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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
性別:
女性
職業:
一応漫画家?
趣味:
漫画を描く事
自己紹介:
佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
イラスト付童話や小説を制作していこうと思ってます。

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2012/09/21 (Fri)

「ほしい・・・すずさんが好きなんだ」
とても愛おしくて狂おしい…
ずっと抑えているものが溢れだすばかりだ。
すずさんも同じ気持ちなんだろうと思うもう止まらない…

「私も…カイトがほしい…でも…っ!」
大人として未成年に手を出しても出されてもいけない。
けれど、カイトは有無も言わず私をそのまま押し倒した。

「ちょっと、ここ玄関よ!ここはまずいわ。」

そう抵抗しても、カイトは首筋にキスを落として、
服の中の私の胸に手をあて・・・
やわらかく包み込み、しなやか指が私の心を捕まえるように妖しくふれてくる。

「やっ・・・カイトっ」

突然、初めて触れられてぞくりとする。
私は慌てて、その手を押さえてやめさせる。

「じゃあ、ベットならいいの?」

焦躁感が止まらないカイトは耳元でささやく様に問う。
その声がどこか艶っぽい・・・

「う。うん・・・」

ああ・・・肯定しちゃった。
否定しなきゃいけないのに…

「あーーっ!ごめーん忘れ物!」
ガチャリと遠慮なしに真一郎さんは扉を開けて玄関でいちゃついている私たちを見て、その場の時間が止まる。

「あーー…ごめーん。ほどほどにねっ!」
ウインクして玄関の扉を閉じる。
そして、真一郎さんの笑いながらじぶんの車に到着するまで笑い声が聞こえた。

なんだかとても恥ずかしくなって、その場の空気がさめる。
僕のあふれだす愛も心の中になんとか納まってしまった。
「ご、ごはんにしよっか?」
「そ、そうね。そうしましょ」
すずさんも同じみたいでほっと胸をなでおろす。

ちょっと気まずい雰囲気だけれど、お互いの顔を見つめあると笑ってしまって笑いが止まらない。

わざとらしく、忘れ物した真一郎さんとその罠にはまってしまったなと思う自分たちがなんだかおかしくて笑いがとまらなかった。

お互いの同じ気持ちがあるとおても面白くて幸せ。
こんな風にずっと過ごしていければいいな・・・

でも、徐々に私たちはゆっくりだけど体も結ばれてさらなる幸せを手に入れられることを刻んでいこうと思った。

それが、毎日そばにいる、刻まれる、私たちの絆と愛だと思って・・・


そして夜

「すずさーん。一緒にお風呂はいろー」
「だめっ!いやだ!まだ早い!入ってきたら絶交よ!」


ほんと徐々になんだけれどね・・・
あの時以来カイトはちょっと攻めすぎなのが今までの私の生活に危機を与えていることは言うまでもない。


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2012/09/21 (Fri)
真一郎さんはテーブルに肘をつき組んだ手に顎を載せて私たちを見た後、にっこりと微笑む。

「実は俺はらはらしてたんだ。このまま二人の恋仲が切れちゃうのかなってさ」
「え…?どういうことですか?」
カイトは首をかしげる。
私は神妙にうなずいてしまった。
たしかに、危機だった。すれ違い生活はテレビでやってたように心がつながらない不安が不満につながって別れてしまうんだなってしみじみ思った。

「だって、カイトくん。仕事してお金もらえて自分の好きなもの買えるってうれしかっただろう?」
「は、はい。でも・・・・」

たしかに家に入れてもらうもの以外のお金はカイトのお小遣いアップにもなったけれど、実際は。
僕の場合はフライパンとか鍋とかすずさんにご飯を喜んでもらえる道具ばっかかってたから・・・」

「え・・・?そうなの?」
真一郎さんは目を丸くする。

その反対にカイトは真面目にうなづいて、微笑む。
「今回の仕事の目標はすずさんを安心させることであって自分にお金を使うなんて考えてなかった」
「ふ、いいこだねぇ…」
真一郎さんはしみじみと半分あきれと半分関心した声を出した。
私も真一郎さんと同じ感想だったけれどそんなカイトは純粋で私は愛されてるんだなーってしみじみ感じる。
「カイトくんは芯から人と思いやることを知ってるんだね。僕の心配はいらなかったってことかー・・・」
「いいえ、私は心配してもらえてうれしかったですよ。真一郎さん。実際、すれ違いを感じたのも事実だし」

真一郎さんのつてじゃなかったら、カイトはがんばって仕事続けていたと思う。
断らせることもできなかったかもしれない。

いまは週三日であとは学歴とるための勉強と家事におわれている。
多少のお小遣いはほしいし、元気な青年が毎日家の中にこもっているのももったいない。
でも、私が帰る頃には出来るだけ帰ってきてご飯を作って一緒に過ごす日々になった。

「でもお互いを思っていることは素晴らしいことだね。オレにはできなかったから少しうらやましい」
少しさみしげに真一郎さんは、どこか遠くを見つめる。

「りり子にはもっとそういう気持ちを共感したかった・・・それを君たちにも知ってもらいともおもってたんだ」
「真一郎さん・・・」
カイトには平気なことだっただろうけど私には荒療治・・・

りり子姉は真一郎さんととても仲が良かった。
ホストという職業柄いろいろ苦労したらしいけれど、それでも二人はお互いを尊重し夫婦になってかわいい双子を産んで早く逝ってしまった。
真一郎さんはもう誰とも結婚せずに、藍ちゃんと蓮くんを大切に育てるときめている。
それはりり子姉への思いでもある。

真一郎さんのもう叶わないりり子姉への思いを思うと少し切なくなった。


真一郎さんが帰った後、カイトの手をぎゅっと握る。
「すずさん?」
「あのね、お金なんて関係ない、思い合える人がいる。大切な人がいるそれだけで幸せになれるんだね」
「うん。そうだね。」
カイトもその思いを受け取ったかのように握った手に力を込める。

「カイト。好きよ」
そういうと、チュッと僕の唇にすずさんの口付けが軽く落ちる。
「す、すずさん」
うう。。。我慢できない。
自分の心の中に納めておきたい大きな愛しいという想いがすずさんを抱きしめる。
「カイト・・・くるしいっ」
「僕もくるしい・・・どうしてもすずさんが欲しい・・・」
「あなたの欲しいものってやっぱり、私なの・・・?」
すずさんが背中に腕をまわしてそう問うた。

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2012/09/20 (Thu)
「御褒美作業で、仕事に来れなかったわけだ」

ふーんとやっぱりなという、ドヤ顔でニヤニヤしている光さん。
光さんだけじゃない・・・真一郎さんもニヤニヤして僕のほうを見る。
昨夜、仕事に来れなかった理由を尋問されているが、いたたまれなく恥ずかしい。

「ご、御褒美はもらってないですよ・・・ほんとに」
「未成年に手を出したらすずは犯罪者だもんな!あはははは」
「でも愛する者同士なら犯罪なんて関係ないんじゃないかな?大丈夫だよ、ここの仕事より健全な男女関係だ」
「いえいえ、ぼく料理してるだけですから。って本当に何にもなかったですからそれだけは、言ってきなさいってすずさんに言われました」
「そういうところが怪しいんだよ。恥ずかしがって隠したい気持ちはわかるが、逆効果だってーの!」
ばんばんと僕の背中を叩いて、カイトも大人の男の仲間入りかーと異様に喜ぶ光さん。
「いえ、まあ・・・・」
信じてもらえそうにない・・・・ごめんなさい。
すずさん・・・

すずさんに抱きしめられた後の記憶はない。
あまりの、すずさんの馬力(?)に息が出来なくなってそのまま気絶をしてしまった。
朝起きたら、すずさんが目の下に隈をつけて僕を見つめていた。
「す、すずさん!?僕は一体…」
「き。ぜ。つ。し。た。の。」
そういうと、ふんとそっぽを向いた。
せっかく女の一大決心が台無しじゃない・・・とぼそりとつぶやいたのを聞こえた。
「ご。ごめんなさい・・・」
据え膳食わぬは男の恥というか食い損ねた・・・・ちっ!と内心残念だった。

「朝ごはん作って、部屋の掃除して!早くっ!」
「は、はい!」

すずさんの命令でゴミやしきとかした家の中を片付けて向かい泡で出ご飯を食べるのはひさしぶりで楽しかった。

いつもの日常が一番しあわせだとしみじみ感じた。

でもなんかだ、キスより進展したようで、すずさんは、朝のご飯を作っているときギュッと背中から抱きしめることが多くなった。
なんだか、くせになってしまったらしい。
人の温かさが恋しいというけれど、子供みたいだとおもっていまうと同時に

「誘ってるのかーーーーーーーー!?」
ってドキドキしてしまう。

昨晩の窒息抱っこをどの程度手加減すればいいのか研究しているとは、馬鹿らしくて言えないけれど
甘い雰囲気をまた狙っているいるのと言われたらそうかもしれない。

カイトが好き。
ずっと触れていたい。
あのとき、体は結ばれないままだけど
心が結ばれるのはとても幸せでそれを確かめるために何も言わないで背中からだきしてみた。

ああ・・・幸せだな・・・


このあと、夜のバイトは控えさせることにした。
やっぱり、そういうことは未成年にやらせられない。
保護者のたちばと恋人として嫌だった。

保護者の立場がなくなれば、本当に結ばれてもいい
結ばれたい。
本当は今スグに

でもカイトの将来私の将来を考えて自制をしようと思ってる。
どこまでじせいできるかわからないけれどね。

カイトを家まで送ってもらって真一郎さんにお茶をだしているとき
「元の鞘に戻ったようでよかったよ」
ほっと溜息をついて、そう私たち本音をこぼした。

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2012/09/20 (Thu)
ああ…私…こどもみたいに駄々をこねてる…
涙までこぼしちゃって・・・
心ではどこか冷静になっている自分がいる。
でも、実際冷静でいられなくて、不安で悲しくて、本音をはきだしている・・・

でも冷静に分析しているところが顔を見せられない恥ずかしさで下を向いてしまって、カイトと真摯に向き合えないでいた。

「すずさん…泣かないで。ね?」

カイトはやさしく声をかけながら、困りながら、下を向き涙をこぼししゃくりあげる子供な私にやさしい。
斜めからかがんで私の顔をのぞきこもうとする。

かあっと顔が赤くなる。
恥ずかしい。
言ってしまった。
本当のことを…
子供でわがままな私は年上なのに恥ずかしい。

のぞきこまれるのが嫌でカイトに背を向ける。

「ごめん・・・大人なのに・・・子供みたいなこと言っちゃって…もうわがまま言わないから、仕事いっていいわよ」
「いけないよ・・・そんなすずさんを一人に出来ないよ」
そういい、後ろから私をそっと抱き締めて、耳元でささやく。
「僕も、すずさんがいるから仕事が楽しいがんばろうって思った。・・・でもすずさんが悲しむなら仕事しない。ずずさんの帰りを待っているほうがいい」
そういって、カイトは柔らかい唇で耳を食む。
ゾクリと体が熱くなる。いや、しびれる感じだろうか・・・
「っつ!な、な、なにするの・・・!?」
初めての感じで恥ずかしくて、カイトを押しのけようとしたけれど、男の子といえど、男の力で抱きしめられたら、抵抗できなかった。
「すずさん。ずっとこうしたかったんだ。仕事始めたのはすずさんが安心して僕と結ばれて家庭を作るためだったけれど、すずさんと会話が少なくなるの触れ合うのが少なくなることに矛盾をかんじていたんだ・・・」

