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ここのブログでは
イラスト付童話や小説を制作していこうと思ってます。
「なんだか、二人いい感じじゃないっすかぁ!」
「そうだね。カイト君のエスコートぶりは完璧だね」
二人を心配して後を付けてきた慎一郎とヒカルは微笑ましく二人を観察していた。
「ほとんど、絶叫系の乗り物ばかり厳選して乗ってたのはすずちゃんの趣味だね」
「メリーゴーランドはデートのお約束なのに目も向けないところがすずらしい」
「うちの娘もすずちゃんと同じで絶叫系好きだよ」
「そ、そうなの?」
ヒカルは少しおののく。
そんなヒカルに慎一郎さんはニヤリと笑って
「大丈夫、ヒカルは絶叫系苦手なの知ってるし、藍とはデートありえないから」
「いえ。ぜひご一緒させてもらいますよ」
「変態とは一緒にいかせられないね」
にっこりとキツい一言をいわれて、くそうっとヒカルは真剣に悔しがる。
「あ、カイトくんソフトクリーム買いに行くのかな?」
「ここのソフトクリームは一つにしなきゃいかんぜよ!カイト!おいしいシュチュエーションなのに!」
「どういうシュチュエーション?」
「アイスをなめながらお互いの唇をなめあうという・・・」
「ヒカル、うちの娘とは絶対にデートさせないから・・・」
慎一郎は今度は笑いもせず、声にもドスが利いていた。
あれから、いろんな乗り物をはしゃぎながら二人楽しくいろいろ回った。
あたりは夕暮れ、夜のパレードがあるらくしく、夜のパレードをみに子供客より大人客のカップルがおおくなってきている。
はぁ・・・大人げなくデート楽しんでるなぁー自分。
カイトがアイスを買いに並んでいる間にベンチに腰掛けて一息つく。
女子高生の格好しなくても、気分はもう女子校気分に戻って言う感じ。
目立つ私たちを目にした人や私たちより明らかに目立つ周りのコスプレ女子達から羨ましがられるのを感じたとき姉弟にみられてないってことに安心したのかもしれない。
優越感もあったし・・・
顔が少しにニヤケる。
これがデートというものか・・・
いつも以上にカイトが私を持ち上げてくれるのも楽しいなぁって思った矢先。
「あれ?寺野さんじゃない?」
聞き覚えのある同僚の声が聞こえた。
反射的にその声に反応をしなかったのは、頭の片隅に知っている誰かと鉢合わせするんじゃないかという不安があったから、知らぬふりで、うつむいたままにしてみた。
思えば、私がデート反対した理由もそういう懸念もあった。
賢明に知らぬふりで、下を向いているのに、人なつっこいこの佐野さんは私の顔を無理矢理のぞき込もうとする。
「寺野さんじゃないのかしら~?女子高生のカッコしてるしぃ~」
分かってて、そういい回しする。
そういう言い方が常の人で、無視していれば、回避できるけれど、回避できそうにない。
罰ゲームと言い訳でもしておこうかと、思って顔を上げようとしたそのとき。
「俺の彼女になにしてるの?おばさん」
カイトが佐野さんの肩をつかんで、のぞき込むのをやめさせる。
「え、え、いえ、なんでもない。です」
カイトはその不良の格好でガンをつけるから、びっくりして佐野さんは逃げていった。
その後ろに彼氏らしき四十代の男性が追いかけていくのが見えた。
「すずさん大丈夫だった?」
「う、うん・・・」
緊張がゆるんだのと、とつぜんデート前の現実がおしよせてきて、
「私・・・いい年して、恥ずかしいよね・・・女子高生のコスプレなんかしちゃってさ・・・」
自分でいうと恥ずかしさと情けなさが増す。
なんでかナイーブになってる。
佐野さんだって私と変わらないのに、カイトにおばさん呼ばわりされちゃって・・・・・・
わたしやっぱりおばさんにみえるのかな・・・・・・と思うとなおさら落ち込む。
「私いつの間にかはしゃいじゃってた・・・年上なのにはずかしいぃよね・・・」
制服の袖で涙を拭うすずさんは、どうみても女子高生にしかみえない。
僕はむしろ、そんな高校生の服で涙を拭う仕草はとてもかわいらしくてきゅんとしてしまった。
「もう、帰ろうか・・・?」
と、無理に笑顔で笑うすずさんにきゅんとしてしまう。
それは制服とは関係ないけれどなんか、かわいい・・・ってときめいている場合じゃない!
