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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
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2014/10/23 (Thu)

6・闇夜に浮かぶ月の方

 世界は闇に覆われ何も見えない。
 ただ、冷たい雨が、己の存在が存在するものだと感じさせてくれる。

 星は雲に隠れ、光が届かず、時折、雷だけが闇に閉ざされた世界を一瞬だけ激しく輝かせ闇に閉ざす。

 神社の社で雨宿りしている月夜丸は、生き絶えた犬を抱いている。
 理不尽な乱暴を受け、一気に死ねず痛さに呻く犬を刀で一息にした。
 本当はしたくなかった……
 だけど苦しむ姿がとても痛々しくてそれを犬も望んでいた。

  この犬には子がいたらしく、途中で追い付いてきた従者に子犬を預けてこの社まできた。
 従者には見つからなかったとでもいっておけと言い邸に返した。

 月夜丸は罪もない犬をこんな目にあわせた人間が憎いと思う。
 そして、自分の人間と同じ姿のことも。

「人であることが憎くなる……半分流れている血の同族をこんな目にあわせている人間が……」
と呟く。

 どちらかの一種族なら、苦しまなくてすんだのに……
 人の体でうまれ、心は獣なのだと自分は思う。

 だから自分が苦しい。

 でもこれが、自分という存在なのだから仕方がないといつものように諦める。

  ここでじっとしていても、きっとあの方は今日は来ないのだろうなと思い、かえろうとした時。

「また連れてきたの?」
と子供の声。

 それは、自分と『同じ者』で月の力を持つお方。

「ああ……この犬の恨みを晴らしてくれ」

 暗闇で何も見えないはずだが、二人はお互いの姿が見える。
 人では無い瞳の能力を活かし視る。

 闇の色をした衣を着、耳は人の耳ではなく狐の耳。
 そして十歳くらいの童というのが、この月の方の姿だった。

 月の方は月神の力をあやつり、獣の望みを叶えてくれるという。
 それは数日前に遡る、犬を殺されたところを悲しんでいた時、その方はあらわれた。


「その犬の恨み晴らしてあげようか?」
 と言った。

 最初は訝しんだ。
 狐の匂いもするからだ。

「狐の匂いがする?
 それは君と同じ獣の血を引いてるんだよ。狐のね。
でも、僕は犬であろうとなんであろうと、恐くない……」

 癖なのか、悦の入った喋りかたが少々気に触ったが、続きを促すように目を見つめる。

「なぜなら月の力を授かる者だからだ………」
「月の力を授かるもの……?」

 それは、小さいころ犬の母に聞いたことがあった。
 月に獣の願いを叶えてくれる力があると、自分が生まれたのも、月のおかげだと……
「どう?お前の望みを叶えてあげるよ……」
 フフっと不敵に笑う。

 そして、願いを叶えてもらった……

 事あるごとに今のように犬の死体を抱いてはそのお方に会うようになった。
 犬を手渡すと、またフフッとあの笑みだ。
 そういえば……昼に会った男の子のような格好をした女の子に似ていると思った。

「昼……会わなかったか?」
 と聞いてみた。

「あってないよ?
僕は夜闇のなかでしか、会わないじゃないか」
「そうか……」

 確かにそうだ、この方は『雄』だ。

 月の方は犬を頭だけ残してうめるている。
 本当は生きている犬で呪術を使うらしいのだが、闇の力を借りて、まだ生きている思いを宿らせて術を行なうのだ。

 その作業中、その方はふと何かを思い付いたらしく月夜丸に問う。

「昼に会ったってやつ……僕に似てたんだよね」
「ああ……雌の匂いをしてた」
その言葉をきいて、怪訝な顔をした。

「……幸せそうだった?」
 声に刺があった。憎んでいるような……
「不自由しているようにはみえなかったな」
「ふ~ん……」
 と鼻で相づちをしいつものように呪術の用意が出来た。

 その姿をみるのは辛いが、呪術を使うためだ。
 呪を唱えると、首の周りに白いモノが集まり中に入る…と、一声なく、すると、白いモノはだんだん黒にかわっていき例の獣の妖しへと変じた。

 そして、闇の中に解けて呪う相手のもとの所にいった。

「これでよしっと……それにしても……」
呪術を探っているモノがいる。

それが…

「葛葉だったなんて……」
 と憎々しく呟く。

「葛葉?」
「お前は知らなくていいことだ……さっさと自分の寝ぐらに帰れ」
 そう呟くと月の方は消えていった。

 「寝ぐらか……」
 月夜丸は皮肉毛に苦笑をすると、いわれて通り邸に帰ることにした。

 その後ろ姿を、白い子犬が付いてきた。
 だけど、月夜丸は気付かなかった。

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