そういいながら、今度は首筋に唇をあててキスをされた。
「・・・っ!」

顔だけじゃなくって、体中が熱くなる。
カイトに襲われそうになって以来の出来事で、でもあの時と雰囲気が全く違くて・・・

なんかだ
甘い雰囲気でしびれる・・・

「すずさんもそう思っていてくれた?」
「あ、あたりまえじゃない・・・なんて矛盾してるんだろうって、ずっとずっと、カイトと触れ合いがなくなってててとっても不安だったの・・・カイト疲れて帰ってくるし,起こすの悪いなって思ったりしてたら、すれ違ってって・・・」
恥ずかしさのあまり、雰囲気を変えようと思っても今までの思いを思い返すと涙が出てきた。
「すずさん?」
「ごめんねカイト・・・私わがままで。」
「すずさん・・・」
ギュッと背中から抱きしめられる。
温かい。とくんとくんとカイトの音が聞こえる。
こうされたのは初めてだ。
親に抱きしめられた以来かもしれない。
「ずっとこうしていたいな・・・」
ぼそりとつぶやいてしまった。また恥ずかしいことを言ってしまって、顔が熱くなる。
「ずずさんのわがままなら、なんだって叶えてあげたいよ」
反射的にカイトの顔を見たくて少し上に顔をそらすとカイトと瞳があう。
カイトも突然のことに顔を真っ赤にしてる。
「ちょ、ちょっと大人っぽかった僕・・・」

あらためて、顔をのぞかれるとハッと現実に戻る。
実際すずさんのほうが年上なのに、子供扱いして失礼だったかもしれない。
ただ、無意識にすずさんが愛おしすぎて、触れたくて、自分のものにしたいという衝動が抑えられなかった・・・
すずさんはそんな僕の顔を見てくすっと、笑った。
久しぶりのすずさんの笑顔とおもい、僕もうれしくてほほ笑んだ。

「カイト…大好き・・・愛してる・・・」
すずさんは体ごと僕に向き合って、胸に顔をうずめて抱きしめる。
空手三段柔道三段だけある力強いほうようだった・・・


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2012/08/30 (Thu)

ズボンのポケットの中で携帯の振動が鳴る。

「ああ・・・時間だ…いかなきゃ・・・」

充分に疲れが取れない体を無理矢理起こして、背伸びをする。
いま工場のバイトは忙しい時期で残業を断ることなく働いて家の事が出来ないでいる。

ゴミ山だらけになった家に申し訳なさを感じる。
しかも、いまホストバーにバイトに行ってご飯をつくるのにすずさんとの楽しい食事を作る事も出来ないなんて…
虚しさと矛盾を感じる。
「でも、すずさんにアンしてもらうには今は耐えなきゃ・・・」

時計を確認すると深夜2時近く。
ホストバーは深夜同じ同業者のホステスさん相手にも商売する事があるので朝6時頃まで仕事がある。
けっこう朝早い仕事なのだ。

もう、この時間はすずさんは寝ているから、ばれないように眠りを覚まさないように、そっと玄関の方へ向かうと
すずさんが仁王立ちで立ちふさがっていた。

「す、すずさん・・・どうしておきてるの?」
いつもなら十時にはねているのに起きている事にびっくりしてしまった。
「明日休みだからよってか休みをもらったのよ」
「そ、そうなんだ・・・」
「こんやも、ホストクラブへバイト?」
「な、なんで知ってるの?」
「ふ・・あんたって馬鹿がつくほど正直ね」
呆れた溜息を吐くすずさん。
思わず僕は俯いてしまうすずさんの顔をまともに見られない。
やばい、すずさんにはこの仕事はダメだって言われると思ったから言わないでいた。
それも罪悪感になっていてすずさんとの会話に少しぎくしゃく感が影響していた。
ホストクラブで調理だけの仕事アルバイトしていると言えど未成年で働かせている保護者としては遺憾だろう。
すずさんがこちらへと近づく気配があって、頭上にすずさんの手を感じる。
思わず殺られる(脳天チョップ)とおもったけれど、優しく頭をなでられた。

「そんなに・・・がんばらなくてもいいのよ」
思わずすずさんの顔を見ると悲しそうな辛そうな顔をしている。
僕の心もすずさんと同じ気持ちになって悲しくなるそして心配になる
「すずさん?どうしたの?何か悲しい事あるの?」
僕の頭を撫でている手を思わずとって胸の前でギュッと優しく握った。
その行動にすずさんの顔は赤くなってそっぽを向きながら
「べ、べつに・・・そんなんじゃないけど。とにかく体が辛くなるほど頑張らなくていいてこと言いたかったの。」
今度はすずさんが僕の顔を見ない。
「でも頑張らないとすずさんを安心させてあげられないから、僕は行くよバイトに・・・」
何時もぎりぎり出勤だからもう行かなきゃ、紫さん一人に厨房を任せることになってしまう。
すずさんの体をそっと押しのけて急いで外へ出ていこうとしたらすずさんが僕のトレーナーの帽子を思いっきり引っ張り首が閉まる。
「くっ!すずさん?僕急いでいかないと」

「行かないでっ!」
顔を伏せたまま泣き声交じりにそういうすずさんの声に何かに胸を突き刺された。

「今・・・とても不安なの・・・とても・・・」

「すずさん?」

床にすずさんの涙が一滴ぽたりと落ちた。

慌てて僕はすずさんのもとへかけより顔を覗き込むように慰めようとする。
だけど、いやいやする子供のように僕を拒否して涙をふく。
「私・・カイトがいるから仕事が好きになったの・・・」
ぽつりとけれどはっきりとすずさんは口にする。
「カイトが家にいるから頑張って仕事をする事が出来るって気がついたの」






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2012/08/24 (Fri)
「そんなにへとへとになるまですずの為に働いてるって分かってるんだったら一発やらせてやれよ」

ホストの格好をして人を引き付ける品のある美貌を持つ光は悪びれることなく私を責めるように品のかけらもない言葉をい放つ。
腹が立ち、腹部に拳を遠慮うなく一発入れてやった。
「こんな風に・・・?」
光はその場にうずくまり、ううっ・・・と痛さに耐えるために無口になった。
「そういう問題じゃないのよ!」
「そういう問題だろう!?子供を安心して作れる環境の為にカイトのやつガンバてるんだからさ」

光は腹をさすりながら私のの言葉を否定する。
ホストは口が命、腹に一発だけじゃ黙らせるのは無理か・・・
しかもストレートに図星を付いているからこちらが黙る事になる。

「工場の仕事もがんばって金溜めて、ここで働いているのは真一郎さんが将来の為に自給をためてもらっているんだとさ」

「私だってお金貯めてるからそんなに頑張らなくてもいいのに…」

一人暮らしだったら余裕にお金を使えていたけれどカイトと二人暮らしで以前のようにお金をためるのも自由に使うの
も正直大変だった。

でもそれは…

「すずは今の仕事好きで働いていて辞めるつもりもないだろう?
いざ出産なんかなったら収入にも困るしもしかしたら路頭に迷う事になるしな。そのための保険だとおもっておけばいいんじゃないか?」
光は客観的に正論を言う。それは私を納得させ安心させるものだったけれど、今は違うのだ。
ケンカしたときは光が言うように将来の為の生活が出来るかが問題だった・・・
「でも…今が問題よ・・・」
私はぼそりと独り言が口に出ていてそれを光は聞き逃さなかった。
「だから、結ばれちまえって言ってんだろ?行きつくところは結局それなんだからさ・・・ごふっ!」
今度は水落に一発入れて黙らせたと言うか気絶させて私はさっさと帰宅することにした。

カイトは少し勘違いしちゃてる・・・
勘違いさせたのは私だけど・・・

いま、私は仕事が楽しいし、好きな仕事にやりがいもある。
今の稼ぎだけで十分一人で暮らせていけた、
でもカイトと暮らして正直きつい事もあるけれど自分の自由のお金を減らせばいいだけ・・・
そして、今はカイトがいるから仕事を更に頑張れる。

なのに・・・

仕事から帰るとまた、ゴミ袋につっぷするように倒れていて、そんなカイトを背負って布団に寝かせる日々。
なんだか、寂しい
悲しい
虚しいな…

そうおもうと、ポロリと一粒の涙がカイトの寝顔に落ちた。

すずさん・・・
すずさん・・・泣いてるの…
どうして…
僕がんばってるよすずさんと幸せになれるように仕事がんばってる。
正直仕事するのはたのしい。
家にこもっているより動いてその分お金になることが楽しい。
でもね、でもねこの楽しさは未来を考えるから
すずさんとの幸せの未来を思うから・・・

なのになんで泣いているのそんな悲しい顔・・・・
しないで・・・

ぶるぶるぶるとポケットの中の携帯の振動が鳴る。
もう仕事に行く時間だ・・・



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2012/08/16 (Thu)
カイトが仕事を始めてから、生活習慣が変わった。
出勤時間帯が一緒だから、路の途中まで一緒に通勤して、夕飯のときはいつも以上に会話が増えた。
始めのころは仕事や人間関係が上手くいかなくてなやんでいたのに、半月たった今ではなんだか楽しそう。
その話を聞いているのもたのしいし、カイトが社会を少しでも体験できている事はカイトにとってもいい経験だと思う。
でも、朝仕事一緒に仕事言っているけれど、夜もカイトはアルバイトをしているらしい。
それはきっと真一郎さんのバーの仕事だと思うけど…
一生懸命働いているカイトの姿をみるとやめろとは言えなかった。

けれど
三ヶ月経ってさらに今までの生活が変わっていってしまった。
いや・・・戻ってしまったと言うべきか・・・
カイトと出会う前の私の家に・・・

だんだんゴミ邸状態になってきて、さすがの私も
「カイト!家の事やってよ!カイトの仕事でしょう!?」
「ぼ、僕だ手仕事が忙しくて疲れて・・・ごめん今日はもう眠い・・・無理…」
そういうと、ゴミ袋のクッションに突っ込んで眠ってしまった。
「もう、カイトったらそんなところで寝ちゃだめでしょっ!コラッカイト!」
拳一発入れても起きない・・・
これはもう重症だわ・・・

しかも最近こんな感じ。
通販のッピッキングが忙しい時期で残業までして帰ってくる、そして夜になったらバーに仕事にいってしまう真面目のカイト。
まじめに働いてくれているのは私を安心させてくれる為だってわかってる。
でも
この頃カイトとたわいもない会話もしていない・・・
何時もこんな感じで帰ってくるからしかたないけれど・・・
これってテレビで観た…
「『擦れ違い生活』というものなんじゃないかしら・・・」
新たな不安が込み上げてきたのを知らずにカイトは行き日まで書いて眠っている…
「カイトの…馬鹿…」
会話してくれない唇にキスを落とす。
無意識にカイトは幸せそうな顔をすると会話がなくてもなんだか心が温かくなってく・・・
キスを落とす時でさえドキドキするほどだけど
その事を眠りのなかの小さな王子は気づかずに眠っている。