手に持っていたいたアイスがとろっと、手に落ちてきた。
「あ、アイス食べようよ。一個しかもってこれなかったけど・・・」
すずさんのピンチだと思って一個だけもって、もう一個は後を付けていたらしいヒカルさんに奪われた。
「あんた。私の言ってたこと聞いてた?」
すずさんはじとっとした瞳で僕をにらむ。
「うん、聞いてたけど、食べて」
すずさんは仕方なく半分溶けたアイスクリームをなめるんじゃなくて、大口を開けて、三口で食べて、コーンもバリバリと食べる。
それはいつもの行動。かわいく食べようとしないすずさんはいつものすずさんだ。
そして、口の周りについたアイスクリームの残りを拭こうとする手の甲を僕は素早く手首をつかんでやめさて、
すずさんの口の周りに残ったアイスクリームをなめるようにキスをした。
「おいしいね」
突然の行為に、しかも周りに人がいて、見てるのになんて大胆なことをするの!?
「カイト、なにするのよ!汚いでしょ?」
「汚くないよ、ここにも残ってる」
そういって顎の下のくりーむをぺろんとなめて、ニッといたずらっ子のように笑う。
「僕たちの関係ってどんな関係?」
「恋人でしょ・・・?でも周りからみたら・・・」
こつんと、カイトは私のおでこにおでこをくっつける。
微妙に勢いがついていたから痛い。
「まわりなんて、関係ないよ。すずさんはすずさんだ。僕の大好きのすずさん」
とっても恥ずかしいけれど、うれしい言葉をカイトは恥ずかしげもなく優しく言ってくれる。
きっと、カイトは周りなんか見ていない・・・
ううん・・・
恋人同士なら周りなんか関係ないのかもしれない。
私が自意識過剰になりすぎていたのかもしれない。
そんな不安をカイトは和らげてくれる
「私も・・・カイトが好きよ」
周りが見えなくなった私はカイトにキスをしようとする
すると、夕日が隠れた水平線に七色に輝く水上噴水パレードが始まった。
そのイベントをみるための人たちは噴水に夢中になっているから、きっと私たちに感心はない。
一瞬そう思ってたら、カイトから唇を寄せて来て、甘いキスを繰り返した。
家の帰り道、手を繋いで、ゆっくり帰る。
なんだか、今の雰囲気がとても愛おしい特別な時間に思える。
コスプレしてるのも特別の魔法って伊達じゃない。
「カイトって、頼れるお兄さんみたいね。」
「立場逆転?」
「ううん、意外なカイトが見れたなって思って、デート楽しかった?」
「うん!遊園地て僕の想像以上の通りの楽しい場所だったね」
屈託なく、まるで、四、五歳の男の子のような笑顔だ。
だけど・・・引っかかる言葉だった。
「もしかして、遊園地とか来るの初めてだったの?」
ふとそんな疑問を何も考えないで聞いてしまった。
「うん・・・遊園地って初めてだったんだ」
「え?ほんとに?」
「おぼえてないだけかもしれないけど・・・」
カイトの瞳が悲しげな雰囲気が漂った。
「僕、小さい頃から、親戚に預けられていたでしょ?
