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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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漫画を描く事
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佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
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2014/10/25 (Sat)

8・せつなき想い

 父は天皇の血に繋がる者で、勢力争いにもならない捨て宮だった。
 都の外れに邸で独りで暮らしていた。
 ある日カラスに襲われ傷ついた子犬を助け、俺の母になる白い犬を飼った。
 一人寂しかった父の人生に楽しい日常が始まった。
 
 シロがいれば一人など寂しくない。
 大事にしてやるからな…
 シロを父はとてもかわいがった。
 
 母はそんな人間である父を愛し、月に毎晩祈った。

 どうか、どうか、この愛しき人間の妻になれる姿にしてください…
 私はこの人間を愛おしいのです…
 

 その祈りが月の神に通じたのか人の姿となり、父と恋に落ちた。
 人の姿を保つには毎日月にお祈りをしなくてはならなかった。
 父は始めはいなくなったシロが心配だったが、なぜか、娘といるとシロがいた時とかわらず穏やかな気持ちになれた…
 しだいに、犬のシロの存在を忘れていった… 

 だが、都からも離れ、人とかかわらない父の暮らしはとても質素で、自分ひとり暮らしていくのが、ぎりぎりの生活をしていた為に、
 愛しいが、地位のない女を養いながら暮らしていくのは生活厳しすぎた。

 そんなある日、父の知人の貴族から妹を紹介されて、その娘とも結ばれ正式な夫婦になった。
 
 人の姿になって俺を身ごもった母は、何時帰ってくるか分からない父を不安に思いながら待つばかり。

 毎夜、月に祈ることも忘れてしまった母はだんだん、人の姿を保ってはいられなくなった。

 父はひさしぶりに邸に帰ってくると、母の正体を知ってしまった。
 頭には犬の耳が生えて、尻尾が袿の下からのぞいていた。
 女は人ならざるものだった。
 父は驚きと衝撃にその場から逃げだした。
 二度とこのシロと共に生きた寂しい邸には足を踏み入れなくなった。
 
 正体を知られた母は深い森へと隠れた。
 正体がばれたら、人とは会わないという獣の掟だった。

 もうすぐ臨月だというのにばれてしまった。
 このまま、犬の姿に戻ったら、子は人でも獣でもなく、ヒルコという、神の禁忌の子のようになってしまう。

 「どうか、神様……今少しだけ、人の姿に!!」

 と切に願いながら俺を生んだ。

 生まれてきた俺の姿は人だった。

 今だって人として、育っている……禁忌の子になるのは避けられた。
 だが、気配は獣だった。
 それは仕方のないことだと母は言ったが。
 そして、二、三年の月日が立つと俺は森を駆け巡り、犬の生活をしていた。
 幼く好奇心が強かった俺は森の外にでてしまった。
 そこで偶然狩りに出かけていた父と会った。
 父は俺を見た時、自分の子供だと感じたそうだ。
 人間の姿を見るのは初めてだったから、俺は驚いて逃げた。
 そのことを、母がに話すと、母は俺を人間のいるところに父のもとへ行けと言った。
それは、獣の森の神は人間である俺を、森で健やかに暮らすための条件として人に会わせてはいけないという掟があった。

 母は人であるころ父に贈られた袿の衣を被せて森を追いやった。
 行く場所もなく彷徨っていた俺は偶然に父に拾われた。

 衣を見て父は愛した女の子供、自分の息子だと認めたが、母が獣だとは認めようとはしなかった。
 母はあの化け犬に喰われたのだと、思い込んだらしい。

 そして、森に入り愛しい女を殺した化け犬と思い込んで、矢を放ち殺した……

 「ひどい………」
 葛葉は胸元で拳を作り涙をためていた。

 淡々とした口調に熱がこもって月夜丸は咽をつまらせながら思いを吐き出す。
 瞳には怒りに煌めいている。

 「愛しいモノを殺されて仇をとるくらい愛しているなら……
 母を本当に愛していたなら……獣だろうとなんだろうと母だと純粋に認めてれば… …あんなことにはならなかったのに……」

 その辛い話に葛葉も月夜丸と心が共感して泣きたくなる。せつなくて悲しくて苦しい…
 月夜丸にかける言葉が葛葉には見つからなかった。
 頼光も同じ気持ちらしく、かなしい話に涙を我慢している。

「父は……人間は愚かだ……
現実が受け入れられないと、勝手に解釈してなにかの所為にする……
人間は弱いから、もっと弱い生き物に辛く当たる……自分がどうしようもなく、何もできないからって……母にした仕打ちのように感じて……憎しみが止まらない……‼」
 最後は叫ぶように言う。
 風がザァッと吹いた。
 月夜丸の結っていない髪を激しく乱す。
 表情が見えないが、葛葉の頬に冷たいモノが濡れた。
 これは自分のモノではない。

「月夜丸…泣いてるの………?」
 月夜丸の近くに足が行き自然と涙をぬぐおうと手を差し伸べるが払いのけられた。
 月夜丸はさっと立ち上がると走り出した。

「おい!葛葉追わなくていいのか?」
 葛葉は払いのけられた手をさすりながら沈黙する。
 ただ、頭を小さく俯いた。
 
 月夜丸に気づかれる事がなかった、白い犬のコーエーはただ、寂し気に月夜丸の後ろ姿を見送っていた。

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