カイトが来る前のゴミ邸になっているのをすこしでもカイトが来て綺麗にしてくれたように私なりに片付けてみるか。

けれど翌日カイトが愕然とするほど部屋がなおさら散らかってしまったのは言うまでもない・・・




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2012/08/09 (Thu)
「僕働くことになったよ!すずさん!」


仕事から帰ってくると、しばらく真一郎さんのところでお世話になると出ていったカイトは玄関にいつものように出迎えてくれていて、開口一番の言葉がその報告だった。
あまりの突然の事に私は驚く。
「真一郎さんに紹介してもらったんだー!」
「え…そうなの?どこで働くの?というか家の事はどうするの?」


真一郎さんのつてで仕事を紹介してくれるなら安心だけど、冷静に考えていれば今考えても仕方ないことで、悪い事言ったか持って反省なんかしてたんだけど…その言葉を本気に悩んで仕事を取ってくるとは侮れない子だ。

「もしかして、オカマバーとかじゃないでしょうね!?あんた未成年だから働いたら犯罪よっ!」
「う、ううん…真一郎さんの経営する通信会社のアルバイトだよ」

最初の言葉のつっかかりが気になるが、真一郎さん関連だから目をつぶろう。

「アルバイトいいんじゃない?カイトも少しは仕事の大変さ、社会勉強も必要だしさ」
「うん。年収六百万は行かないと思うけど、がんばって働いて、不安をなくしてみせるよ!」

ギュッと手を握って目をキラキラさせて見つめ合う。
カイトの意気込みに感動して涙が出ちゃいそうになる。
私の為に頑張ってくれるなんて…なんてかわいいのっ!なんて純粋なの!カイトに気持ちがとてもうれしかった。

「そして安心して子供をつくろうねっ」
「うん・・・うん?」

子作りのためにしごとをするってこと?
それはそうなんだけど・・・なんだかなんだか

「不純の動機じゃないの!カイトのばかっ!」
恥ずかしさと、本心がそれかっ!と思う事が同時に手が出てしまいカイトの頬をひっぱたいてしまった。

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2012/07/20 (Fri)
「どーしたカイト君?すずさんにやられたのかい?」
真一郎さんは僕を見るなり驚きの顔で出迎えてくれた。
なぜなら、
頭には包帯がぐるぐる、絆創膏が痛々しい僕の姿におどろかないわけはない。
僕は、真一郎さんの心配してくれる優しさに涙をためてしまう。
「すずさんの怒りが収まるまでいそうろうさせてくださーいぃ!」
ひしっと、真一郎さんのたくましい胸板にダイブした。

ケンカの理由を話すと真一郎さんは顔いっぱいに空気を膨らませて耐えきれずに吹いた。

「あーーーーっははあはははははははははは!」

真一郎さんはお腹を抱えて大爆笑している。
もう、ごろごろごろと床まで転げまわるほどに・・・

「真一郎さん・・僕真剣に困ってるんですよ、破局の危機ですよ!?そんなに笑わなくたって…」
「笑わずにいられないよーーーーもー君たちの恋愛かわいい~~~~~~~」
可愛いから爆笑ってどういう事だ・・・
真一郎さんの笑いのツボが分からなくて僕は困惑する

「すずさんに答えが出るまで帰ってくるなって言われてるんです・・・・・」
「それまで俺のところに居候してくれるんだ。じゃあ、答え見つからなければいいなぁー」
「もう!真一郎さんのいじわるっつ!真一郎さんにしか頼れないのに・・・」
冗談だってわかるでも、本気で困っているからそう甘えてしまう。
「頼ってもらえるのはうれしいけど、答えはカイト君自分で考えたほうがいいって言うより・・・
すずさんにもその答えが分かってないと思うね、だから、不安なんだ」
分からないから不安…
未来が分からないけれど想像すると不安の事が多い。
金銭を現実に未来を考えると現実に近い未来が不安に終える事がある。
現実にお金を稼いでがんばってるのはすずさん。
だけど、すずさんひとりで僕も養ってるのは大変だ有り難く思う。
でも、将来すずさんと子供をつくって、今よりも幸せになるにはお金が足りなくなる。
それは、幸せになれない未来につながる事なんじゃ…

今さらになって、すずさんが不安になってる事を思い知った。
「年収六百万稼いでないと結婚不安ってテレビでやってた・・・僕も六百万稼げたら不安にさせないで済むのかな…」
と僕はつぶやいた。
「サーそれはどうだろう・・・」
真一郎さんはどこか遠い目をしてそれからしばらくだまっていたけれど、
「でも結局…女性を安心させるのはなんだかんだ言ったってお金だからね」

「愛があれば幸せだと思ってたけど・・・・違うのかな…現実は・・」
「まあ、僕たちホストは愛や優しさをうりにしてお金をもらってるけどね」
肩をすくめて溜息を真一郎さんは吐く。
そんな真一郎さんに白い目を僕は無意識に向けていた、そんな僕にいたずらっ子のようににやりとわらって
「だったら、その現実をつなげるのが今のカイト君の出来ることだよ。未来の為にちょっと、稼いでみるかい?
すずさんへの不安やあいをつなぐためにさ」
真一郎さんの言葉は応援と適切なアドバイスと説得力があった。
「稼いでみます!すずさんの愛をつなぐ為に!」
「でさ。まず僕のお店のアルバイトもやってほしんだ―だめかな?すずさんには僕から言っとくからさー」
「・・・・・・ほんとはそれが狙いですか?」
「てへ❤ぺろ」


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2012/07/19 (Thu)
テレビで婚活がテーマの特集をカイトのおいしいおかずを食べながら観ていた。
『年収六百万の男がなかなかいないのが問題よねー』
『そういう男性じゃないと安心して結婚できないよね!』
『なかなか年収六百万以上稼ぐ男性がいないのも現実だから彼女たちは結婚できないと言う』
私はじっとテレビを見て考える。
そんな私の真剣そうにテレビを観ている様子を見てカイトは
「すずさんには僕がいるから婚活なんてかんけいないよね?」
そう、6歳違いの現在17歳のカイトが私の恋人。
去年のクリスマスにめでたく両想いになった、現在ひもの恋人。
ヒモ…
それは、彼女が彼を養う状態の事。
家事を全くできない私にとって彼は大天使さまだ。
ずぼらな私の世話をかいがいしくしてくれる。
その分彼にもお小遣いをあげていて、いまや生活費も管理してもらっている。
一人分の生活で満足していたから多少無駄つかいしてたりしたけれど、カイトの分もかんがえると、けっこうカツカツな生活だ。
けれどそれが幸せのあかしだとも思ってる。
今の状態に不満はないけれど、もし、なにかの手違い…
いえいえい、カイトが18歳になるまでそう言う事はしちゃいけないと思っているけれど、何かのきっかけで妊娠しなくちゃいけない状態になって、収入がなくなる状態になったらどうしようとおもう。
出産費も高いって聞くし・・・
そうなるとカイトに働いてもらわなくちゃならない・・・
「ねえカイト・・・あんた外に出て働く気がある?」
不安に思ったらふいに言葉に出てしまった。
「え…?」
「え…?って考えてなかったの?
まあ、今は考えてなくても良いけれどそれは、私が仕事が出来なくなった時の対策の一つだから…」
「僕・・中卒で学歴ないから…働けるところない・・・」
カイトはしょぼーんとして自分の情けなさに涙をためていた。
気づ付きやすい年頃だし、一般の同い年比較しないわけでもないと言う事をよくわかってるのに、そう聞いた私のばか!
「うん…そう、よね。私が稼いであんたが家の事やってもらえればいいと今も私思ってるわ」
「僕もそう思ってた・・・ずっと、主夫していたい」
「主夫ね…でも私に稼ぎがなくなったら大変じゃない」
彼はまだ17歳でまだまだ将来があると言うのに私の為に主夫でいてくれると言うのはうれしいけれど、男としてその考えはどうなんだろうと思うと私はイラっと来た。
「カイト…中卒で自分を卑下するなら、今からでも勉強して放送大学でもいいから学歴を取ればいいだけの事じゃない。家事だけって暇でしょう?その暇を見つけて勉強したら?」
「でもかじって結構大変なんだよ、すずさんすぐゴミの家にする…し」
私はキッと睨んで口を閉ざさせた。
「そ、それに!もし子供が出来たとしても僕が責任を持って面倒みるし!」
その言葉は私のほんとに言いたかった事に的を射ていた。
妊娠でもしたら稼ぎがない事が私の不安だったからだ。

「それは父親はあんたになるんだからあたりまえでしょう!?」
「うん!あたりまえだね!えへへ」
その言葉は裏を返せば、子作り・・・sexしなくては現実にならない。
あなたとしかしないって言ってるようなもの・・・
まだキスしかしてないし
その、いざそういう事をするんだと言う事を考えると無意識に顔が赤くなった。
だって、そのお相手が目の前にいるんだもん!
って・・・
「そーじゃなくて!そうでもあるけど!」
「そっか、そうだよね、妊娠したら十か月の間の稼ぎの事考えなきゃだよね!」

「そうよ、そうなったときどうするつもり?」

「大丈夫だよ!その時は!・・・」
異様にカイトは自信満々だ。
「どーにかなるさっていうんじゃないでしょうね?」
「そんな考えなしの事いわないよ!」
「そうよね!それで、そうするつもり?」

「眞一郎さんのところにいってオカマバーで働かせてもらうから!!」
・・・・一瞬私の頭は真っ白になった。それに追い打ちをかけるように
「光さんが僕はけっこういけるっていってた!ナンバーワンになって稼いでみせるよ!」


それはそれで・・・・・

「大問題でしょうがあああ!!」
あまりの発言に頭に血が上りいつの間にか、カイトにバックドロップをきめていた。

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2012/05/24 (Thu)
 
その大陸には竜がいた。
 
 
人の何倍も大きな蜥蜴のような姿の巨体。

 
輝く固いく鱗を持ってあらゆる攻撃から身を守り、鋭い爪と牙はあらゆるモノを切り裂く。
 
しかも人より長く生き、知識を持っていた。
 
そして稀に人の前現れに災害を知らせる。
 
優しき幻の神獣であった。
 
 人々にとって、恐れ敬う神のごとき存在でもあり、東の大陸では、神として守護神として、その存在に畏怖と敬意を持っていた。
 
けれど

その竜は西からやって来た勇者に滅ぼされてしまった。

 東の大陸に神は消え人が支配する
 

竜の信仰がなくなった闇の時代になってしまった。
 
感謝、敬意、尊敬、信頼、繋がりが消えかけていた…
 

竜が治めていた美しき世界をこんな世にした
 

「あの勇者だけは
 
 許さない…
 
 我らが女王を奪い
 
竜族を滅ぼした人間だけは…」
 
輝く長い赤い髪を怒りにわなめかせ、竜の証の金色の瞳を怒りにきらめかす
人の姿をした竜のミシェルはそう誓いをたて
勇者のいるだろう西の大陸に旅立った。



 この世は強いものが支配する世界。

 竜がいなくなったこの大陸でも同じこと、金持ちが力を奮う。
 
力強いものが人々を従わせる
 
それは、たいてい恐怖や脅し、力弱きものは力強気ものに従うのが習いだが…
 

酒樽が宙をとび地に落ち酒が床に飛び散った。
 

「こんなまずい酒に金をはらえるかっバカヤロウがっ!!」
 

スキンヘッドでごつい体つき

左目には眼帯を付けた中年が酒場の女将に怒鳴り付ける。
 

その女将を守るように十歳くらいの男の子が両手を広げキッと男を睨む。
 
「乱暴は止めてよ!悪いことばかりしてると竜にたべられちゃうんだからねっ」
真剣に男の子にナラズモノの男は業とキョトンとした顔をして、馬鹿にしたよいにガサツな笑い声を上げる。
 