迷惑かけないように一緒に遊園地とか遊びに行ったりしなかったんだ・・・」
「カイト・・・・・・」
その事を聞いて胸が締め付けられる。
まだ十代なのにすっごく苦労してるんだとても寂しい思いをしていたと言うことを改めて知ると、涙があふれてきた。
「すずさん?涙が・・・」
「だって・・・カイトが可哀想・・・」
「昔の事だし、今は初めて遊園地に来れたのがすずさんでうれしいんだ」
それは、心からそう思う。
すずさんと初めての遊園地で良かった。
「ねえ、カイトまた来週遊園地デートしよう」
「また、コスプレしなくちゃね」
「そ、そうね・・・」
すずさんは苦笑いをして頷いた。
でも、もうコスプレなんかしなくてもいい。
ちょっとお互いにおしゃれしてデートできればいい。
二人だけの世界って思っていても、やっぱり恋人だと見せつけたいってのはまだまだ、僕が子供だからだろうか・・・・・・
それはとにかく、すずさんとデートができる楽しみができたことは良い事だ。
時間はもう夜十時過ぎ、どこかでご飯食べていこうかということになって、駅前をうろうろしていると、歩道員のおまわりさんが私たちを呼び止める。
「君たち未成年だろう、こんなところうろうろしないでさっさと家に帰りなさい!」
「は、はーい」
そういわれて、仕方なくコンビニのお店のお弁当をかってかえるけれど、すずさんはにこにこ顔だったことはいうまでもない。
「おまえ等の初デート写真ばっちりとってやってプリントしておいたぜぇー!」
ヒカルさんはそういうと、どばーと袋いっぱいの写真を机の上に広げた。
「でも、なんかほとんどブレてる写真だね 」
「おまえらが、絶叫系しか乗らないからいいショットがとれなかったんだよ!」
「だったら、省けばよかったのに・・・幽霊写真みたい」
確かに、遊園地といったら絶叫マシーンという定義をつけられた感じだった。
次はもっと、ゆっくりとした乗り物ものってみたい。
観覧車とかメリーゴーランドとかボートとか
と次のデートのプランを僕は密かに思い描く。
「で、こんなかで、一番いいショットがあるんだ」
ヒカルさんはふふふと言う感じで後ろに隠していた写真をどーんと僕とすずさんの前に出した。
それは、七色の噴水でキスをしている写真。
でも逆光で陰にしか見えない。
「な、なんでそんな所まで撮ってるの!?」
「恥ずかしがる事ないだろう?陰っぽくっておまえ等だってわからないし」
「いい感じだよね。初々しい恋人同士のデートっぽくって」
慎一郎さんもうんうんと考え深くうなずく。
「記念写真だからとっておけ。ついでにこれ写真コンクールにも出しておいたからな」
「それほど評価されるものかしら?」
「おまえたち二人の世界はもしかしたら世界に見せびらかすことになるかもしれないけど、いい記念だからいいよな」
なんとも正直で確信犯的な言い訳に僕とすずさんはなにもいえなかった。
悪気がないんだからしょうがない。
今回のデートはこの二人の計画でうまくいったようなものなんだから。
「あ、そうだ、またチケット貰ったんだよ」
「遊園地のチケットですか?」
慎一郎さんはニヤリといたずらっ子の顔をして
「伊豆旅行二泊三日のツアー券だよー」
「え・・・それって」
すずさんの顔がだんだん赤くなっていく恥ずかしさからだろうか。
「段階的のおつきあい第二だーん!新婚旅行ならぬ恋人旅行にいこーなんって!」
「あ。僕お茶だすのわすれてた」
そう言ってその場から少し離れることにした・・・
「ふ、ふたりともーいい加減私たちで遊ぶんじゃないわよーーーーー!」
その日、慎一郎さんとヒカルさんはすずさんの怒りのサソリ固めにあったことは言うまでもない。
でも、いつか、ううん
近いうちその旅行もエスコートしてもらえるとありがたいなと図々しくも心の中で思ったりしたのでした。