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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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一応漫画家?
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佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
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2020/04/04 (Sat)
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2013/12/13 (Fri)

愛しの君の光栄

ここは播磨。波打つ海の音が気持ちがよい…

砂浜にはきれいな貝殻が落ちている。

巻貝が半分砂に埋まっているのも京にない風情がある。

そんな播磨の海岸を光栄は歩いていた。





「この地から離れるのか…離れがたいな…」





夕日が海に接して紅い…そんな海を見つめていた。

父、賀茂保憲に従ってこの地に訪れてから随分とたつ。

京には年に二、三回は帰っていたが、ついに帰るが来るとは…

長年この地に住んでいたのでこの空気や、風景がとても好きだった。



京の空気より、景色よりこの美しい土地…だから離れがたい。

そんなことを考えながら、歩いていた足に貝殻がぶつかった。

その貝を手にとり見つめながら思う。





「葛葉をここに連れてきたかったな…きっと、大喜びで砂や海で遊んだだろうな」





幼い許嫁のやりそうな行動を想像してくすりと笑う。

光栄は本当に浮気の心配のない青年だった。ただちょっとロリコンなだけかもしれないが。





「光栄様ーーーー!」

葛葉のお土産に貝殻を拾っている時、従者が光栄を呼びにきた。

「なにかあったのか?」





従者が光栄のたつ砂浜までくると息を切らせながら告げる。





「保憲様のお呼びでございます。何やら貴族がまえられていて…光栄様にその貴族のことを任せるとのこと。」

「貴族が?」





なぜ貴族がこんな播磨の地に来ているのだろう?



と思いながらも、邸に向かった。



邸に着いたころにはもう夜空だった。

貴族は一段高い位置に円座を敷き座っていた。

歳は三十、位は中将。



そして、藤原姓なのである。



その男はガタガタと震え、燭台の明かりを受けてみえる顔は青ざめている。

そして、光栄は机の上に紙と墨と筆を用意して、その貴族の用件を聞いていた。

貴族は声を震わせながら話す。





「毎日恐ろしい夢を見るのです。昔通っていた女が出てきて…その女は鬼の形相で…手と口は血まみれで…あ、あらわれて…『今度はあなたを食ろうてやる!』と高笑いをしながら追い掛け私を喰らおうとする夢なのです…恐ろしくて恐ろしくて…」

その夢のことを思い出したのか目に分かる程の震えをした。



そんな中将とは反対に光栄は無表情の冷静な態度で話を聞くふりをする。





「そうですか……ですがなぜ、この播磨の地に?京には晴明様やなだたる陰陽師、祈祷師がいらっしゃるでしょうに…」





「それはその…父上が…いや…恐ろしくなったのだ!京には私が捨てた女が何人もおる…京を離れれば女達いや…鬼に殺されずにすむとおもって…いや…だが…夢は消えぬのじゃ…今も私を追って播磨まできているのかもしれん…ですから、助けてほしくてまいったのですのじゃ」