「竜なんか、もうこの世に存在しないんだよ。なにせ俺の親父が竜をほろぼしたのだからなぁ」

「それは…本当か?」

そう呟いたように聞いてきたのは、

ルビーのように輝く長髪の青年だ。

俯いているせいで髪が顔を半分覆っているが、ちらりと覗く瞳は憎しみがこもる金色だ。

つづく


☆気まぐれ更新なので続きが気になったらカテゴリーから読んでもらえるとうれしいです」

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2011/07/30 (Sat)
 「すずちゃん、カイト君貸してくれない?」

「だめっ!未成年者が働いて良いお店じゃないでしょ?」

真一郎さんがカイトの料理の上手さに目を付けてスカウトしにくきた。

「店じゃなくて俺ん家で子供達と俺のために作るバイトだよ良いだろ?カイト君?」

カイトは少し考えて
「僕の椅子の用意ととすずさんが僕の向かいの席なら良いですよ」
と答えた。

「…っカイト!」

あの訳の分からない告白を本気にしていわなくても良いじゃない!

ときたま、そんな意地悪するようになった。

真一郎さんは訳が分からなくて首を傾げるが

「ん?いいよ。じゃあ持っていくよー
この椅子がある限り家にきてくれるってことだろ~?」

真一郎さんは本気で椅子抱えて出ていこうとする。

「待って!分かったから椅子置いていって!」

私は慌てて椅子をもとに戻した。


「私が仕事中ならカイトがご飯作りにいってもいいわ。
でも、帰ってきたら私にご飯作ってね
ずっと一緒にカイトとご飯食べる一生の約束だもん!」

子供みたいな言い訳だ。
「すずさん…」
その言葉がとても嬉しいカイトはぽーとして喜んでいる。

「すずチャン…かわいいっ!」
おもわずぎゅっと抱きしめられた。
「真一郎さん…」
カイトは真一郎さんを睨む。

「ごめんごめん!そうだね。めでたく恋人同士になったふたりの邪魔しちゃいけないね。」

真一郎さんはふと寂しげに微笑んで

「大切な人と向かい合わせられるって幸せな事だよ。
俺はもう叶わないけどね…」

姉ちゃんは真一郎さんに子供達をのこして逝ってしまった。
「いつでも良いから遊びにきてくれよ

「うん。明日にも遊びにいくわ」

「そうしてくれると助かるよ
光が毎日藍目当てで来られて気が気でないからさ」

光さんは藍チャンになぜだか運命感じている。
危険は無いと思うけど父として心配なのかも。

「それにしてもどうして向かい合わせなんだ?」

真一郎さんの家で約束通りご飯を作りに遊びにきたら、案の定ヒカルさんもいた。
カイトと向かい合わせに座って私の隣は蓮くん
カイトの隣に藍ちゃんそのまた隣にヒカルさん
真一郎さんはお仕事中だ。

真一郎さんのダイニングテーブルは大きい8人座れる。
椅子も高そうな家具だ。

「隣同士ならもっと近くじゃん。いろいろできるじゃん」

「あんたが真ん前だったらその顔一発なぐって黙らせてやれるのに…」

子供の前でなんて下品な…

「そうかその距離はまだまだなのかー
大きな隔たりだなカイト」
「いろいろって~?」
「まだまだー?」
双子たちが復唱する。
カイトは苦笑いで応えない。
カイトもヒカルさんの上手く伏せた意味深口調に引いている。

「うーん~藍ちゃん好き好きが出来ないってこと~」
突然ぎゅっと藍ちゃんを抱きしめるヒカルさん。

「いやーっ!」

藍ちゃんは見事にヒカルさんの顎に頭突きした。

「ナイス!藍ちゃん」
グッジョブとグーをだして誉めてあげた。
ヒカルさん以外がそのポーズをして笑い合った。


確かに

ヒカルさんの言うとおりだけど

軽いキス以上はまだ怖い
あの時のトラウマだ。
関係は崩れる事はないけど…

今はこの距離が幸せなのよ。

小さなテーブルに向かい合わせの椅子の位置がね。

チャンと向き合える恋愛したいから…。



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2011/07/29 (Fri)
 「ゴメンナサイっ!」
まだカイトは謝っている。
謝りまくられるとイライラする。
「もうそれは良いって行ってるでしょ!!」
そのイライラをテーブルをバンと叩いて解消させるとともにカイトを恐縮させた。
その様子をみて押し倒して私を泣かしたことの仕返しができて胸がすいた。

だから許す。

でも小さくカイトはゴメンナサイと小さく呟いた。

その様子がカワイくなってついヨシヨシと向かいに座って小さくなったカイトの頭に手を伸ばしなでる。
「すずさん…」
ぱぁと嬉しそうに微笑む。

「お帰り…カイト」
「ただいま…すずさん」

「何だか逆ね。いつも私がただいま言うのに」
「そうだね。初めてだ」

見つめ合って笑いあう。

いつもと同じだ。

向かいの椅子に座って笑い会う。

だけどチャンとハッキリさせなくちゃいけない。


「カイト…
あのね…あの…」

言わなくちゃハッキリでも恥ずかしい。
私もカイトが好きよって…

まだ言ってないから
でも言えない
恥ずかしい
ドキドキする

カイトは勢いに任せて告白してあんなことしてくれちゃったりしたけど
こんな何気ない会話から言うのは勇気いる。
あの時よりパニクってる。
だから出た言葉は。

「一生その椅子に座って私にご飯を作りなさい!いいわね!?」


「は?」

意味が私も解らなくてその台詞にも恥ずかしくて顔が熱くなって俯いてしまった…

ずっとそばにいてほしいそれだけで言えば良かったのに…

「すずさんそれ難題だよ?」
クククと笑いをかみ殺してカイトが言った。
「でもどんな難題でもすずさんのためならがんばるよ。だってすずさんの事好きだから」

私を見つめながら言ってくれた。

「カイト…ありがと…私も好きよ…」

向かいに座るカイトに私からキスをした。
恋人同士というあかしに…


 

 

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2011/07/28 (Thu)
 「僕も男だよ…僕のことも見てよ…」

カイトは私を押し倒してキスをした…

カイトは私のことをずっと想っていたらしい…

そのことはとても嬉しかった…

でも
怖がった…

好き同士になるのも初めてだし

押し倒されるのも初めてだ。

必死な思いで私への想いを隠して爆発させたカイトが怖がった…

なにをされるのか
怖がった

本当突然なことで
パニックになって…
私は泣いてしまった…
カイトの前でなんかで泣きたくないのに…





カイトがキスを止めた瞬間頬をひっぱたいた。

「カイト…変よ…変だよ」
カイトは、はっとしたようだった。

そして謝りながら家を飛び出した。


カイトが出て行ってしばらく私はそのまま床から起きあがらず仰向けでぼーっとしていた。

カイトが出て行った開けっ放しにした扉をただ見つめる。

「カイト…」

出て行っちゃった…
幸せだったのに…

約束破りやがって…

でも…



ドキドキする

カイトも私のこと好きだったなんて…

キスされた唇をそっと触れる。

涙がまた出てきた。
嬉しいけど
寂しい


カイト出ていってしまったから

帰ってこないかもしれない…

帰ってきたらどう接すればいい?

私は意地っ張りだから今まで通りな関係でいられなくて自ら突っぱねてしまうかも…

好きなのに…

ずっと一緒にいられると思ったのに…

カイトは帰ってこない…

いつ帰ってきても良いように鍵は開けてある。

貴重品はすべてバックに入れて仕事に行く。

あれから3日…

確かトレーナー一枚でこの寒い季節に出て行った。

「…もしかして死んでたりして…」

拾った時のこと思い出し拾われなかったときのカイト運命を想像するとゾクッと悪寒がした。

そんな妄想を振り払いテーブルに突っ伏した。

そして正面のカイトの椅子に目をやる。

いつもなら
向かい側に座っているカイト…

美味しいご飯を作ってくれてそのご飯を食べるのを楽しみだった。

向かい合って楽しい会話したり意見交わしたり楽しかった。

なのに向かいの椅子に彼はいない…

座ってない…

寂しい…

家に帰ってもつまんない…


だったらもう一つの憩いの場…
カイトがなにか勘違いしたホストクラブでオカマバーの店に飲みに行こう…


あの日のカイトの憤りの理由が解るかもしれない
…と思ったけど…
まさか、カイトがその店で働いているとは思わなかった。




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2011/07/27 (Wed)
  狭いアパートに狭いテーブルに向かい合わせでカイトが作ったご飯を食べながら幸せだとおもった。

向かいに座る十六歳の少年カイトは半年前に拾った。

雨に打たれながら暗く悲しい顔した少年が哀れで子犬を拾う感覚だった。

拾った少年が子犬のように純粋な子でよかったと改めて思う。

家のことよくやってくれるし

ご飯も美味しい。

初めてあったときから気兼ねいらない感じが気に入った。

彼がいるから安心する

ひとりでコンビニ弁当買って食べてテレビ観てるより

二人で向かいあって美味しい手作りご飯たべてテレビ見たり会話するのが楽しかった。

そんな毎日になったのがうれしかった。


「おかえりーすずさん!」
満面の笑顔でカイトが玄関まで迎えてくれる。

「ただいまカイト」
私もつられて笑顔で答える。
家に帰って来たって感じがしてほっとする。

仕事から帰って来るとカイトがご飯を作って待っていてくれるのが何だか嬉しくてこそばゆい。


新婚ってこんな感じかしら?

