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童話、イラスト、物語だけを語ります。 個人的なことは書きません。 純粋に物語だけのブログです。
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佐井花烏月(さいかうづき)
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女性
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一応漫画家?
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漫画を描く事
自己紹介:
佐井花烏月(さいかうづき)ともうします。

ここのブログでは
イラスト付童話や小説を制作していこうと思ってます。

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2014/06/04 (Wed)
2.葛葉と白犬で修行する

「なんで、犬がいるのよ!!」

 顔をなめられて起きた葛葉は机調の影に隠れ、頬を思いっきり拭う。
 子犬はきゅ?と首をかしげ、葛葉を眺める。
 そんな子犬を一瞬可愛いと思う。
 けど恐い。

「しっ、しっ!あっちいけってば!!」
 子犬はよばれたかと思い、近付いてくる。
「来るなっていってるの!!」
 立ち上がり逃げようとしたときに、几帳の垂れ下がっている衣に足を滑らせて、後ろにあった櫃を巻き込んで、派手に転んで、ついでに頭をうった!

「いったーい!!」
 なんて、朝から今日はついてないの!
 と思うと自分がなぜかみじめになって涙がじわりとでてきた。

 仰向けになって、涙ぐんだ葛葉の涙を子犬がくぅ~っと心配そうに舌で拭ってくれた。
 この子犬が原因でこんなみじめな気持ちになっていたのになぜだか、心がいやされた。
 結構…可愛いかもという心が芽生えはじめていた。

 「あんたの……せいなんだからね……」
 といいながら、恐る恐る頭を撫でる。

「葛葉!どうしたんだ!!その部屋の散らかり様は!」
 頼光が縁から突然あらわれて、部屋に遠慮なしに入って来た。
 いつものことだけど、なんだか、気恥ずかしいし、むかつく。
 曲がりなりにも葛葉はいっぱんの姫のように男の子と付き合いたくない気持ちもある。

「あんた、何度いったら分かるのよ!勝手に入ってこないでよ!まだ、わたし着替えてないのに……」

「あーーーー!葛葉犬を虐めてるのか!!!」

 葛葉のいつもの言葉は聞き捨てて、頼光はあわてて、子犬を葛葉のもとからひっぱがして、悪者から守るように抱き込んだ。

「べつにいじめてないわよ…」
 なんだか濡れ衣を着せられたようでなおさら腹が立った。

「この犬がこの部屋をこんなのにしたのよ!!」
 さっきの、慰めの行為に心を癒されていたが、イライラがつのって散らかした原因を犬の責任に押し付ける様言いはなった。

「だいたいさ!なんで私がこんな犬の面倒見なくちゃいけないのよ!私が虐めるんだって分かってるんならあんたが面倒見ればいいでしょ!!」
 葛葉はヒステリックに怒りを頼光にぶつける。

 「そんな…いいかたねぇだろう……が……」
 頼光は、いつにもない、葛葉の苛立ちに怯む。
 沈黙がながれた。
 子犬がくぅうんと鳴く。
 この雰囲気を察して悲しくなったようだった。

葛葉は着替えるため、犬を抱えたままの頼光をおいだして、炎にテチョウズを用意してもらい、顔を洗う。
 無言で、いつにない葛葉の怒りを感じ、炎はいつものニコニコ顔は苦笑ぎみだった。

 頼光のばか!
 べつに犬のこと虐めてなかったのに…虐めたなんて勘違いするなんて、腹の立つ!
 そんなふうに言うから、あの犬の所為にしちゃったんじゃないの!

 なんだか、また涙が出てそうになったとき、犬に嘗められたことを思い出す。
 なんだか心が通った感じがした。
 犬に対してこんな気持ちは初めてでなんだか、気持ちよかった。

 ……それを…私は…

 葛葉の心は怒りと罪悪感で問答して、その心を引き締めるように涙を消すように何度も何度も水を乱暴にすくい顔を洗う。

「あの…葛葉ちゃん」
「なに?炎」
「なんか?あったの?」
「別に……なんでもないわよ…」
「それならいいけど、頼光君外で待ってるよ?遊ぶの?」
「………遊びたくない」
「でも喧嘩したんでしょ?謝った方が良いんじゃないの?」
 炎はさっきの出来事を知っている。

「私の方から謝れっていうの?」
「うん。だって、その方がスッキリするよ」
「向こうからあやまったらあやまってやるわよ!」
 怒鳴るように言う。

 そのとき、御簾をばっと上げ、部屋に駆け込んできた頼光は床に手をついて土下座した。
「すまん!この通り許してくれ!で、遊ぼう!」
 頼光はずっと、御簾の後ろで葛葉の様子を伺っていたらしい…
 葛葉は一つため息をついて、そっぽを向きながら

「いいわよ…ゆるしてあげるわよ」
 葛葉は許しても自分から謝ることはしなかった。
「気位が高いんだから……」
「何か言った?炎?」
「いいえ?べつに」
「じゃあ、犬と遊ぼうぜ!!」
「う…うん……」
 葛葉は頼光に差し伸べられた手をとって庭へと出る。

