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ここのブログでは
イラスト付童話や小説を制作していこうと思ってます。
いつも通っているホストバー&おかまバーの「アンティーク」のブラックのガラス扉が魔王の扉に思えて、私はゴクリとつばを飲み込む。
中にいるのはたぶん、慎一郎さんとヒカルだけだろう。
いるとしても、店の管理を任されているまっちょ店員の紫か・・・
「すずさん、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ、おめかしさせてくれるだけなんだから」
「そ、それはそうだけど・・・私の直感が悪意を感じるのよね」
重々しく私はそう断言する。
そんな私とは正反対に、カイトは一週間前からわくわくドキドキといった小学生が遠足にいくのを楽しみにしているようだ。
まあ、デートじゃ遠足と変わらないけれど、私たちの年の差は六歳。
私だって浮かれたいけれど、世間に認められるまで最低二年ある。
カイトが老け顔だったらまだしも、女装させたらそこらの女の子よりかわいい美少年・・・・・・そうよ!
「ここに呼び出したって事は、きっとカイトを女装させて、女の子同士のデートを演出してくれるって事ね!それなら姉弟以前の問題だからOKね!」
女の子同士のデートなら恥ずかしくもない!
そんな私の肩を掴んで止めさせる。
「ちょっとまって、僕はそんなのはNOだよ!せっかくのデートが女の子同士ってほうがおかしいって!」
今度はいっぺんカイトが青い顔してドアノブに手をかけた私の手を止めた。
「女装したカイトかわいいから大丈夫よ!」
「いやはや、そういう問題じゃないよ」
「私とデートしたくないっての?」
「ふつうの格好でデートしたい」
「じゃあ、おめかし必要無いじゃない」
「デートはおめかしは必要だよ!」
ドアの前で口論になっていたら突然ドアが引かれてカイトと一緒に入り口で転びそうになってとっさに受け身を取りカイトの二の腕の部分に手を支える感じになり私に多い被さる形で倒れた。
「カイト大丈夫?」
「すずさんごめん!」
カイトが地に腕を着いて、私に倒れ込むのを防いでいた。
「おまえ等、こんな所で、みせつけてんじゃねーよ。遊園地よりラブホに行くか?」
「・・・紫、お願い!」
紫は私の命令を忠実に無言でヒカルの下品の言葉を放つ喉を絞めあげてくれた。
ヒカルは締めあげる紫の腕を三回叩いて、ギブアップをアピールし、閉め上げをやめさせた。
「いらっしゃい、待ってたよ。すずちゃん。カイト君」
クスクス笑いながら慎一郎さんがソファーのイスから腰を上げて私たちに手をさしのべ起こしてくれた。
「あ。ありがとう、慎一郎さん。」
「今日はよろしくお願いします!」
カイトは起こしてくれた手をさらに強くにぎり懇願するようにお願いした。
私がデートを嫌がってると思っているらしい。
だから、私が嫌がらない何か良い策を持っているだろう慎一郎さんに必死にすがるのだ。
でなきゃ、初デートに他人に助けを求めるようなことなどしないだろう。
カイトはいつも慎一郎さんに頼る癖がある。
その癖を利用して慎一郎さんたちは私たちをおもちゃのように弄んでるんじゃないだろうかとさえ私は思うんだけど・・・
けれど、それは素直じゃない私にとってカイトに甘えられるチャンスを与えてくれている・・・
「すず、そんなに深刻に深刻に考えることか?
人生は楽しむためにあるんだから、年の差とか世間体とか深く考えるなよ。な」
ヒカルは少し心配してくれたのか、ぽんぽんと背中をたたいて私の気分をなだめようとしてくれた。
「うん・・・よろしくね」
そんなヒカルに私は笑顔を向けて安心したことをみせた。
「よし、カイトをあっと言わせるお洒落をしてデートを楽しませてやるよ」
ヒカルは私にニヤリと艶のある笑みを向けて、しなやかな指がいたずらっぽい唇を隠した。