と思ったら
ぷっと笑いが吹き出した。

「なになに?なんかおもしろいことあったの?」
興味津々という感じで聞いてくる。

「何でもないって!」
私はまだ笑いが収まらないのか含み笑いで否定する。

このことをカイトに言いたくない。

正直に言ってそのまま受け止めると笑い話だけど

その関係を一言で現せば

ヒモじゃん

仕事する
彼女に家事する
彼氏

イコール

ヒモ…

でも恋人同士じゃないからその関係は成り立たないはずだった…


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2011/06/20 (Mon)
 ★☆★
 
すずさんは

女だけど
男より強い

空手柔道三段だし

男気があって

さっぱりした
性格

そんなすずさんの唯一弱点は雷だった

★☆★

ゴロゴロ…
ピカと一瞬あたりが輝き
3数えて

ガラガラ
ドカンと雷の音が続いた

「キャー!」

と音にも負けない悲鳴が玄関で響いた

「おかえりーすずさんっ…」

いきなりひしっと抱きしめられた。


「す、すずさんっ!? どうしたの!?」

「雷が…怖いの…よっ!
何か文句あんの!?」逆ギレされた。

文句ないけどびしょ濡れの服で抱きつかれているのはちょっと…

濡れた服からすずさんの体温感じる…

僕の胸の高鳴りはゴロゴロといつ大きな音になるかわからないから

内心ヤバいと思う

「あの…すずさんお風呂わかしてあるからはいったほうがいいよ」

僕は抱きついているすずさんの体を少しはがした。


「バっカじゃないカイト!感電死するじゃない!」

と言いながら
くしゃみする。

「じゃあ雷遠くなってから入るとか」 

「うんそうする」
子供のようにコクリと頷く。
でもまだ僕の服をキュッと握ったまま、玄関にあがる


そんなすずさんがカワイい愛おしく思う
でも

約束で男女のなかになったら僕はここから追い出されてしまう。

だから

この心は隠さなくちゃ…

 ★☆★

カイトは心配してくれているのに
つい甘えて文句を言ってしまう。

2ヶ月まえに同居したばかりで弟のようにおもってたのに、

カイトが男っぽい…と

ドキドキしてしまった…

でも甲斐甲斐しくタオルとか着替えとか持ってきてくれるところはお母さんみたいだわ…

本当
いい子拾った

でも
最近はそれだけじゃない

この頃
男らしなったと思う…
私より大きい手長くしなやかな指とか…
ふとしたとき
そう思って…
いつの間にかだんだんもっと意識して…
だから最近は真一郎さんの店で酒によってそんな心を暴露してしまうとい失態をしてしまった。


気まずくて仕事終わればすぐ家に帰るようになった。

意識していても
遠慮なく甘えれる存在のカイト。

そんな関係が大切だから
男女の関係になるのが怖い

家族のような遠慮ない関係を保っていたいと思う。

そんなこと
つらつら思ってたらまた雷がピカっとひかった。

☆★☆

ドーンと
雷が落ちた。

「キャーイャー!」

すずさんは後ろからドンと抱きついてきた。

しかもブレイカーが落ちて停電した。


当たりは真っ暗になる

でも

かなり雷が近いのか雷の光と音が交差して僕も少しおののいた。
けど、すずさんはかなり震えているのを感じた。

「すずさん?大丈夫」

「大丈夫じゃないかも…」

キュッと背中のシャツの布を震えながらつかんでる感じがとてもかわいく感じて
つい抱きしめた…

あっ
ヤバい

怒られる

空手チョップ落とされると思って体を引いた。

けれどすずさんの方から体を引き寄せる。


☆★☆


「雷なり終わるまでこうしていて…」

自分でも女みたいなこと言ってるて思うと恥ずかしい。



二人そのまま
床に座って私はカイトに抱きしめてもらった。

どっちにドキドキしてるんだろう…

雷?カイトに?

でもこのドキドキは幸せのドキドキということだけはわかった

「カイトも…」

「なに…?すずさん」
なんだかほんとに恋人同士みたい…

「何でもない」

同じ気持ちか聞いて同じ気持ちでも
関係が崩れるだけだと思うと聞けなかった

でも…カイトは素直だった。

「何だか恋人どうしだね」

☆★☆

しまった!
つい口からこぼれてしまった…

気まずい沈黙の間雷なってくれればいいのに…

雷は遠くへ行ってしまったようだ。


でも、しばらく黙って僕たちは寄り添っていた。

☆★☆

「雷が怖いのは昔小さいころ空がもう雷が落ちそうで野良犬に襲われそうになって逃げてたら、その野良犬に雷が落ちたのよ」

その事を思い出して身ぶるいをする。

「それはショッキングな…トラウマになりますね」

カイトは青ざめて感想を述べた。

「良かったんだか悪かったんだかよくわからなくて
とにかく怖いというのがうえつけられてるのね」

でも…

数時間前のあの感覚を思い出せば

温かい気持ちになって雷が少し怖くなくなった。

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2011/06/14 (Tue)

「痛い!腕はなしなさいってばっ!!」

ばぁしっと空手三段のチョップを手首に食らった。

「うっ!う~~…ご…ごめんなさい……」
すずさんを引っ張って、しばらく走った。
すずさんが僕の掴んでる手にチョップを食らわさなかったら、そのままどこへ行くとも知れず、逃避行していただろう。

辺りは、駅の商店街から離れ、間隔をあけた外灯だけが明るい橋の上だった。
そのうちの一本が頭上に光りを降らせている。
「あんた、なんでバーにいたのよ!それに、何その格好!?」
そうだ、女装したまま出てきちゃったんだ。

「あら、私~どうしてこんなところに?カイトじゃ……ないわよカイコよ!」
動揺の余り最後の悪足掻きでオカマのふりをする。

「頭にチョップほしいの?」

すずさんは僕のこと思いっきり睨んだまま言う。本気だった。

「ご、ごめんなさい……」
僕は目を合わせることはできず、すずさんに対して謝る言葉しか出てこない…

「ごめんなさいは、もういいわ。それより、どうして、バーにいたのよ?」
一昨日すずさんの家をでて行ったからの後のことをすべて告白した。

「ふ~ん……
で、私への誤解は解けた?」

「うん…べつにホストと付き合ってなかったんだね……
嫉妬してあんなことして、本当にごめんなさい!!」
頭を下げて謝った。

本当に謝ることしかできなかった。
とにかく、すずさんには謝りたい。
謝って済む問題じゃないかも知れないけど、そのままよりは良かったから…
「でも…もう……すずさんと暮らせないよね……?」
「約束やぶったしね……」
容赦なく怒ってる口調ですずさんは顔をそむけて僕の方を見ない。

「そんなことする子じゃないって思ってたのに……」
怒っていて当たり前だ。
無理矢理キスして…それ以上の事もしていたかも知れないのだ。

伏せていた目をすずさんの視線に真摯に合わせ、
「だけど、これだけは言わせて、本当にぼくはすずさんが好き…。
けして不純な思いでしたことじゃない」
ごめんと謝って起きながら、反省してるような言葉じゃないなと自分でも思った。

そんな自分はもう、すずさんとは暮せないだろう。
つらいけど、もうすずさんと会わない方がいいのかもしれない…
背を向けて僕はそのまま逃げ出そうとした。
その後ろから叫ぶようにすずさんの声が僕を引き止めた。

「また逃げるつもり!?あんたに居場所はないんでしょ?」
「し、真一郎さんの所……」
すずさんは僕にスタスタと近づいて、思いっきりチョップをした。
とっても痛くて、座り込み頭を押さえた。

「真一郎さんには謝って住ませてもらえて、私のところには住ませてもらえない思ってるの?」
すずさんは仁王立ちで腰に手を当てて怒った風に僕を睨んでそう言った。


「え?それって……」

僕はおずおずとすずさんのほうを見る。


「いいわよ、
また一緒に住もう……家に帰ってカイトの作った御飯が食べたいもん。
真一郎さんにあんたを渡すのもったいない…」

すすさんは手を差しのべ、顔を赤くして言葉を続ける。

「あんたは私の……ヒモなんだから……ね?」
すずさんの方から僕の手をとって立たせてくれた。

ヒモ?奴隷じゃなくって?
それって、もしかして……

「それって……こっ…恋人ってことでいいの?」
困惑と期待を込めた顔ですずさんを見つめる。

すずさんは何も言わなかった。ただ顔を真っ赤にして微笑んでいる。

恥ずかしがりやだから、それ以上を言うのは恥ずかしいのだろう。

差し伸べられた手をぎゅっと強く握ってくれたことが返事なのだ。

僕はとても幸せで涙が止まらなかった。

「男の子なんだから、泣かないのって……今は女の子?」
「ううん!男の子っ!!」
ついムキになって反論してしまった。

「そのカッコで言われても説得力なーい~ってあははははは!本当に面白いよカイトって」

すずさんは大声で笑い出した。

僕もおかしくて何より嬉しくて一緒に笑った。
そして握ったこの手を僕は愛しく握り返した。
僕は奴隷からヒモという立場を手に入れた。

手を握りながらの幸せな帰り道の途中、すずさんは僕に言った。

「あんたってさ~」
「なに?」
「ヒモっていうよりかストーカーよね……」
「え!?」

おわり
 

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2011/06/13 (Mon)
 「なんか、このお店に関係あるみたい。私のこと尾行して、この店にい たのが気にくわなかったんじゃないの?」

確かにそうだ……
あの時はすずさんが悪いって思ってた。
ヒカルさんが恋人だと思ってたから……
今はそんな関係じゃないって分かって、僕が一方的に悪いんだって反省している。


「私、カイトのこと、ないがしろにした覚えないんだけどなぁ…まあ…奴隷みたいに扱使っていたけど」
奴隷と未だ言う。
やっぱり奴隷程度なのだろうか?僕は……なんだか泣けてきた。

「奴隷?それはひどい例えだな、ヒモじゃないの?」
「ヒモは恋人同士でしょう?私達まだそんな関係じゃなかったもん」
「まだ?…すずちゃんがその気になればヒモになれたんじゃないの?」
「だって…恥ずかしいじゃない……相手の気持ちも分からないのに…… 
そ、それに、犯罪者になりたくないしっ」
「ああ、それは確かにね。でも数年たてばさ、そんなの関係なくなるよ?」

 犯罪がどうのという現実な問題っていったのは、前の言葉の本音を知られたくなくてわざと否定する為に言ったように感じた。

『相手の気持ちも分からないのに……』

とすずさんは言った。
それって、すずさんも僕のこと好きって事なんだろうか?

そこのところをもっとよく知りたいと聞きたいと思ってたところへ、
「カイコちゃんっサンドイッチまだ?出来たら持ってきて」
と真一郎さんが僕を呼ぶ。

「あ、はい、ただいま持っていきます」
サンドイッチはもう出来上がっていた。
けれど、サンドイッチをもって行くのを躊躇う。
いくら女装してるからって、バレたりしないだろうか?
僕は出来上がったサンドイッチを持ちながら落ち尽きなく不安でウロウロしていた。
そんな僕を真一郎さんはチラっとみて、グラスに入ったお酒をグビッと飲みカクッと頭を俯かせたと思うと、そっとすずさんの頬を両手で触れた。

そして、男性独特の艶っぽい雰囲気ですずさんに微笑みかけた。
「すずちゃんて…恥ずかしがり屋さんだね。そう言うところ妻に似てる……」


すずさんは、体を引いて戸惑っている。
「そ、そうかな?わたしも、ねーちゃんに似てきてるって思う時もあるけど……」
ジッと見つめたまま真一郎さんは何も言わなくなった。

すずさんも見つめられてそのまま固まっている。

初恋の人でまだ、すずさんは真一郎さんのことが好きなんだろうか?
ほのかに顔が赤い。
真一郎さんはジッと憂い気にすずさんを見つめて、だんだん顔を近づけている。

「真一郎さん酔ってる……の?」
「よってないよ?里利子…」
真一郎さんはお酒一杯で酔っていた。

すずさんはそのまま動かない。
いや、体を引いている分ソファーに寄り掛かっているが、倒れて、そのままじゃキス以上な事をしそうな雰囲気だった。

なんで!!?
いきなりそんなことを!?
れって本当に作戦?なんの!?