 庭に出ると子犬はお座りをして待っていた。
「こいつ、本当にいい犬だぜ。人の言うことわかってるんだ。」
 頼光は犬を思いっきり可愛がる。
「本当にあんたが飼えばいいのに……」
 葛葉はこんなにこの子犬を可愛がることができないから……

 自分といても、可愛がってあげられないし、さっきのように、八つ当たりしちゃうかも知れないから……

「何言ってんだよ、この犬に慣れることが葛葉の修行でもあるんだろ?慣れること 修行なら仕方がないかと思うようにする。
 修行とはつらく厳しい事が当たり前でそれを乗り越えることに意味がある。

 そうすれば、嫌なことでも我慢できる気がするから。
 恐る恐る子犬の頭を撫でようと手を頭に近付けるが、犬が上を向き手のひらをペッロっとなめた。

「きゃああ!」
 葛葉は思いっきりあとずさった。

「手。手を食べようとしたぁ!」
「してねぇって」
 頼光に突っ込み入れらたのがちょっと、しゃくにさわった。

「分かってるわよ!!みてなさいよ!」
 勝ち気が手伝って、犬の頭を撫でることに成功した。
 ふわふわとした感じがとっても気持ちがいい。

「か、可愛いじゃなの……」
 でも、頭を同じ方向でしか撫でることができなかった。
「ほら、こんどは、顎の下」
「あ、あご!?」
 頼光は見本だというように顎を思いっきり撫でてみせる。

 葛葉もそれに習ってなでてみる。
 「できたじゃん。よかったな」
 「う、うん…」
 前よりは抵抗がなくなったような感じがする。

 犬は嬉しくて、尻尾をおもいっきりふる。
 そして、葛葉に飛びかかったって顔をなめた。

「きゃあああああ!!!!」
 バンと犬をどかす。

「ま、マだダメ…」
 葛葉は本気で怯えた。
キュウンと犬は悲しそうに泣いた。
「まだまだ修行が必要だな~」
「そ、そうね…」
バクバクする心臓を押さえる。

葛葉はふと、父は狐の血を引いているから自分もそうなのかも知れないと気づいた。
 人間なのに獣の血がながれているから、この犬が不自然に恐いのだ。

「人間であるために修行しないと……」
 落ち着くためにひと息吐いて呟くように言う。

「?なんか言ったか?」
「べつに……そうだ、この犬に名前つけよう」
「そうだな。なんにする?清和丸ってのは?」
「それって、清和源氏がらつけたでしょ?」
「いいじゃんかっこいいじゃん」
「コーエーがいいな」
「光栄のなまえとってんだろう!」
「いいじゃん、好きな人の名前つけた方が、この犬のことすきになるかも知れないしさ」
「それもそうだけど……おれがこいつを虐めそうだぜ……」
 頼光は光栄のことが嫌いなのだ。

「じゃあ、コーエーで決まり!!」
「呼んだ?」
 二人の目の前に突然、光栄が現れた。

「光栄様!?」
「光栄!貴様どこからあらわれた!」
 いきなりの現れに頼光は吃驚して刀を抜きそうになった。
「こうやってだよ」
 また現れた時のように突然消えたかと思うと、紙片になった。

 そしていきなり、ビロビロビロっと折り畳み状態にちじんだりのびたりして人の姿になった。
 本当に頼光は腰を抜かした。

「気持ちの悪い現れ方すんなよ!」
「式紙をつかってんだもん。人間業じゃないことしたほうが面白いと思ってさ」
はははと光栄は笑う。

「光栄様、お、おひさしぶりです」
 葛葉は顔を赤くしてもじもじとして、挨拶をする。

「うん、ひさしぶり。本当は式じゃなくって本当の僕で会いたいんだけどさ、仕事が忙しくってね」
 と言い、葛葉の頭を撫でる。
 うふふってわらって幸せそうだった。

「晴明様にちくるぞ光栄!」
「それは困るなぁ~」
 全然困ったふうじゃないのが腹が立つ。
「これが、例の犬だね。」
 子犬のコーエーは威嚇している。
「こら!光栄様をいかくするな!」
 ポンと犬を打つと、犬はしゅんとなった。

「あ、そういえば!ちょっと待ってて下さい!」
 といい、自分の部屋に入り、血塗れの呪府をもって戻ってきた。

「あの、昨日倒した式神の犬なんだけど、これの気配分かりますか?」
 光栄は血塗れの呪府を手にして額につけて少しだまっていた。

「光栄動かなくなっちまったぞ?」
「っつっつくんじゃないわよ!失礼な」
 ぺしっと光栄を突いた頼光の指を払う。

「う~ん式から念を探るのはちょっと難しいね。だけど、一つだけ分かった。これは犬神を使ってる。」

「犬神ってなんですか?」
「犬の神様の祟りとかか?」

 光栄はヘラヘラと笑っていた顔に表情を消して二人の問いに答える。

「ちがうね、生きた犬を生き埋めにして自分の式神にする、呪詛だよ。」

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