恐怖にかられているためか、言葉数が多く、言葉もかなり乱れている。

光栄はその用件をすらすらとそのまま紙に書き写していく。

書きながら光栄は自業自得じゃないか…と思っている。

浮気をして女を捨てる方が悪い。



好いた女なら捨てることをせずに妻としてくらせばよかったのだ。



光栄は自分は浮気などしないたちなので、こういう男が許せなかったりする。





「わかりました。なんとかいたしましょう。」

「本当ですか!?」





用件を書き終えた筆を置き額をおさえて光栄は大きくため息をついた。

とても面倒だという態度がありありだとそばで控える光栄の従者ははらはらするが、中将は逆に大柄な態度は自信の表れだと思って心強くかんじたらしい。







「その夢の原因の鬼をどうにかするためには京との連絡が必要だと思いますので時間かかりますよ?」

「ど、どのくらいですか?」

「3,4日ってところでしょうか?」

「そ、そんなに!それまでに私は殺されてしまう!」





いきなり光栄に抱きつき懇願した。





「大丈夫です。この札を邸に貼っていれば夢は見ませんし、鬼も現れません。



それと念のためこの邸に泊って下されば問題ないと思います。



だから、抱きつくのはよしてくれませんか!」

思いっきり貴族の体を引き剥がした。

札を渡すと、従者に部屋へ案内するように命じ、手を叩きながら光栄は貴族より先に部屋を出てていった。

従者は、相変わらず態度のわるい…と思ったが、注意もしなかった。









光栄は父保憲のもとに訪れて文句をいっていた。









「父上が依頼をお受けになったらよかったのだ」

「私は忙しい。もうすぐこの地を離れる準備をしなくてはいけないからな」





書物の棚を整理しながら保憲は言う。









「その言葉…一週間も前にも聞きましたが…」

「荷物が多くて整理しきれんのだ」

その言葉も聞いたきがする。





「そういえば葛葉の君に文を送ったそうだな。」

「父上の所為で遅くなると書いておきました。」





恨みがましく言う。まるで子供の態度。

そんな光栄を保憲は精神年令は葛葉の君と同じだなとおもった。









「ああ、そうだ、鬼女の件に関する文が晴明からも来ていた。」





懐から文を取り出し息子の前に放り出す。





「それをしっているなら……ん?」





光栄は文を手に取った時、簾の向うで何を感じた。

人間ではない気配。

そして尋常ならぬ息切れの音…ゼイゼイという…苦しそうな息遣いだった。

光栄がその何ものかを調べるため簾を慎重に開けてみるとそこには…





「お前は氷ではないか!どうしたのだ!」

氷は手にた文をフルフルと腕をあげ光栄に差し出す。

「これを…葛葉…から…」

光栄がそれを受け取ると、氷はパタリと気絶をした。





「そろそろ、播磨に文が着いたたころかな?」



葛葉は夜空を高欄に寄り掛かりながら見つめている。

葛葉の側には手のひらにわずかな光として燭台のようにほぞぼぞと火を灯している式神の炎が、苦笑いをした。



「死にものぐるいで飛んでいったからねぇ…着いたと思うよ」



氷は今日中までに播磨に文を届けなかったら、帰ってきた時に母様の刑に処されるので、

葛葉が文を書き終えた後すぐに必死に飛んでいったのだ。

葛葉はその時の氷の様子を思い出して、うふふふっと笑った。



「何がそんなにおかしいのかな?葛葉」



その人物は足音を忍ばせて、渡殿を渡り葛葉のいる東の対(葛葉の部屋)まで来た。

この人物はいつも葛葉を驚かせるために忍ばせて渡ってくる。

葛葉は満面の笑みでその人物を見る。



「おかえりなさい!とー様ぁ!」



ぱっとその場を立ち上がると、父、安倍晴明に抱き着く。

この時代の姫はそんなことはしないのだが、この家の家風は世間ととてもずれている。

スキンシップ旺盛な父子はしばらくお互いの温もりを確かめた後、幸せいっぱいな顔を見つめあいながら、家族の会話へと入る。



「父様、今日も遅い帰りなのね。仕事が大変だったの?」

「とても大変だったのだよ。

とても疲れたけど葛葉の顔を見るだけで疲れが吹っ飛んでしまった」



もうすぐ40になるとは思えない程とても若々しくて美男な晴明の顔は父の顔になっている。

葛葉はとても若く見えて美男でとても優しい父がとても大好きで自慢だった。



「そういえば氷の姿が見えないが…どうしたんだ炎」

「それが…播磨まで使いにいっています。葛葉様の怒りを買い北の方様の刑になるのが嫌で…とでいきました」



「そう…か…」

(可哀想に…氷…。)

と哀れんだ。



晴明も北の方自分の妻の式神に対する恐ろしさを知っていたからだ…

「そんなことより!どんな仕事だったの?もしかして今世間を騒がしている。鬼女の仕事?」



「良く知っていたな~葛葉は世間の噂に聡いな。」

「だって父様の娘だもの~」

実際には頼光に聞くまで知らなかったのだが…その事は口に出さない。



「そうなんだよ。鬼女に怯える公卿たちに祈祷をしにまわっていたからね」



「たいへんね~」

ふぅ~と自分が疲れたような仕種をする。

そんな、葛葉の仕種が愛おしくなって頭を撫でる。



「大変なんだけど、鬼の根元をたてば、怪異はなくなるんだけどね」

「その根元はみつからないの」

「見つかったよ」

「じゃあ、さっさとやっつけちゃえばいいのに」



晴明は苦笑いをした。そして優しく言い聞かすように葛葉に話す。



「葛葉…やっつけちゃえばいいとか、退治してしまうのは簡単だけど、その鬼の立場に立ってみると、あまりのも無念すぎると思わないかい?」



葛葉はハッとした。

人を脅かすのはとても悪いことだけどそれにも理由がある。

男達の身勝手な振る舞いで鬼になる。悲しみを怒りで我を忘れてしまうのは、その男達の所為なのだ。



「なるべく、その鬼の心もくんであげるのが陰陽師というより、人としてやるべきことだ…」

葛葉は自分の考えの浅かったことを恥じる様子でうつむき頷く。

そんな娘を『偉いぞ』というように優しくなでてやる。

「でだ。この仕事…葛葉がやってみるか?」

「え!?」

突然父に思ってもいなかった言葉をいわれて、一瞬意味が飲み込めなかったが、その言葉の意味をりかいする。



「え~~~~~~!それって私が祈祷とか鬼退治をするってこと!」

「うん。前々から、葛葉もやりたがっていただろう?」

「やりたかったけど…私一人で?」

「一人じゃないよ。光栄もきっと手伝ってくれるよ」

「光栄様も!?」



ぱぁあと葛葉の頭は有頂天になっている。

光栄様と一緒に……

だけど、光栄は播磨だ。

それでどうやって、一緒にできるのだろうか?

その疑問が過った時、晴明は炎に話し掛ける。



「氷とは連絡できるか?」

「それが…何度もためしたのですが、氷は気を失っているらしくって…」



炎は困ったように言った。

「まったく。氷ってば役立たずなんだから!」

晴明と炎は苦笑いをして葛葉を見た。



「それでは仕方がない、明日連絡をとるとするか」



葛葉は寝床に入っても、興奮のあまりなかなか寝つけなかった。

初めて自分の成果を試せる。

そして何より光栄と一緒に仕事をすることが嬉しくてたまらなかった。





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