実なる犬神としてね……」
 きつく呪の紐を閉めていく。
 息ができなくて意志が薄らいでいく。
 薄らいでいくにつれて、この月の方の心が流れ込んできた…
「同じだ…お前も…っ俺…と」
 この童も俺と同じなのだ………と思うと意識を失った。

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