「い…いやだ…ちょっと、真一郎さんっ!」

そのままソファにすずさんと倒れ込もうとする。

「だめーーーーーーーーっ!!
すずさんは僕のなんだから!!!」

誰であろうとすすさんをとられるのはいやだ!

折角作ったサンドイッチも投げ捨てて、自分でいうのもなんだけど、人間業じゃない早さで、二人のそばに行き真一郎さんとを突き飛ばしてしまった。
ガシャーンっとテーブルとグラスがひっくり返る。

真一郎さんに怪我はないか心配するより、すずさんの腕をつかんでいた。

「行こう!!すずさん!」
「え!?カイト!?」
すずさんは何が起こったか分からない様子だったが、そのまま店を出た。

出ていく後ろで、真一郎さんの笑い声が聞こえた……

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2011/06/12 (Sun)
 「……ってなんで、女装しなくちゃいけないんですか?」

僕はヒカルさんに女装をさせられしまった。

自分でも誰だろうと思うほどに可愛く頭の左右にポニーテールをし(カツラ)、ピンクと黒と赤の色がおしゃれに配色されたゴスロリ系のメイド服(スカートが膝までで短くレースがひらひらついている)を着た女の子に仕立てられてしまっている。


「そのほうが、すずさんに会いやすいだろ?」

ヒカルさんは悪戯っぽい笑みで僕に微笑む。

「むしろ、会いづらいですよっ!」
「インパクトで許してもらおう作戦だ」

自分の作戦を曲げたくないヒカルさんはと題名までつけ宣言した。
「ばれたらすずさんのゲンコツが容赦なくディープインパクトしますよ!」
許してもらうどころか身の破滅だ。
その事に怯える僕を光さんはじろりと冷ややかな目でみる

「お前わがままなんだよ、直接会いたくない、でも会いたい、勇気のないお前に、変身という魔法をかけてやったんだぞ、ありがたく思え」
「うっ…」

僕は図星をつかれて言葉に詰まった。
ほんとに、僕は勇気が無い、わがまま者だ。

人に手助けしてもらわなければ、すずさんと仲を取り持てないと思ってるんだから…
でも、女装は勇気の魔法だろうか?

「おーいヒカル!ちょっときてくれー」

真一郎さんがヒカルさんを呼んだ。

「マスターがお呼びだ、ちょっと行ってくる」

ヒカルさんは素早く更衣室を出て、真一郎さんの元へ向かった。
こっそり、その様子を見てみると、真一郎さんはすずさんとの席から離れてカウンターのところで話をしている。
その話が終わると、ヒカルさんは更衣室に戻ってきた。

「マスターからの命令で用事が出来たから、帰る。じゃあな」

さっさっと貴重品をまとめると、そのまますぐ帰ろうとした。

「え!!キューピットになってくれるんじゃ……」
「キューピットは大天使さまの命令が一番なんだよ。それに……」
 
キュッと僕の鼻をつまんで、怪訝な顔をし、僕を睨んだ。

「おまえ、藍ちゃんと蓮くんおいてここまで来たんだって?
しっかりしたお子様とは言え、危ないだろうが!
今日は俺が二人の面倒見る事になったからお前の面倒はやっぱ、大天使さまにみてもらったほうがいいってことになったんだ」
「あっ…」

そうだった。
僕も双子が心配で早く帰ろうとしていたのに、すずさんが気になって今に至る。

「まぁ…俺は、愛しの藍ちゃんに会えるチャンス貰えたからお前に感謝するけどっ」

怪訝の顔を消して、今度はニマニマ笑いになっている。
まさか、ヒカルさんが好きなのは……

「ロリコン…」

藍ちゃんの名前を出すより先に思った事が口に出た。
ボコッとヒカルさんの拳が僕の頭にディープインパクトした。

「ま、とにかくマスターに任せておけば大丈夫だって」
真一郎さんはもとから僕に強力するって言ったけど……僕は複雑だった。
真のライバルは真一郎さんだ。

「心配すんなって、女装してるんだし、ちょっとやそっとじゃバレないだろう。うまくやれよっ」

と僕のお尻を叩いて、じゃあなと言い出ていってしまった。



厨房はバーカウンタの中にあって、二人の様子が良く分かった。
営業時間はまだなので、中には僕と真一郎さんとすずさん3人だけだった。
すずさんと、真一郎さんの会話が聞こえる。
真一郎さんは僕に気付くと、ウインクをした。

すずさんは、ぐぐっと両手を組んで背伸びをして下ろしてから、

「あ~あ~なんかお腹すいちゃった。どっかに食べにいかない?真一郎 
さん」
「ここで食べればいいよ。」
「え~?でも言っちゃナンだけど、ここのご飯まずいし…」
「大丈夫大丈夫、とっても腕の良い調理人やとったんだ」
「へ~じゃあ、食べてみたい。でも食欲あんまりないから軽いものがいいな~」
「カイコちゃん、サンドイッチでも作ってくれ」
「あ、はい!」

カイコちゃんというのは昨日、付けられた僕のオカマバーでの名前だ。

「カイコちゃん?」
「うん。まだ未成年だから、表には出さないんだけどね。とっても可愛い子なんだよ。」
「ふ~ん…、なんか…聞き覚えのある声だったわ…?」

僕はギクッとした。声を作るのを忘れてしまった。
ドキドキしながら作業にとり掛かる。
材料は揃っていたので、直ぐに出きるだろう。
その間に二人の話が聞こえてくる。

「藍ちゃんと蓮君もうすぐ誕生日よね?」


「ああ。クリスマスの日だよ。誕生日会するから、ぜひ来てくれよ。同棲している男の子…名前なんていったけ?」
わざと、真一郎さんは上手く僕の話題に持っていった。
「同棲じゃなくって同居!」
すかさず、すずさんは訂正をいれた。

「……それにカイト…帰ってくるかどうか……分からないし……」
すずさんの声は低く小さかった。
一昨日のことを思い出したのだろうか?

「どうして?」
真一郎さんは悩みでも愚痴でも何でも聞いてくれそうな寛大な優しさを醸し出す声で理由を聞く。
この優しい感じは生まれ持ってのモノだろうと僕は思う。
だから、僕は真一郎さんを信頼してすべてを話してしまった。
すずさんも心に溜まったことを聞いて欲しくて理由を言ってしまうかもしれない。

 すずさんは、なんと言おうか迷ってるのか、それとも言わないつもりなのか、黙ったままだった。

「もしかして、襲われたとか?」
真一郎さんは核心的なところをついた。
「……」
「顔赤いってことは、そうなんだね」
しばらく沈黙があったけど、すずさんの様子を僕に伝えるため、真一郎さんが解説する。

「でもっ!何もされてないわ。あの子のこと引っ叩いて止めさせたから…」
何もされてないと言っておいて、止めさせたと言うのは、かなり動揺してるんだろうと思った。
 

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2011/06/06 (Mon)
 「気になるんだ?二人が」

ヒカルさんは、また、悪巧みを成功させようとしてる子供みたいににまにま笑い、

「なら、あの中に入っていけばいいのに」
「できないんですよ…すずさんをおこらせちゃったから……」
ヒカルさんさんから顔を背けてすずさんと真一郎さんの様子を見つめる僕。

その僕の後ろからヒカルさんは、僕の耳元に口を近づけて、

「キスしたとか?」

ぼくは図星をつかれてビクッと肩を震わせた。

「ど、どうして……わかったんですか……?」

どうしてバレたんだろう?
その反応を見て、ヒカルさんのほうが驚いたようだった。

「オカマの感。って、ほんとに?本当にあのすずさんにキスしたの?」

「こ、声が大きいですよ!」
声を殺して注意をする。

「 ごめんごめん、じゃあ、更衣室いこう…」

隠れて更衣室へ行くとき真一郎さんはちらっとこちらを見て、ウインクをした。
その合図はいったい何の合図なんだろう…?とにかく、すずさんには気付かれずに移動できた。

「へぇ~あのすずさんにキスしたなんて、武勇伝だぞ!」

武勇伝?どうしてそうなるんだろうか?

「おれなんか、すずさんにキス迫ったら、金的攻撃されて、オカマじゃなくてニューハーフにされるところだったんだぞ!」

「それこそ、すずさんの武勇伝ですよ……」

金的攻撃……そんな恐ろしいことをすずさんなら躊躇わずにやるだろう。
僕は青ざめていた。平手打ちで済んで良かった…
ヒカルさんは興奮ぎみに目を輝かせて言う。
一矢報いたと言うような感じなんだろうか?

「……実はヒカルさんとの関係を誤解して……嫉妬して…キスしちゃったんですけど…」

言うのが恥ずかしかったが、もしかしたら、今のヒカルさんなら、僕の味方になってくれるかも知れないと期待があった。



「そのあとは…?それ以上やっちゃわなかったのか?」

そんな下品な言葉を使うのはちょっと気が引けたので、しばらく、黙ってから言葉を続けた。

「すずさんに打たれて…冷静になって、とんでもないことしちゃった事気付いて逃げてきちゃったんです……」

恥ずかしさと申し訳なさで俯いて白状した。

「つまんね~そんなんで逃げたのか?」

ヒカルさんは呆れたようだった。

「つまんないことですか?」
「謝ればすむことじゃん、そんなこと」
「僕とすずさんにとってはそんなことじゃないんです!だって、約束やぶっちゃったわけだし…そういうことしないって約束…」
「約束はやぶるためにあるもんなんだぞ」

けろりとそんなことを言う。
「そう言う不実なことは嫌いです。」

僕はヒカルさんを睨んで言う。そんな不実なことをいうなんて、軽蔑してしまう。

「ホストだしね、仕方ないと思ってくれ。」

ホストだと仕方がないのか?真一郎さんもそうなのかな?


「ま、事情はわかった。本当に鈴さんのことが好きなんだなあ……たんなる若手のヒモだとおもってたけど…」
「むしろ、ヒモになれたら…」
そう小声でつぶやいた。

ヒモは一応恋人どうしに使う言葉だと、僕は思っている。
まだ警戒し、フテクしてる僕の頬をぎゅっとつねって、笑顔の形にし、

「そーゆー顔するなって!お前の気持ちはわかったし、味方してやるか 
らさ、元気出せ?」

ヒカルさんは意地悪だと思ってたけど(意地悪は変わらないけど)兄貴分といった雰囲気に僕は一気にヒカルさんへの警戒心が解けた。

「ホォンチョニ!?」
「恋のキューピットになってやる。
だって、すずさんはお前のこと……」
「へ?」
「なんでもないよ!それより、まずはあの二人の邪魔をする事だね」

ヒカルさんはキラリと目を光らせた。

本当はヒカルさんとすずさんの邪魔をするはずだったのに、ヒカルさんが僕の味方になって真一郎さんが恋敵になるとは全く考えてもいなかった…

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2011/06/05 (Sun)
  僕たちがもめている間にすずさんの隣に親し気に座って話している。
 僕のことを話してくれているのだろうか?

「あ~あ~先越されちゃったよ~。すずさんマスター好きだからな~マスター目当で来てるようなものだし…」

「え?すずさん…真一郎さんをスキ………?どういう事ですか?」

ヒカルさんは不敵ににんまり微笑むと説明してくれた。

「すずさんの初恋はマスターなんだよ」
「えええええ!!!っいててて!」

大声をあげる瞬間、僕の口を塞ぐではなく、鼻をつまんで制した。
なんか、この人ふつうの感覚が違う…

そういえば、すずさんの様子がちょっと、お淑やかに見える…照れてるような…
そんなすずさんを優しく見つめる真一郎さんは温かい感じがする……
 
「すずさんはマスターの奥さんそっくりだしね。そのうち、くついちゃうんじゃないかな?」

ヒカルさんは祝福するように言った。
……ヒカルさんの態度なんだか変だ。
自分の恋人なのにそんな風に言うなんて。

「ヒカルさん恋人じゃないんですか?」

その疑問を口に出していったら、ヒカルさんはハッとした表情をし、悪戯がばれちゃった子供のような感じで白状した。

「ウ~ン…そうみたいっていうか、どうして、オレとすずさんが恋人同士って事になったんだ?」

なぜだが、逆に質問された。
「だって…キスしてたし……?」
一昨日の行為を忘れたのだろうか?

「そんなことした覚えないぞ?」
「僕見たんです。あそこの応接の影で、すずさんとキスしてたじゃないですか!」


ヒカルさんは、は~んと、指を顎に当て理解したように頷いた。

「角度的にそう見えただけだろう?」

だが、納得できないここから見る真一郎さんとすずさんだって離れてみえる。
僕は疑いの目をすると、ヒカルさんはフッと微笑んで、

「それに…」
「え?」

突然、僕の顎を掴むとまじかに顔を近付けてきた!

「お前が見たのはきっと、こうしてるところを見たんだよ」
うわ!やっぱりキスするんじゃないか!っと思ったら。
どこからかもっていたのか、アイライナーを僕の目の上に素早く塗った。

「な…なに?」

衝撃的で意外な答えだった。

「すずさんパソコン疲れで目の上こすって、化粧が落ちちゃったのをなおしてあげたんだよ。すずさん化粧っけないから、おれが指導してあげてるのっ」

「でも、なんで紛らわしい顔の上げかたなんかするんですか?」


「女、お落とすテクニック、癖でそうやっちゃうんだよ。もしも、落ちたらラッキーじゃん?」
そういう、軽いノリがホストっぽかった。
そんな人にすずさんを奪われたくないと本気で思った。

でも、すべては僕の勘違いだったんだ…ヒカルさんは別に恋人じゃなかったんだし、キスもしてなかった…僕が嫉妬しただけ……はぁ…

だが…ライバルは灯台下暗し!

真一郎さんがライバルだったなんて!
二人を見るとなんか、すずさんが舞い上がってる様に見える……
真一郎さんは愛してるのは奥さんだけって言ってたから、すずさんの片思いなんだろうな……

そして新たな意外な三角関係が成立してしまった。

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2011/06/04 (Sat)
 窓から夕日の光が差し込んできていた。午後4時すぎだろうか?
僕がぐぐっと背伸びをする。双子たちも真似する。

「藍ちゃん蓮君は僕が寝てる間、なにしてたの?おとうさんは?」

仕事が終わった後、真一郎さんが家に送ってくれて、そのまま、ふとんに倒れてしまったので双子達が何をしていたか、真一郎さんはどうしたのか気になった。

「幼稚園いってきた!帰ってきてから、パパはすずちゃんのところにいっちゃった!」


「すずさんのところに!?」

真一郎さんすずさんと僕の仲を取りなしに行ってくれたのだろうか?
きっとそうだ!これですずさんのところに帰れる!
とってもうれしいけど…夢を思い出して、不安になった。
本当に帰れるのだろうか?
すずさんは許してくれるんだろうか…?
藍ちゃんはもう一つ思い出したというのように人さし指をたて、

「もし、許してもらえなかったら、うちで暮らしていいって!」
「よかったね~!」
「……」

きゃっきゃと本当に嬉しそうに言う双子たち。
いっきに不安がます……正夢になりそうな予感。
いや!正夢にしちゃいけないんだ!自分から何とかしなくては!
今、真一郎さんがすずさんのと頃にいるのなら、僕もいって許してもらおう!

真一郎さんの家からすずさんの家は30分ほどだ。走れば15分くらい。
幼い双子に留守を任せるのは気が引けたけれど、子供たちによく言って聞かせれば大丈夫だと信じ、留守番の極意を言い聞かせる。

「知らない人とかぜったいに入れちゃダメだよ!いいね。火も使っちゃダメだよ!もし、変な人とかきたらとなりの家に助けを呼ぶんだよっ」
「そんなのじょーしき!パパの電話しってるし」
「いつも留守番なれてるもん!!おみやげ買ってきてねーカイト!」
留守番になれている双子は快く送り出してくれた。

僕はすずさんの家に急いだ。

だけど、すずさんは帰っていなかった。
真一郎さんもいなかったけれど、カギは不用心にも開けっ放しだった。
いつも僕が留守番していたために、すずさんはカギを閉めるという事をわすれてしまったのかもしれない。
部屋の中は一昨日のままだった。
ただし、一昨日の御飯は綺麗に食べたらしく、食器はツケっぱなしだった。
僕は一応その食器を洗って、1時間ぐらいすずさんの帰りを待っていた。
こんな風に過していると、一昨日のことは何もなかったような気がする。

いつもの僕の生活。
たった二日だけなのになんだか懐かしい…

「そうか…すずさん仕事か……残業かな…?」

腕をテーブルに上半身を寝そべらせて、一人呟く。

ずっと、ここに居たかった。
だけど、やっぱり後ろめたさもあったし、幼い子を留守番にしてしまった事も不安に感じたので、すずさんの家のカギをきちんと閉め、真一郎さんの家に帰ることにした。

「う~さむい!!早く帰ろう!」
吐く息が真っ白。今日はとても寒い日だとニュースで言っていた。
もっと厚着して来ればよかったと、反省している。
トレーナー一枚はやっぱり寒すぎる。

小走りに走っていたが、駅前の商店街はとっても賑わっていたことに目がとまる。

「もうクリスマスなんだ……」
駅まえではもうすぐクリスマスなのでケーキの予約販売や、ツリーが飾られていてとても楽しげで明るかった。

「はぁ…クリスマスまでには仲直りしたいな……」
すずさんと初めてのクリスマス過したかった。
恋人同士ってわけにはいかないと思うけど…
楽しく二人で過す特別なパーティーをすごしたい……。
ふうとため息をする。


ケーキを一通り眺めたあと、僕は真一郎さんの家に帰るために歩き出す。
交差点の信号で青になるのを待っていると、反対側の路地に帰る途中、すずさんを発見してしまった!
真一郎さんの家の帰りは駅前を通るのですずさんの会社にも近かった。
すずさんはさっそうと一人、いつもの帰り道をいく…今、面と向かって会う勇気はないけれど眺めるだけなら…そう思いつつ僕は無意識にかすずさんを追っていた。
一昨日のデジャブだと思ってしまう。
一昨日も同じ時間にすずさんを尾行したことを思い出した。

そして、すずさんはまた、真一郎さんの経営するホストバー兼オカマバーに入っていった。

「ヒカルさんに会いに…かな?」
そう思うと嫉妬とライバル心が沸き起こる。
すずさんが入っていったのを見ると、僕は裏口から店に入った。


店の前に立つギャルソン姿のオカマの紫さんはやはり、ごついボディーガードマンの風体だ。
仁王像にも見える。
僕を見つけると、指を顔の近くで動かしオカマふうに愛想よく挨拶してくれた。

僕は苦笑いであいさつをし、一昨日の面接した曇りガラスの区画の角度から見えないところですずさんをジッと眺める。すると、後ろから怪訝な調子の声で

「なにしてんのかな~カイト。まだ、店は開かないよ」

慌てて、左腕をヒカルさんの首に巻き、回転してヒカルさんの口を押さえ、入ってきた扉の方まで引っ張った。
僕がここにいることがばれたら不味い。
人さし指を立てて静かにしてくれとレクチャーして納得を得ると、ヒカルさんを解放した。

ヒカルさんは小声で、まったく外見と違って力があるね~っと僕を睨んだ。

「ご、ごめんなさい…」
改めて見るヒカルさんの格好はオカマじゃなくってホストのスーツ姿だった。
男の格好もなんだか色っぽさが漂う…

 

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2011/06/03 (Fri)
 僕に与えられた仕事はメニュー表の料理を作り運ぶ仕事だった。

おカマバーをやっている時間だけだったけれど、お客さんに気を使っ 
たり身体を触られたり、絡まれたりして…
とにかく疲れた…仕事ってこんなに疲れるものなのか…

帰ったきたのは7時頃…朝までやってるなんて…
ホストの時はホステスのお客を相手にするらしく朝10時までやって 
るらしい…
僕はベットに倒れ込むと深い眠りに落ちた……
人間寝ている間に3回夢を見るという…

その3回のうち一つはすずさんと初めてあったあの日のことだった。



季節は梅雨。
雨にぬれた僕を家に招いてくれた。
僕はおずおずしながら、すずさんの家にはいった。

「あ!」

と声をあげたのはすずさんだった。

部屋の中はゴミだらけでお世辞に女の人の部屋とは言えるようなもの 
じゃなかった。

すずさんは顔を赤くしながらそのゴミのことは口にはださずに、ニコ 
ニコしながら、僕にお風呂を炊いてくれ入れてくれた。
お風呂も綺麗とは言えなかったけど、とても体があったまったし、と 
ても感謝して、心にもジ~ンと暖かさが染み渡っていた。
そんな中

「も~~~~!!私のバカ!!はっずかしい!!」

と、どなり叫ぶ、すずさんの声が…
もう十分暖まったので、着替えてすずさんのところにいくと、ゴミが 
倍にふえていた。

ゴミ袋の中身が散乱していた。
すずさんは、自分自身への怒りに髪をぐしゃぐしゃとかき乱していた。

僕は一瞬いるんだ…正直恐かったから。
「あの~手伝いましょうか?」
すずさんはこちらを見ると顔が真っ赤でちょっと涙ぐんでいた。
さっきの後ろ姿は鬼のようだったけど、かわいいと思った。
すずさんは恥ずかしがりやさんなんだ……。

「いいわよ、あんたはお客さんなんだし……って名前聞いてなかったわ 
ね」
「ぼくはカイトといいます」
「年は?」
「十六です…」
「六才も年下なんだ~私は寺乃すずよろしくね」
といい、ゴミの山を片付けようとすればするほど散らかっているよう 
だった。
僕は見兼ねて掃除を手伝った。ほとんど僕が片付けた。

「すごいわね~カイトくん。掃除の天才だわ!!」

本当に感心したように手を叩いて喜んでくれた。
それが僕もうれしかった。
少しでも恩を返した気もしたし、すずさんに誉められた。

「御飯かってきたわよ~コンビニ弁当。私、料理できないのよ」
「そんな感じはしますね。」

と、つい口にだして、キッと睨まれた。
「ごめんなさい……」

すずさんはふっと柔らかく微笑んだ。

「本当のことだから仕方ないわよね。さ、食事にしましょう」

ひさしぶりの御飯は普通のコンビニ弁当だったけれど今まで食べたご 
飯よりもとても美味しかった。

それは、一人じゃなかったからかも知れない。

すずさんは僕がまだ半分食べている間にすでに食べ終わっていた。

爪楊枝で歯につまったモノを取っている姿は、初めて会った時の女性 
らしさとはかけ離れていた。

 一瞬この人は性別を間違えてうまれてきたのではと思ってしまった。

「そういえばさ、カイトくんって帰る家ってないの?だから、あんなと 
ころで凍えてたの?」

「はい……住んでいたところは在ったんですけど……叔母が僕のこと迷 
惑がってるのがわかってたから、自分からでいったんです」

僕はうつむいて、そのことを話した。
叔母夫婦と従兄弟達とすんでいた。僕をこき使いながら邪魔者だと思っ 
ていたのは分かっていた。

だから、中学卒業した日にでていった。
高校も金がかかるから行かせたくない様子だったから…行かなかった。
でも、こんな針のむしろな用なところにいるのは馬鹿馬鹿しくなって 
でていったのだ…


「で、行くとろ頃がなくてあんな所で座り込んでいたというわけね」
「……はい」

しばらくの沈黙の後すずさんが、机に頬づえをついて、言った。

「じゃあ…私のところに住む?」
「え?」
「あんた、行くところないんでしょ?帰りたくないんでしょ?」
「はい……」

「じゃあ、決まり。私のところにいなさい。」
にんまりと微笑んでそう命令した。

「でも……まずくないですか?僕…男だし」
「不貞なことしたら、追い出すから安心して」
「は、はい」

そのときは、
「そういうことは、けしてしません」と心の中で呟いた。

「それと、家政婦みたいなことやってくれればいいからさ。」

そういって、微笑むすずさんが大天使にみてた。
僕に居場所ができたことが嬉しくって涙がこぼれた。

「は、はい…ありが…とうございます」
「あ~!も~!男の子なんだから、泣かないの!!」

 すずさんは僕の顔をハンカチで拭ってくれた。
姉のようであり、母のようだと感じた。心地の良い居場所。やっていることは叔母の家と変わらなかったけど。
心地が全く違った。僕の居場所って感じがしたのはすずさんの所がは 
じめてだった…

姉や母と同じ家族としての一線をこえなければ…ずっといられたの 
に……
嫉妬の余り、あんな不貞なことをしなければ…


あの時のすずさんが夢の中でまた再現されている。
すずさんに無理矢理キスしたシーン。
キスをするのは初めてだったけど、激しく唇を奪った…
ドキドキして…たまらなくて…
自分の方に心を向けたくて…あのヒカルさんに負けたくなくって。

すずさんの腕の震えが伝わって腕をはなした。
すずさんは消えた。僕への信頼がきえるように…
そして次の瞬間、ヒカルさんがあらわれて、あの不敵な笑みを僕に向ける。

 その腕にはすずさんがいた。
二人はどんどんとうくなっていく…

「まって!いかないで!!もうあんなことしないから!!」
追い掛けようとしたが、いきなり圧し潰されそうなほどの重圧感がおそってきた。

「俺たちがカイト君といるいからいいじゃ~ん!」
「いいじゃ~~~~ん!」
「いいじゃ~~~~ん!」

僕は突然あらわれた真一郎さんと双児に羽交締めにされた!
どんどんすずさんが遠くなっていく……

「俺達の家があらたなカイトくんの居場所なんだからさ~」
「からさ~!」
「からさ~!」
確かに、真一郎さんは善い人だし、双子達もかわいい、家は豪華なマ 
ンション…
けど…
僕が一緒に暮らしたい人はすずさんだけ…ボロくってちっちゃなア 
パートでも…


 僕は…すずさんとずっと…

「すずさんと暮らしたいんだ!!!」




と自分の叫びで起きてしまった。


「カイト起きた?」
「おきたおきた!沖田ソウシ!」

双子たちが僕の上に馬乗りになってキャッキャと自分達で言った駄洒落 
に笑っていた。

どうりで、重苦しい夢や、悪夢を見ると思った…


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2011/06/02 (Thu)
 「う~ん、自分の美に執着してる奴が多いんだよ。きれいな男ってナル シスト多いしね~。
男の自分も女の自分も大好きって変わり者が集まっちゃってね、面白いからオカマバーやってんだよ。女心も男心も分かってくれる店って密かに人気なんだよ?」

「真一郎さんも女装ってするんです…か?」

「ううん、しないよ。俺はマトモだからね。でも、カイト君は女の子のカッコしてもらうから。」

「え?」

ニヤリと僕に微笑んだ…恐いというか…ナイスな悪戯を思い付いた子供 
みたい……。

「おーい!ヒカル」
「はーい何ですかマスター」
よばれてきた女性じゃなくてオカマのヒカルさんは絶世の美女って感じだった。
でもよく見てみるとこの人は!


「すずさんとキス……!!」

興奮の余り大声を出し過ぎてしまった。
店の中のオカマ達がこっちに注目する。
そのため、言葉を飲み込んだ。オカマの視線は恐い。

「はぁ?だれ?この子?マスターの隠し子?」
不可解そうにこっちをじろじろ見て言う。

「そんなところだ。この子、今日からしばらく働くことになっから世話 
してくれ。それにこの店に似合う格好をさせてくれ」

「じゃあ、おいでボーヤ」
僕の腕を掴むと化粧室までつれていかれた。

「うん!若いから化粧ののりがいいね~」

鏡の中には可愛い女の子の姿が映っていた…それは僕なんだけど、自分じゃないみたいだ。
僕は女装をさせられ、化粧をさせられてしまった。

「若いからって…ヒカルさんだって僕と同い年じゃないんですか?」

鏡に映っているヒカルさんの顔がニヤッと不敵に笑う様は艶っぽい。

「嬉しいこというね。こう見えても25だよ」

「えええ!!僕より9も年上!?」

「君はまだ十六なんだ~って?バレないようにしなよ、未成年者はこーゆー立派なところで働いちゃいけないんだから。」

はたして立派だろうか?鏡の僕は苦笑いした。
「名前聞いてなかったね何ていうんだ?」

「カイト…網田…カイトです…」
「へぇ…君がねぇ~」

僕のことをすずさんから聞いて知っているのだろうか。
口元に手を添えてまたつやっぽく微笑む。

なんか僕を吟味してるみたいに鏡の僕を見てまたふ~んと頷く。
僕はなんか嫌な感じかした。
この人はすずさんとキスした男イコール恋人のはずだ。
僕の恋敵。
同い年ぐらいだと思って嫉妬もしたのだった。
でも、すずさんより年上だったとは……

「あの…ヒカルさんは恋人いるんですか?」

「いるよ~めちゃくちゃ可愛いの娘が」

鏡の中に写るヒカルさんはさっきの艶っぽい笑みじゃなかった。 
ちょっと、下品っぽい。
「もしかして…すずさんのことですか?」

口が先走ってしまった…
ヒカルさんはニンマリと微笑む。
やっぱりすずさんのことなんだ……
そう思うとライバル心が湧いてきた。

「僕……負けませんからね……」

鏡の中のヒカルさん…後ろに立っている男
(今はオカマだ。けどお互い様)
を睨み宣戦布告をした。
ヒカルさんはやっぱり不敵な顔をしてる。

「……かかってきなボーヤ」

フッと鼻で笑われた。
僕とヒカルさんの背景には見えない龍と虎のが炎を巻き上げ睨み合あっていた……

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2011/05/31 (Tue)
  子供達は遊び疲れたのか、ぐっすりと眠っている。
僕も一緒に眠りたい程遊んだというか遊ばれた…体のあちこちが蹴ら 
れたり、絞められたり殴られたりでアザやコブが数カ所できてしまった。

戦隊ものごっこやプロレスごっこ、激しい遊びが大好きな藍ちゃんと蓮君…
何度か、この子達は悪魔の申し子かと本気で思ったが、眠りに落ちた 
双児は天使のように可愛い。

ほっぺたをつっ突いてみる。フニゅっとして可愛い。

きっと、自分の子供だともっともっと可愛いんだろうな…好きな人と 
の 子供なら…すずさんとの子供なら……ハッ!
いけない!そんなことを考えちゃ!


もう僕はすずさんにあんなことはしないって決めたんだから!
ただすずさんと一緒に暮らせればそれだけで…
でも、すずさんには好きな人がいて…もし、その人とすずさんが結婚することになったら僕はすずさんから離れなくちゃいけないんだろうな…

「………そんなの嫌だな……」

ぽつりと思いが口にでてしまった。
「何が嫌なんだい?」

と僕の頭上で真一郎さんが気配もなく言ったものだから僕はビクっと背筋を伸ばした。
その調子に真一郎さんの顎と僕の頭が勢いよくぶつかった。

二人してそれぞれ打ったところを押さえて悶えた。
悶えながら、真一郎さんはまた笑いをかみ殺してる。

僕の反応がつぼにハマったらしい……面白い子っ言われるのってこうい 
うことなのかな?僕は面白くないと思うんだけど……

痛みがひいた真一郎さんは、ニコニコ微笑みながらまた、何が嫌なのか 
な?と問う。
だけど、心の中のつぶやきを説明するのは恥ずかしくて……
「なんでもありません」
とだけ言った。

「それならいいけど」

全てを話を聞いてくれて理解者になってくれた真一郎さんにこの嫉妬に似た思いは聞いてもらう必要無いことだったから…
でもよく考えてみると、すずさんのホストの彼のことを真一郎さんは知っているのかも知れない。

「これから、店に行くよ、それとも今日は疲れてそうだから、寝てるかい?」
「いいえ!行く!行きます!連れてって下さい!」

真一郎さんの店に行けば、すずさんの彼のことが分かるかも知れない!

なにか情報を掴んで、弱味を握って、すずさんと別れさせることもできるかも!
と思ったのだ。

なんてったって、ホストだもん。彼女に知られたらマズイ情報をたくさん持ってるはずだ!

「うん、いいよ。でも仕事してもらうんだよ?大丈夫?」

「大丈夫です!」
「じゃあ、行こっか?」
真一郎さんはホストの格好をしていた。
派手で高そうなスーツをきて、なんだか大人の男って感じに見える。 
いや、ラフな格好でも十分かっこいいんだけど。
僕もこういう格好するのかな?そうすれば、すずさんに見合う男に見 
えるようになるかな?と少し甘い期待を持って真一郎さんの店へと向かった。


だが……期待していたのは全く違ったのだ…
場所は同じ何だけど…店の人物が違う…ここは昨日調査したホストクラブなのだろうか?
周りは女の格好をした男ばかりである……

「オ…オカマ…バー……?なんで?」

僕を面接に来た子かと勘違いした、あのごついスキンヘッドも見事にごついオカマとしてオカマ仲間と楽しくはなしている…
まだ開店していないらしいけど…

「ホストクラブじゃなかったの……?」
と真一郎さんに聞く。
ひそかに僕はおびえていたため、涙声で聞いてしまった。
その反応に真一郎さんはクスクスと笑い、

「ホストクラブとオカマバー兼用してんだよ。深夜はオカマバーで早朝からはホスト。」

たしかに、テレビでみたけど、ホステスもホストは相手にするらしく、朝やっているっていってたような… 
だけど、この店の雰囲気は180度違う。

「どうしてオカマバーやってるんですか?」

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* ILLUSTRATION BY nyao *